contents 目 次
- 獣医師を志したきっかけ
- 獣医を目指す上で大変だったこと
- 初めての執刀の体験談
- 印象に残っている患畜の話
- 獣医師として心がけていること
- 若い世代に伝えたいこと
- 病院の運営について考えていること
- 地域に対して、飼い主の方に対して
- 飼い主の方へのメッセージ
獣医師を志したきっかけ
やっぱり小さい頃から動物が好きだったことが大きいですね。実家でずっと何かを飼っていたという環境ではありませんでしたが、父の同僚の方が海外出張をするタイミングで、その方のワンちゃんを一年ほど実家でお預かりしていた時期がありました。ただ、1年もお預かりしていたらもう情が移ってしまうんですよね。お別れするときは寂しかったですね~(笑)。動物はそれ以降実家では飼っていなくて、大学に入学してから猫を飼い始めました。今はゴールデンレトリバーを飼っています。
獣医師を志すきっかけというのは、高校二年生の時にあった湾岸戦争が関係していまして、戦争に巻き込まれ、傷ついて倒れている動物が多くいることを知り、動物を助ける仕事をすることを心に決めました。
高校は文系で、それまでは獣医師を職業として意識したことは無かったのですが、今にして思えばそのことが決定的なきっかけになりましたね。
獣医を目指す上で大変だったこと
そうですね。文系からの方向転換ですから大変でした(笑)。何しろ先ほど言った通り、それまでは獣医師を職業として意識をしていなかったので、高校当時に選択していた理科の授業が地学だったんです。大学受験が地学ではできないものですから…そこから生物に方向転換して勉強をし直しましたね(笑)。まあ、獣医学科になんとか合格はしました。
ただ勉強することに終わりはないですし、今でも大学の先生の研究室にお邪魔して手術の見学や、たまに助手をやらせていただいています。
初めての執刀の体験談
ん~何と言ったらいいか…、初めて手術をした時なんかは、手技の順番を頭で覚えてやっていたんですよね。つまり手順として作業を理解しているだけで、「なぜそうするのか」の部分がわかっていなかったのかもしれません。まあやはりぎこちなかったですよね(笑)。
今だと例えば手術をしていて「なぜこういう処置をするのか」が感覚的にわかるようになったと思います。今こういう状態だから、こうしないといけないからこういう処置をする、といった具合に、理論立てて頭の中で考えながら手術を行うんですけど、手術の規模が大きくなるほど、手術前に、「こういうことが起こるかもしれない」ということを予測して手術に入らないといけませんね。そうでないと、何か起こった時に対処しようとしても間に合いませんので。
また、病院によっても違いますが、今はメス一つとっても超音波を利用した特殊な機械があり、繊細な組織の近くの処置も安全に行えるようになりました。椎間板ヘルニアや肝臓腫瘍の手術の際に特に重宝しています。
印象に残っている患畜の話
うーん…あ、以前勤めていた病院での出来事なんですが、その時の院長先生が15キロくらいの雑種犬の診察をしていて、私がその補助をしていたんですね。そのワンちゃんは診察台の上にいる時から私の服の袖を甘噛みして引っ張ったりしていたんです。その時はじゃれているのかな?と思っていたんですね。
程なくして診察が終わってその子をだっこして飼い主さんにお返しして、戻ろうとして後ろを振り返った瞬間にお尻を咬まれました。がぶりと(笑)。診察台の上で結構ストレスを感じていたんでしょうね。ズボンとパンツが破れてしまいました。そのあと病院に行ったのですが、その病院の看護婦さんに「どうやったらお尻を咬まれるんですか」と不思議がられましたよ(笑)。まるで漫画のような咬まれ方でしたからね。
獣医師として心がけていること
一番大事にしていることは、やっぱり動物は言葉を話せませんから、飼い主さんからいかに話を伺えるかということだと思いますね。なので、「こういうことが無かったですか?」と、自分の方から質問して答えていただくんです。そういう風に情報をいただいて、その動物の病状を把握していかないといけないですね。病気になって初めて来院する子と、例えばワクチンや診断等で前々から病院に顔を見せてくれる子とではやはりこちらとしても初見での理解度に差が出てきます。
