Veterinarian's interview

インタビュー

動物たちは命を懸けて私達を愛してくれます。私たち人間同士では難しいことを、彼らはこともなげにやってのけるんですね。 動物たちは命を懸けて私達を愛してくれます。私たち人間同士では難しいことを、彼らはこともなげにやってのけるんですね。

動物たちは命を懸けて私達を愛してくれます。私たち人間同士では難しいことを、彼らはこともなげにやってのけるんですね。

みなみこいわペットクリニック 医療サポートセンター

杉本 恵子院長

東京都 江戸川区

みなみこいわペットクリニック 医療サポートセンター

杉本 恵子院長

江戸川区南小岩の住宅街の一角に、この地に根を下ろして40年を数える動物病院「みなみこいわペットクリニック」がある。院長の杉本先生に伺ったお話からは、先生の人柄の良さや獣医療に対する思いが伝わってきた。

contents 目 次

この地域についての思い

当院はこの地域に根をおろして昨年(2014年)で40年の節目を迎えました。私は元々の生まれはこの地域ですが、父の仕事の関係で5歳くらいまで地方を転々としていました。小学校の時はポケットに煮干なんかを入れて、登校中に見かけるワンちゃんに挨拶しながら歩いていました(笑)。

実際に我が家で犬を飼い始めてからは文字通り人生観が変わったことを今でもよく覚えています。家にいて面白くないことがあると外の犬小屋に入れてもらったり、犬と一緒に家出をして、お腹がすいたら帰ってきちゃったりといったこともありました(笑)。

患者さんは基本的にはこの辺りにお住まいの方が多いです。この辺りは最近動物病院がたくさん出来ていて、しかも当院は混み合っていたり、お待たせしてしまうことが多いのですが、それでも認めてくださる方だと遠くからみえる方もいらっしゃいます。本当にありがたいことです。

病院の特徴である代替療法について

一言で代替療法といっても、ホメオパシー、ホモトキシコロジー、フラワーエッセンス療法等、様々な治療があり、光線療法やオゾン療法、音を使った治療等もあります。患者さんに認識していただきたいのは、代替治療の本質は自分本来の生命力をどれだけ手伝えるかにあるということです。これは「治療」そのものの原点だと考えています。ワクチンを打つ等の予防も一つのやり方として重要なものですが、それは医療の本質ではないように感じます。

当院が代替治療として最初に行ったのはワンちゃんのカウンセリングでした。

例えば、治療しようとすると大暴れしたり、すぐに噛み付いてしまうような子には治療を行えないですよね。大人しくしてくれない、吠えるのを止めることもできない。そういうような子に育ててしまうのがまず問題だと考えました。飼い主さまと動物との間できちんとコミュニケーションを取れるような関係性を築くことが、治療をする以前に必要な予防療法だと思います。

治療を攻撃と勘違いされては動物さんに申し訳ありませんし、治療が十分に行えないこともあります。自分を好いてくれている動物が、治療によって恐怖を感じたり、飼い主さまや病院を嫌いになってしまうのでは医療としては問題だと思います。 予防医療の一歩として信頼関係を築くための行動学を大切にしていくことが、獣医師として初めに行うべきことだと思いますし、飼い主さまにはそのことを理解していただくことから始まると思います。

印象に残っていること

もちろん印象に残っている子や忘れられないことはたくさんありますが、一つ挙げるとすると…。

過去に、リンパ腫になったゴールデンレトリバーのアルフ君を診察した時のことです。その子は何度かの危機を切り抜けて、頑張ってくれていました。いよいよ危ないなという時期になってしまい、入院中のアルフ君へ飼い主さまに会いに来ていただいていました。酸素室に入れていると外に出たがるので、医局の好きなところにいさせてあげていました。私が診察室で診察をしていると目線を感じて、何だろうと振り返るとその子が働いている私をじーっと見ているんです。すごく優しい目をして見守るように見ているんですね。私が視線を感じて振り返るくらい一生懸命こっちを見ていて、30分後に静かに眠るように息を引き取りました。その時感じたアルフ君との繋がりは今でも私の中にあります。勿論その子だけでなくて、今まで出会ってきた、たくさんの動物たちとの絆は今も繋がっていると思っています。

