Veterinarian's interview

インタビュー

全ての人と動物が笑いに溢れる暮らしを送れるようにするのがこの病院の目標です 全ての人と動物が笑いに溢れる暮らしを送れるようにするのがこの病院の目標です

全ての人と動物が笑いに溢れる暮らしを送れるようにするのがこの病院の目標です

Rire

橋本 理沙院長

東京都 渋谷区

Rire

橋本 理沙院長

渋谷区上原の閑静な住宅街の一角に佇むRire。「笑う」という意味を持つ言葉を冠したこの病院ではどのような治療を行っているのか、院長の橋本先生からお話を伺った。

contents 目 次

高齢動物ケアと身病治療について

東洋医学的な見方ですと、病気は症状が出る前に、体に何らかの不調という形でサインが出てきているんです。例えば性格が変わってしまったりだとか、一か所を集中して舐めている等、そういったところから病気の始まりは既に兆候として出てきているんですね。

例えば肝臓が弱ってくると怒りっぽくなってしまったり、腎臓が弱ってくると以前より怖がりになったりと、そういった変化があります。普段の性格や行動からちょっと変わったことがあった場合、その変化は何かしらの体の不調から来ている場合が多いので、そういったところから今後なり得る可能性のある病気を、症状の発症前に防ぐのが未病治療ですね。

ここの臓器が弱っていますよということをお話しさせていただいて、東洋医学の考えを取り入れた毎日の食事等のお家でできるケアを中心に、鍼灸や漢方・アロマも織り交ぜながら未然に病気を防げるよう行わせていただいています。

また、体の不調が性格に表れるように心の不調が体にも表れますので心のケアも未病治療の一環として行っています。食事は体だけではなく心もつくる大切なもので、未病治療に欠かせないものです。

西洋医学と東洋医学の違いについて

医学的な視点は全く違ったものになりますね。例えば脈の取り方一つにしてもそうで、西洋医学的な脈の見方では速い、遅い、抜けるという点に重点を置いていますが、東洋医学では脈の浮き沈み、つまり強さですね、さらに脈の長さや、臓器によっては細い脈、渋い脈等、いろいろな見方があるんです。なかなか一言では説明しづらいのですが、そういった違いがありますね。

高齢動物のデイサービスを取り入れたケア体制

病院の中での診察ですと、例えば診察中に他のワンちゃんの鳴き声が聞こえたりすると過敏な子は反応してしまいますので、そういったことが無いよう当院では予約制という形で時間を取らせていただいています。若い動物の診察の際にも共通して言えることですが、話しかけながら治療を行うことで動物も安心しますし、また高齢動物の脳に良い刺激になりますのでそういったところですね。

また、当院で力を入れているデイサービスに関して言えば、床ずれをしないようにとか、関節が固まってしまわないよう動かしてあげるといった点が挙げられます。
お預かり中に見つけられる病気は見つけてあげたいという気持ちもありますし、心のケアとして、体を動かすだけではなくマッサージで気血のめぐりをよくしたり、アロマを焚いて音楽を流して穏やかな時間作りを心がけています。

また、当院では動物だけでなく飼い主さまへのケアもしたいという思いがあります。当院でお預かりしている間、飼い主さんに少し休んでほしいんですね。
介護というのはとても疲れることなので、お休みを取ってリフレッシュした状態で、動物と介護を楽しんでいただきたいと思っています。同様に、病院通いが大変な方のために往診も行っています。

デイサービスを取り入れたきっかけ

私自身が飼っていた子が腸のリンパ腫で亡くなってしまったのですが、その子の介護をしていた時に、仕事との両立というのがとても大変だと感じました。介護をしている人達の中には、辛い思いをして動物との関係を崩してしまっている方もいると思います。

そういう方に対して少しでも力になりたいと思ったのがきっかけですね。介護をしていらっしゃる方の中には、他人に甘えてはいけないと思い自分だけで頑張ってしまうという方も多いように思います。頑張らなくていいよということを伝えたいという気持ちは凄くありますね。

例えば寝たきりの子だと、まめに態勢を変えてあげないといけないし、夜鳴きの子もいますので、昼夜逆転して眠れないという方もたくさんいます。介護で疲れてしまわないように、動物との関係が崩れてしまわないように当院で代わりにケアをしてあげたいですね。

介護や、終末期といった愛犬愛猫と一緒に過ごせる時間というのは、動物から私たち飼い主に与えられた最後の最高のプレゼントだと思うんです。そういう大切な時間を、良い状態で、良い関係で楽しんでいただきたいと思っていますので、当院でその時間のサポートができればいいなと思い、取り入れ始めました。

代替治療について

当院で行っている代替治療は、具体的に言うとアロマ、ハーブ、漢方、鍼灸、マッサージ、リハビリ、食事等ですね。鍼灸等は取り入れている病院も多いように思います。

動物に鍼?と思われる方もいるかもわかりませんが、大人しく受けてくれる子が多いですよ。また、基本的に動物にストレスを掛けないで行うものなので、鍼を嫌がったり怖がったりする子には、鍼の代わりに人の子どもにも使う金属の棒や指圧で施術を行います。