また、飼い主さまとのコミュニケーションも同じです。何度も顔を合わせている飼い主さまとですと、コミュニケーションもスムーズに行えます。そういう意味でも普段から最寄りの病院に顔を出しておいた方が良いですし、私どもも健康な時の動物の表情を見ておきたいというのもあります。病気をしている子は一目見るとわかりますしね。
動物を飼っていて健康診断を一度も受けさせたことが無いという方が実は多いです。これはなかなか難しい問題なのですが、健康診断を受けることで、病気を早く見つけることができ、それは治療を進めるうえで最大のメリットになります。病気に早く対処することで、治る病気も多いです。
例えば猫の腎不全という病気は、初めは病気に気付かないで症状が出てきた時にはもうすっかり病気が進行してしまっているんです。病気の症状としては末期の状態ですね。尿検査や血液検査等で早い段階で病気に気づければ対処ができます。具体的には食事療法などですが、その後の生存期間にかなりの違いが出てきますよね。 予防が浸透している病気は、予防薬の進歩でほとんど見なくなりましたね。昔は多かった鞭虫(寄生虫)やフィラリア等の病気も今はお薬にしろ注射にしろ、とても少ない回数の投与で予防ができます。
経験を積んだ獣医は病気か否かの違いは見ればわかります。私が以前勤めていた病院の院長先生は、ワンちゃんが診察室に入ってきて一目見ただけで、「あの子は鞭虫(寄生虫)だなぁ。検便してあげて。」と言い当てていましたね。あれにはびっくりしましたね(笑)。多い病気だとなんとなくわかりもしますけどね。
若い世代に伝えたいこと
先ほど言った飼い主さまとのコミュニケーションですが、やはりこれを大事にしていってほしいですね。勉強が二の次という話ではないですが、人との意思疎通ができないことは我々の職業では致命的だと思います。
これは飼い主さまに対してだけでなくスタッフ間でも同じことで、良い治療をするにはチーム内での良好なコミュニケーションが必須だと感じています。勉強さえできれば良いということではなく、例えば人と遊んだり、何か一緒にスポーツをしたりだとかでも良いんです、そういう「人との付き合い」を大事にしてほしいですね。
当院は獣医が6人、看護師が5人と、トリマーが5人います、とても良いスタッフが揃ってくれたと思っています。
病院の運営について考えていること
スタッフが幸せであること、満足して仕事ができる環境を作ることが、患者さまの満足に繋がるとも思います。昔と比べて病院が増えてはいますが、競争とかは考えていなくて、考え方が古いかもしれないですが、お金、収入は結果だと考えていますので、きちんと診断、治療をして病気を治すことで病院の運営も上手くいくと考えています。
地域に対して、飼い主の方に対して
僕は進学で熊本から出てきて、大学を卒業してからはずっと千葉にいますが、出身地とは違うこの地域で起業し、飼い主さまに大切なワンちゃんネコちゃんを任せていただけ、信頼していただけるようになり、本当にありがたいことだと思っております。
今は大学病院や高度医療センターなどがありますが、理想としてはその地域の病院でちゃんと治療を受けられて、ちゃんと病気を治せればそれが一番良いと思うんですね。脳腫瘍等の、術後管理が大切な病気や、大掛かりな機材が必要な病気の場合を除いて、できる限りこの地域の動物たちの病気はこの地域の病院で治して差し上げたいと思っていますし、そういう風に今後もしていきたいと思っています。そのために先ほど言った特殊な手術機器なども揃えています。
飼い主の方へのメッセージ
気になることがあったら何でも相談してください。と、この一言に尽きますね(笑)。
よく、「こんなことで相談して申し訳ない」とか「暫くよその病院に移ってしまっていて申し訳ない」という方もいらっしゃるんですが、そういうことは当然だと思いますし本当に気軽に相談していただければと思っています。病状によっては他の良い先生をご紹介することもあります。動物とご家族の幸せのために一番いい選択をしていただきたいと思っていますので。