【獣医師執筆】犬はエビを食べても大丈夫?症状や対処法を詳しく解説
エビは犬に与えるのは危険な食べ物。ビタミンB₁欠乏症や消化器症状などを引き起こす可能性があります。どうしても与えたいときは、充分に加熱し殻や尾を除いた身の部分を少量にしましょう。
この記事ではどんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。
目 次
犬にエビはあげないで、生のエビは絶対ダメ!
犬にエビを与えてはダメな理由
エビは、タンパク質が多い上に低脂肪で、わたしたち人間にとっては栄養価が高い食材です。
しかし犬にエビを与えると、チアミン(ビタミンB₁)欠乏症や消化器症状、アレルギー症状が起こる可能性があります。
1:チアミン(ビタミンB₁)欠乏症のリスクがある
エビに多く含まれているチアミナーゼは、チアミン(ビタミンB₁)の分解酵素で、大量に摂取するとチアミン(ビタミンB₁)欠乏症を引き起こす可能性があります。
チアミンとは?
チアミン(ビタミンB₁)は、炭水化物、脂質、アミノ酸の代謝などに関わる物質で、人も犬も体内で合成することができません。 また水溶性ビタミンの一種であるため大量にとってもストックできず、余剰分は尿中に排泄されてしまいます。 毎日必要量を摂取できるよう、大半の市販ペットフードには充分量のチアミン(ビタミンB₁)が添加されています。
チアミン(ビタミンB₁)欠乏症とは
食事の質や消化吸収能力の低下などにより、比較的早期に現れる栄養性欠乏症と言われています。重篤になるとけいれん発作や不全麻痺を引き起こし、命を落とすケースもあります。
チアミナーゼは加熱することで不活性化
酵素の一種であることから加熱により不活化します。どうしても犬にエビを上げたい場合は、充分に加熱し、殻や尻尾などの堅い部分は取り除きましょう。
2:嘔吐、下痢といった消化器症状のリスクがある
犬は肉食動物に近い消化器の特徴があり、タンパク質や脂肪の消化を得意とします。しかし腸の長さが短く、繊維質が多く含まれる炭水化物の消化はあまり得意ではありません。
エビの殻や尻尾は特に危険
エビの殻や尾の固い部分には動物性炭水化物であるキチンが多く含まれているため、あげないようにしましょう。消化しにくいため嘔吐や下痢などの消化器症状が生じる可能性があります。
3:アレルギー症状が起こる可能性がある
エビには甲殻類アレルギーのリスクがありますので、もともと甲殻類に対してアレルギーがある犬をはじめ、幼犬やシニア犬、免疫機能が低下している犬は要注意です。
アナフィラキシーの様な急性アレルギー反応による呼吸困難、嘔吐などの症状や、たとえ少量でも長期間食べ続けることで食物不耐性(慢性のアレルギー症状、消化管や皮膚などの慢性的な炎症)が起こりうる食べ物です。
犬にどんな症状がでるの?
チアミン(ビタミンB₁)欠乏症
- (初期)食欲低下
- 眼振
- 心肥大
- 運動機能障害
- けいれん発作
- 多発性神経炎
- 不全麻痺 などの重篤な症状になります。
この様な症状が見られた場合には、すぐに動物病院へ行きましょう。
アレルギー症状
- 痒み
- 湿疹
- 嘔吐 など
以前、エビ以外の甲殻類を食べて同様の症状が出た場合は、特に注意が必要です。また初回に何の症状も見られなくても、二度目や三度目に発症することもあります。
アナフィラキシー(急性のアレルギー症状)の場合
食べてからすぐに、呼吸困難、痒み、湿疹、嘔吐などの症状が発症することが特徴です。この際はすぐに動物病院へ行きましょう。
犬に危険なえびの量は?