ハーブに関しては、私が動物一人一人に合ったものを推奨しているという形です。アロマは東洋医学の考えを取り入れながら一人一人の疾患や体質・性格に合わせて当院でオリジナルで調合しています。当院では西洋医学的な薬の代わり、つまり代替治療としてアロマを使うことも有りますし、東洋医学の考え方を取り入れて、香りで心のケアをすることも有り、二つの使い方で心と体両方のケアを行っています。

漢方は生薬をブレンドしたもので、自然のものを利用して体質改善を図る薬ですね。これは西洋の薬とは意味合いが違うものになります。アロマやハーブ、漢方のひとつの成分を濃縮させて化学的に作った物が西洋の薬なので、その方が圧倒的に効果は強いのですが、効果が出る分ある程度の副作用もあるので、薬と代替治療を上手く組み合わせながら体に負担が少なく済むような形を取らせていただいています。

また、西洋の薬は今ある病気を治すだけなのでぶり返すこともあります。漢方や食餌・鍼灸・マッサージで、体質改善を図って自己治癒力を高め根本治療を目指しています。

ハーブや漢方は副作用が少ないという大きなメリットがありますが、その代わり、薬としての効き目はマイルドになるので、すぐに効かせたいという方には物足りないと思う可能性はありますね。例えば痒み等でも、診察した結果、薬を使うほどでもないように感じても、飼い主さんがなるべく早い治療を望まれるという場合もあります。そういう時にどういった方法で治療を行うかは、飼い主さまと相談しながら決めています。

終末期治療(ターミナルケア)について

終末期治療という形を当院で取り入れ始めたのは自分が飼っていた子がきっかけでした。私が飼っていた子は、他所の人がとても苦手な子だったので入院はさせたくなかったのですが、抗癌治療が必要だったので本格的に治療をするとなると、どこかの病院で入院しながらしないといけなかったんです。入院しながらやることと、その子の未来と今の時間を考えた時に、私は傍に一緒にいて自分ができることをしてあげるのがうちの子にとっては一番だと思ったんです。

治療に答えはないと私は思いますので、今の病態と今その子に何ができるかを飼い主さまと話しながら、飼い主さまがどうしたいか、愛犬愛猫がどんな性格なのか、どんな思いなのかを考えて、エンドロールを一緒にプランニングしたいと思ったんです。実はこれはペットロスの対策も考えて取り入れたんです。あの時あれができなかったとか、こうしておけばよかったと後悔しないためにも、どんなことを準備したら良いか、どんな風に過ごしたら良いかも話し合ったりします。家族が後悔しないように愛犬愛猫と一緒に過ごしてほしいと考えています。

獣医師を志したきっかけ

私が幼い頃に飼っていた動物は凄く体が弱くて、病院によく通っていたんですね。病院に行って獣医師の先生の治療を受けると、弱っていた動物が元気になる。このことを幼いながらに凄いと思っていたのがきっかけですね。

学生時代、私は内科の内分泌という、ホルモンの研究をしている研究班に所属していたのですが、大学には糖尿病を患った動物がたくさんいたので、その子達の血糖値のコントロールや、甲状腺や糖尿病、副腎の病気等、色々な子を診るお手伝いをさせていただきました。

開院するにあたってこの場所を選んだのは私が生まれ育った地域だという理由もあるのですが、この地域は少し前まではほとんど病院が無かったんです。「この街を変えたい」というのが私の幼い頃からの夢だったので、現在の場所に病院を作りました。動物の治療を通して、少しでも地域に貢献できればと思っています。

動物に関わる業界で、獣医師ではない方ともたくさんお話しする機会があるのですが、その方達は動物が大好きだけど、獣医ではないのでできることの限界があるようで、そういう意味で羨ましいと言われることもあります。獣医師になったことで、動物に対しても飼い主さんに対してもできることが広がっていると感じています。

Rireが目指す理想の病院像

Rireという言葉は「笑う」という意味があって、人と動物が笑顔あふれる暮らしを送ってほしいという思いを込めてこの病院を作りました。実際に飼っている動物だけでなく、また、動物を飼っていなかったり、動物が苦手というような方にも優しい街づくりに貢献したいですね。

また、シェルターにいる子や、人のもとで飼われている子が捨てられないようにする活動など、私たちができることは少しずつでもあると思います。それを獣医の目線から行いながら、全ての人と動物が笑いに溢れる暮らしを送れるようにするのがこの病院の目標ですね。

治療面ですと、当院での治療は常に未来を見据えていたいんですね。なので、今すぐ良くなるからどうということより、その治療を行って何年後にどうなっているかを考えながら治療を行います。例えば、これは動物医療の中でまだまだ課題とされていることですが、抗生物質もずっと使い続けていると耐性ができてしまいますし、ステロイドも使い続けると副作用が出るだけではなくある種の薬が効かなくなってしまいます。私はそのために、本当に必要な時以外は使わないのはもちろんのこと、一定の期間だけ使うようにしたり、薬の代わりにアロマを使ったりといった風に、未来の体を考えた治療を心がけています。

目指すところは動物の体への負担をできる限り軽く、飼い主さまの納得のいく結果が得られる治療です。

飼い主さまへのメッセージ

ホリスティックの世界では、健康な心と体を作るためには心と体と環境のバランスが非常に重要になると言われていますが、やはり飼い主さまと一緒に生活を楽しむということが動物の長生きのための何よりの秘訣だと考えているので、当院では治療やケアを通して毎日楽しく過ごしていただくことのお手伝いができればと思っています。

hospital information 施設情報