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東洋医学(漢方や鍼灸)のメリットなどを獣医師が解説【動画あり】

西洋医学との違い、メリット・デメリット、漢方や鍼治療について獣医師が解説【動画あり】

鍼や漢方などを用いる東洋医学、人間の私たちにはとても身近な頼れる存在。それは動物にとっても同様で、犬や猫の治療にも古くから用いられています。
「いのちのために」記念すべき1回目は、東洋医学について、かまくらげんき動物病院の石野 孝先生にご執筆いただきました。

  • 石野 孝先生
    国際中獣医学院中国本校認定講師、
    日本校校長でもあるすごい方!

  • ミーレくん
    先生の愛犬♡

東洋医学と西洋医学の違い

東洋医学と西洋医学の違い

私たちが良く耳にする東洋医学とは、西洋に対する東洋で発展した医学のことをいいます。

西洋医学とは、ヨーロッパで19世紀後半に発展した近代医学で、現代医学とも呼ばれます。今ある症状に対して、検査で原因となるものを見つけ、取り除くことで病気を治していく医療です。
同じような症状の人に対し、エビデンス(証拠)に基づいて治療を行っていき、多くの人への効果を重視しています。

東洋医学とは古代中国の中国伝統医学(中医学)を起源とし、漢方薬治療、鍼灸、按摩を含み、鎖国下の日本で独自の進化を遂げたものをいいます。東洋とは、中国語で日本という意味もあるんです。また、漢方医学という言葉も聞いたことがあると思いますが、オランダ医学である蘭方医学になるのが漢方医学で、日本伝統医学の正式な呼び名なんです。

東洋医学は、個体差のある体質や生活環境などを含めた、体全体をみて治療を行っていきます。
また四診といって、問診・聞診・視診・触診を行い「証」という体質を判定していきます。そしてその「証=体質」に準じた、鍼灸や漢方薬が処方されるということになります。
ですから同病異治といって、同じような症状でも「証=体質」によって、治療法が異なることも多々あります。また反対に異病同治は、違う症状でも同じ治療法が選択されることを言います。
このように東洋医学独特の診断法、治療法があるのです。

東洋医学のメリット・デメリット

東洋医学のメリット・デメリット

東洋医学は、西洋医学の検査数値では現れない体の不調に対応することができる利点があります。例えば、冷え性、婦人科疾患、不定愁訴(イライラしやすいやだるそうなど、明確な原因が分からない不調)などがあげられます。また、闘病中、老齢期の養生にも併用して対応することができます。さらに東洋医学独特の体質診断をすることにより、例えば、心や体を動かす源である気が不足している「気虚」という状態に、補気作用のある漢方薬やツボ刺激で対応することができるなど、日常の活力増進にも有用です。

デメリットは、急性期の対応は西洋医学に劣る点です。例えば、感染症・肺水腫・ショック状態・骨折などには、西洋医学を速やかに選択する必要があります。また、外科分野は東洋医学では対応できません。大きな腫瘍があり、それを鍼のみで取り去ることや漢方薬で腫瘍をなくすことは不可能です。

獣医療における漢方薬とは?

獣医療における漢方薬とは?

植物、動物、鉱物からなる個々の生薬を組み合わせて出来上がったものが漢方薬です。
本来は刻みといって、木の根っこや実などの生薬そのものを土鍋でコトコト煎じたものを、一日かけて服用します。しかし現実的には、毎日生薬を煎じるのは大変ですし、生薬独特の味とにおいで、動物に服用させるのはかなりハードルが高いのです。したがって、エキス剤という生薬を煎じる手間をなくしたものを利用するのが一般的です。さらに動物用のものは、苦味を押さえた飲みやすいものになっています。

漢方は天然の物なので副作用とは無縁に思うかもしれませんが、副作用はあります。例えば体が冷えているばあい、温める必要があるのに、体の熱をとるものを摂取すればますます体は冷えてしまいます。体質にあったものを服用することが重要なのです。

獣医療における灸とは?

獣医療における灸とは?

灸治療とは、もぐさで出来たお灸に火をつけて、ツボを熱刺激し、気血の流れをよくし様々な不調を改善させる方法です。俳人の松尾芭蕉が足三里というツボに灸を据えながら旅をしていたことは有名ですね。足三里は足腰の疲れや胃腸の働きを改善します。

動物の場合、主にもぐさを棒状にした棒灸をもちいて行います。湿らせた布を皮膚にあて、その上からホルダーにセットした棒灸を患部やツボの上にあてることで、湿った熱刺激(温熱)を与えます。これを温灸といいます。私たちが寒いとき温泉で体を温めるといったイメージをするとよいでしょう。熱は、空気より水分を介したほうが早く伝わることを利用しています。人に通常行われている直接肌に灸をのせて行う方法とは異なり、棒灸は輻射熱で患部を温め血行を良くします。
棒灸法は使い方を間違わなければ火傷の心配は少ないです。ただし、火を取り扱いますので火そのものの管理、皮膚被毛の燃焼には十分な注意が必要です。
老齢期で冷えがある子、腰痛を持っている子、胃腸の弱い子、または健康の保持増進に温灸は最適です。

獣医療における鍼とは?

獣医療における鍼とは?

鍼治療は、使い捨てのステンレス製滅菌鍼をツボに刺して刺激する方法です。鍼の太さはいろいろありますが、基本的に髪の毛のような細さです。日本の鍼は患者さんが痛みを感じにくいように筒状の鍼管を用いて行いますので、刺入時の痛みはほんのわずかかわからない程度です。
ツボに鍼が入ると重たい、ズーンとくる感覚にしばしば見舞われます。これを得気といいます。人ですと、この得気の感覚を伝えることができますが、動物の場合は鍼を打つ施術者の手にその得気の感覚が伝わることでわかります。鍼を打つ際この得気を得ることが重要なのです。
鍼が入る感覚を嫌がる子もいます。体を触られることに慣れていない場合、鍼をしようとするだけで嫌がる場合もあり、鍼治療の適応かどうかは動物が受け入れてくれるかにもかかっています。もし鍼治療を受け入れてくれない場合は、レーザー光線による疼痛管理、ツボ刺激を目的としたレーザー治療の選択肢もありますし、鍼治療の代わりに温灸を行うこともいいでしょう。

ミーレくんの体験動画

ミーレくんが、鍼→灸→レーザー鍼を体験。思わず「私もやってほしい」と思ってしまうくらい気持ち良さそうです!

執筆医 石野 孝先生

執筆医 石野 孝先生

かまくらげんき動物病院

住所:神奈川県 鎌倉市 笛田1-3-15
施設詳細はこちら

編集部より

東洋医学について理解を深め、より身近に感じていただけましたでしょうか? 病気だけではなく、生活やその子自身のことをしっかり見てくれるので、深い安心感があります。
治療はもちろん、予防や日々の元気のためにぜひ取り入れてみてくださいね。

「いのちのために」は、動物医療について深く知っていただき、飼い主さまの選択肢を増やすことで、より豊かで幸せなペットライフをおくっていただきたいという想いをこめて制作しています。

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