個人的な事情ですが、私が病気をしていてとても苦しかった時も、例えば普段いらしてくださっている飼い主さまや、周りの方たちにたくさん助けていただきました。それも動物たちが繋げてくれた縁だと思っています。動物たちは命を懸けて私達を愛してくれます。私たち人間同士では難しいことを、彼らはこともなげにやってのけるんですね。

キャリアを積んでも、日々勉強

キャリアに関しては、気づいたらそれだけ時間が経っていたので特別そういった自負は無いのですが、他の病院の先生との繋がりが増えてくると、認識することはありますね(笑)。今では定期的にお会いする先生も多くいらっしゃいますし、つい先日学会で久しぶりにお会いした方もいらっしゃいます。学会や研究会等の集まりは、事前に誰と会うかわからないので、行ってみたら「あれ!久しぶり!」ということはよくありますね(笑)。

先生同士の繋がりの中での情報交換を行うのは大切ですね。話に熱が入って議論になっていくということもあります。そういった、日々勉強というスタンスは当然だと思います。獣医療というものは常に進化、変化していますから、勉強を怠るとすぐについていけなくなってしまいます。また、新たに出てきた意見、見解を正しいかどうか判断したり、それを取り入れられるかの判断は自己責任で行います。それに対して情報を持っていなかったらよくわからないままで終わってしまいますからね。

犬猫以外の動物の診療について

実は、ドリトル先生ではないですが人間以外の全ての動物を治療するのが獣医だと思っていたもので、当院では犬猫以外の診療も行っています。

今まで診察した動物で変わったところですと…。昔の話ですが、ライオンの子供やレオパードを診察したこともありました。小さいけれどキレイな子でしたね。鳥類、猿、フェレット等の小動物の診療も行いますが、当然体の構造は犬猫と大きく異なりますので勉強は必須です。

全ての治療に共通して言えることですが、その動物の普段の生活状況を知ることは大切です。食べている物や、暮らしている環境を調べて病気の原因や改善点を見つけていきます。犬猫以外の動物の治療に関しては、大学を卒業する前に動物園に研修に伺った時の経験が非常に重要なものになりましたね。

野生の動物たちに対して仲良くなりたいというのは人間の欲望ですが、お互いに何かを伝え合ったり、互いに目を見て何かを感じるのは自由だと考えています。人間が自分たちだけ偉いとか賢いとか、自分だけに通用する物差しを振り回していたら、何と言うか、楽しくないな、と思うんです。そうではなく、地球上に様々な動物がいて、様々な生き方があって、それをお互い認め合うことが重要だと考えています。

獣医とは

「獣医さんとは何ですか?」と問われた時に、そういった自然の基本的なことに立ち戻れる位置にいるのが大切だと思います。勿論、色んな先生がいらっしゃいますが、私はそういった自分が地球上に生きている動物の一人、という原点を考えた時に、自分が全体から何を貰って、何を発信しているのかを自覚していたい。その自覚があれば、必要な時に必要な人に、情報として医療的なアドバイスをお渡しすることが出来ると思います。

少し小難しいお話ですが、これらは勿論西洋医学の知識、技術のベースがあってのことです。基本的、根本的な医学的知識が無かったら、違う療法を行うことはできませんし、行うべきではないです。

杉本先生が志す病院像

飼い主さま自身が、動物が身近にいることの素晴らしさに気づかないケースが実はたくさんあって、それを治療の中で気づいていっていただくことが、動物たちが望んでいることだとも思います。

生きることや死ぬことを人間だけの目線から見るのではなく、動物たちが何を思っているのかということを伝えていきたいですね。そうしたことができる病院を目指していますし、当院のスタッフ達の協力が無ければできないことですから、お互いの理解と方向性のあるチーム医療を日々目指していきたいですね。

動物との関係性というか、動物との関わり方は人それぞれ色々な形があっていいと思いますが、私は自分自身が昔から、身近に動物がいないと心のバランスをとれない人間でしたので、その関係性自体を差別化することは必要無いと考えています。ただ、人が心の拠り所として求めることができるものとして、自然界のものはかなり大きい存在だと思うんです。言ってしまえば、動物がいなくなったり花が咲かなくなったりすると、人が人らしく生きていけないように思います。

私は獣医師という立ち位置から、その素晴らしさを発信していければ良いなと思いますね。

hospital information 施設情報