Veterinarian's interview

インタビュー

動物達にとって動物病院という場所が、病気になってから来て治療で痛い思いをして帰るだけの場所であってほしくないんです 動物達にとって動物病院という場所が、病気になってから来て治療で痛い思いをして帰るだけの場所であってほしくないんです

動物達にとって動物病院という場所が、病気になってから来て治療で痛い思いをして帰るだけの場所であってほしくないんです

府中の森動物病院

下田 誠院長

府中の森動物病院

下田 誠院長

府中の森公園近くの国道沿いに佇む府中の森動物病院。2014年の春に開業したこの動物病院では、院長の下田先生が地域に根ざした獣医療を心がけ、日々診療にあたっている。下田先生の目指す獣医療とは何か、動物病院とはどうあるべきか、お話を伺った。

contents 目 次

獣医師を志したきっかけ

昔から動物は好きでしたが、特別家で動物を飼っていたわけでもなく、実は最初は職業としてこの業界のことは全く意識していなかったんです。

別の仕事を考えていたんですが、高校生の時の友人に「そんなに動物が好きなら獣医師になれば?」と勧められたのがきっかけになりましたね。職業として獣医師を意識しだしたのはそこからです。

実際にこの職業を目指す中では、研究室での実習のこともありますがなにしろ私の場合は勉強の方が苦労しましたね(笑)。特に国家試験を受けるにあたっての勉強ですね。

力を入れている眼科と循環器系の治療の原点

大学の研究室で勉強していた頃のことですが、私が所属していた研究室ではまず研究テーマを決めないといけないんです。

整形外科や麻酔や眼科など、幾つかか自分の中で候補はあったのですが、結果的には研究のテーマとして眼科治療を選んだのが力を入れ始めたきっかけですね。また、以前勤めていた病院には眼科治療を専門的に行っている先生がいらしたので、そこで多くのことを学べました。

循環器に関しては、三年くらい前に私が飼っていた犬を亡くしてしまったのがきっかけです。心臓の悪い子だったんですが、私が早くに異常に気づいてあげられなかったという思いがきっかけになりました。

飼い主さまへのお願い

病気の早期発見に専門的な医学の知識が必要だとは思いません。

例えば眼の病気に関して飼い主の方に気づいてもらいたいのは、分かりやすいところでいうと、「ぱちぱちと瞬きを繰り返すような行為」であったり、「目やにが溜まる」とか、「なんとなく元気がない」というようなことであったり、そういった目に見える「いつもとは違う何か」を見つけてくださればと思います。

「なぜか元気が無い」ということで病院に行って検査を受けて、身体の中を検査しても問題が見つからない、原因は何だろうと暫く様子を見ていたら、実は眼に異常があったという例もあります。

眼科というと、かなり特殊というか専門的な知識や機材が必要だという印象を受ける方も多いと思います。実際大掛かりな手術を行おうとしたら、専門的な病院や大学病院がたくさんありますし、正直に申し上げると当院はそこまでの域には至っていません。

しかし、当院でもある程度の機材を揃えており、各種のしっかりした検査を行えますので、当院が一次診療施設と二次診療施設の繋ぎのような役割になれればと思っています。

府中の森動物病院に関して

2014年の4月に開業したばかりで、まだまだ駆け出しの病院です。現在、獣医師は私一人だけですが、今後はもう何人か先生や看護師の方を加えて、今よりも幅広く診療を行える病院にしたいと考えています。

申し訳ないお話ですが、一人での診察となると、幾らか患者さまが増えてくると、どうしてもお待たせする時間が増えていってしまいます。現在は使用していませんが、院内にはもう一ヶ所診察室がある他、検査室や処置室はもちろん、トリミングルームや入院室も備えておりますので、それらの設備を有効活用できる病院にしていきたいですね。

獣医師が一人ですと、手術が一件二件と入ってしまったらもう、一日使ってしまうような状態になってしまいがちです。また、複数の獣医師で協力して治療を行うほうが、精神的な負担というか、一日一日の疲れ具合も減ってくると思いますので。

現在、当院では内科系の診療が多いのでそこまで手術を幾つも行っているわけではありませんし、長時間に及ぶ手術をやることはまれですが、今後必ずあるはずなので、そのための備えをしておきたいですね。
治療方針や、飼い主さまや動物たちに対する考えや姿勢といった点では、今までと変わらず誠心誠意やっていければと考えています。

心に残っている動物の話

印象に残っている動物達はたくさんいるのですが、飼い主さま方との人との繋がりに関しての方が印象が強いことが多くて、ある時、野良猫を拾ってきたおばあちゃんがいらっしゃったんですが、一度診療してからは何かあるごとに診察にいらしてくださいました。

それから五年も六年も経って、その子の病気が重くなり治療に反応しなくなってしまって、やむなく安楽死という形をとってしまいました。 自分で治した子を、結果的には自分の手で危めてしまったという事実が今でも胸に引っかかっています。

この地域に関して

この地域に住み始めてもう10年近く経ちますが、下町という感じでもなく、山の手という雰囲気でもなく、とても接しやすい人ばかりだと思いますよ。

本当に動物に愛情を注いでいらっしゃる方ばかりで、人としてのフィーリングというか、そういう面では凄くこの病院に合っていると思います。当院の患者さまですと、若年層の方よりはその少し上の方が多いように感じますね。

思えば、私が以前勤めていた二つの病院も、その土地ごとに患者さまの人間性というか、地域性が若干異なっていましたね(笑)。この辺りだと公園に野良猫がいることがあるんですが、その子達の面倒を近所の方が見られているようで、この間三人組で診察にいらっしゃいましたね。

当院は現在、東京都の動物愛護推進医院に推薦されていまして、そういった地域ぐるみの野良猫のケアであったり、犬のしつけであったり、犬猫の飼い方、パピークラス等のそういった活動の普及というか、些細なことであってもそういった地域に根ざした活動を少しずつ始めていきたいと思っています。

この辺りは他にも動物病院があるのですが、今のところ横の繋がりが強いとはいえない状態です。獣医師会に入っていらっしゃる方とは親交がありますが、地域の中での繋がりというのは正直希薄かもしれません。地域を通した活動を通じて、少しずつでも繋がりを作れると良いと思いますね。

地域の方や患者さまへのメッセージ

先程の話にも通ずることですが、地域に根ざした治療をメインに考えています。

病気になってしまった時に来ていただくのはもちろんなのですが、そうでない時にちょっと顔見せに来ましたとか、買い物帰りにちょっと寄りましたとか、そういった具合に気軽に来ていただけるような、病院づくりを心がけています。

動物たちにとって動物病院という場所が、病気になってから来て治療で痛い思いをして帰るだけの場所であってほしくないんです。動物達に病院が常に怖いところであると思ってほしくないので、健康な時にでも、何の用事が無くても、是非遊びに来てもらえればと思っています。