犬の体重や体調、食べた量によって異なるため不明です。
その時は問題がなくても、日々繰り返し食べ続けることで、慢性的な皮膚の痒みや消化器症状といった慢性のアレルギー症状が出てくる可能性があるので注意しましょう。
ご自宅での対処法
危険!すぐに動物病院へ
- 生のエビを大量に誤飲してしまった
- 与えた後にアナフィラキシー(急性のアレルギー症状)が見られた
上記は緊急を要するので、すぐに動物病院に連れていきましょう。
自宅で無理に吐かせるのはNG
食道炎を起こす可能性があります。心配かとは思いますが命に関わるので絶対にやめましょう。
早めに動物病院へ
- 2日以上軟便が続く場合
- 十分に栄養が摂れていない状態で、犬が生のエビを誤飲してしまった場合
上記の場合は早めに動物病院を受診することをおすすめします。
正確な情報を獣医師に伝えられるように「誤飲した日にちと食べてしまったエビの量」をメモしてから受診するようにしましょう。
経過観察でもOK
- 食欲も元気もあり、少し便が緩い程度で他の症状がない場合
上記の場合は、ドッグフードをふやかして普段与えている量の半分以下に減らして経過観察をしましょう。
動物病院での行う検査と治療
①検査
症状に応じて血液検査やレントゲン検査を行います。
②治療
催吐処置は大量に誤食してすぐの場合以外は基本的に行いません。
点滴治療、制吐剤、下痢止めの投与といった症状を抑える治療を行います。
アナフィラキシー(急性のアレルギー症状)の場合
命に関わりますので、緊急でステロイドや抗ヒスタミンなどを投与し、症状によっては入院による点滴治療を行右必要があります。
チアミン(ビタミンB₁)欠乏症の場合
早期発見と治療がとても大切です。適切な治療が行われない場合は2~3日で死に至ることもありますが、眼振などの神経症状がみられてから24時間以内にチアミン投与治療を行えば、すべての症状は改善します。
よくある質問Q&A
愛犬が生のエビを舐めてしまいました。すぐに病院に連れて行った方がよいでしょうか?
健康な犬であれば舐めただけでは大きな問題は起こりません。しかし、犬の大きさや体調によってはアナフィラキシー症状が起こる場合があるので愛犬の様子をよく観察することをお勧めします。
犬用のおやつにエビが入っているのですが、大丈夫でしょうか?
犬のおやつに含まれているエビは、加熱・乾燥させてあるので、甲殻類アレルギーがない犬であれば問題はありません。人間用のおやつは、犬には塩分が多すぎるので与えないようにしましょう。
犬がエビの殻や尾を誤食してしまいました。どうしたらよいでしょう?
誤食してすぐの場合や誤食した量によっては催吐処置を行う場合もありますので、動物病院に行くことをおすすめします。
数時間経過している場合は無理に吐かせる処置は行わず、経過観察しましょう。殻や尾は消化が悪いので、嘔吐や下痢などの消化器症状が見られた場合はすぐに動物病院を受診してください。
わたし自身エビが大好きなので、愛犬にも与えたいです!少しなら与えても良いでしょうか?
わたしたち人間は雑食動物で、犬とは消化器の特徴が異なります。
エビは犬の身体には消化が大変な上、与えるデメリットの方がメリットより多いため犬に与えるのはおすすめしません。
どうしても与えたい場合は必ず加熱して、消化の悪い殻や尾などを取り除いた上でごく少量与えましょう。
普段の生活で生のエビをわざわざ与えることはあまりない気がします。実際にあったエビの誤食の例を教えて下さい。
飼い主さまがエビやイカなどの入ったにぎり寿司をテーブルの上に置いておいたところ、犬がテーブルに登ってネタごと全部食べてしまったことがありました。
誤食してすぐに飼い主さまが気づいて来院されたため、催吐処置を行いました。
イベント時や年末年始など、お寿司等を食べる機会が多い時期は特に気をつけましょう。
まとめ
エビは犬に敢えて食べさせるメリットは少ない食べ物です。
特に生のエビにはチアミン(ビタミンB₁)分解酵素であるチアミナーゼが多く含まれているので、絶対にあげないようにし、誤飲事故にも気を付けましょう。
どうしても与えたいときは、充分に加熱し殻や尾を除いた身の部分のみにしてください。加熱しても、急性・慢性のアレルギー症状や消化器症状が生じるリスクがあります。
またエビに限らず、人間の感覚で食べ物を与えると、犬の身体に負担になるため注意が必要です。
<参考文献>
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