Veterinarian's interview

インタビュー

私たちは動物の健康を相談できる窓口であると同時に、専門性を持って治療を行う二次診療機関でもあります 私たちは動物の健康を相談できる窓口であると同時に、専門性を持って治療を行う二次診療機関でもあります

私たちは動物の健康を相談できる窓口であると同時に、専門性を持って治療を行う二次診療機関でもあります

白金高輪動物病院, 中央アニマルクリニック

佐藤 貴紀院長

東京都 港区

白金高輪動物病院, 中央アニマルクリニック

佐藤 貴紀院長

東京都港区にある白金高輪動物病院、中央区にある中央アニマルクリニック、この二つの動物病院では幅広く一般診療の受け入れを行っている傍ら、高い専門性を持った各科の辣腕な獣医師による高度医療を特徴としている。二医院を統括する佐藤貴紀先生は、飼い主さまはもちろん、スタッフ・獣医師からも絶大な信頼を得て病院を俯瞰で見守りつつ、自身も循環器科の認定医として動物たちの健康に向き合う。
日々、動物・飼い主さま、そして獣医療と対峙する中での矜持、その胸の内の思いやいかに。

contents 目 次

先生が総院長を務めておられる2医院は、どちらも専門性の高い医療を行っておられますが、院内はとても和やかな雰囲気ですね。

そう感じていただければ嬉しいです(笑)。私は治療を行う上で、獣医師が上から目線になってしまうことはあってはならないと考えていて、何より大切にしているのは飼い主さまと動物たちと同じ目線に立って治療を行うという点です。

二次診療と呼ばれる分野にも足を踏み入れている以上、完治が簡単ではない症状や、病気の重さを認識して不安な気持ちで来院される飼い主さまもおられます。専門性の高い病気となれば、飼い主さまはわからないことだらけだと思いますので、疑問に思うことを何でも聞いていただける環境づくりを念頭に置いています。そのためには、診察室の中だけでなく、病院全体の雰囲気を堅苦しくすべきではありません。受付での対応一つとっても事務的にせず、暖かみのある病院にしていけるよう心がけています。

専門医療だけでなく、一般的なワクチン・健康診断などを行っておられるのもそういったお気持ちからでしょうか

そうですね。専門分野のみの治療を行うとなると、その分野の治療が必要であることを飼い主さまご自身が判断しなければいけないことになりますし、医療を提供するにあたっての広い意味での間口の役割も担うべきだと思っています。もちろん間口は広げても、その中で行う医療そのものについてはより細分化して専門性の高い治療を行っていければと考えており、いわゆる1.5次診療施設のスタンスで、動物の健康に関することを幅広く相談していける場所でありたいと思います。

人の病院と異なり、動物病院は種別・症状別に広い範囲をトータルでカバーしていく必要がありますが、そうなると個人で掘り下げていける深さの面ではある程度限界があるように思います。医療そのものに100%というものはありませんが、その中で最善の医療をゴールとするなら、分野を限定し、より専門性を持って取り組むことでゴールに近づけるように考えています。

佐藤先生は循環器科の診療を特に注力して行っていると伺っています。心臓の病気というとやはりワンちゃんに多い病気なのでしょうか。

ワンちゃんは心臓病、ネコちゃんは腎臓病に注意するという認識を持っている飼い主さまは多いかもしれませんし、その兆候・認識は間違いではありません。しかし、病態の違いこそあれ、実は罹患率としてはワンちゃんもネコちゃんも同じくらい存在します。

ネコちゃんが高齢になり体調を崩すという意味では腎臓病は代表的な例ですが、症状として出てきていない心臓病を患っている子は多く、それが起因となり腎臓病を引き起こすこともあるのです。ワンちゃんの場合は雑音が確認しやすく、すぐに判断を下せるのですが、ネコちゃんの場合は聴診器だけでは判断がつかないことが多く、さらに踏み込んだ検査を行うにしても普段お散歩などで外出するワンちゃんと比べ、ネコちゃんの場合は病院に連れてくるというハードルや検査を行うハードルが高く、検査をする機会が少なくなり、その分病気が判明することも少なくなってしまう。

そういった背景があり、ワンちゃんネコちゃんで飼い主さまの認識が分かれてしまっているように思います。

そうだったんですね。循環器の病気というと、治療内容としては外科的な処置が多いのでしょうか。

現在行われている循環器科の治療は、治すというより病気と上手に付き合っていくという考え方が大きく、設備的な問題や費用・コストの問題、また成功率の問題もあり、そのほとんどがお薬の処方などによる内科治療です。

人間にも存在する代表的な病気の場合、人間ならば確立されている治療方法が動物にはまだ実施されて日が浅く、そこまで高い成功率を期待できないという面があります。さらに、心臓を止めて治療を行う設備を備えた医療機関は国内でも数が少なく、大きな費用が掛かってしまいます。もちろん、今後の医療の発展で成功率が上がっていく兆しはありますが、同時に別の側面からの対応策も日々研究されています。

人間の循環器科の場合は普段の生活習慣も大きく関係しているように思いますが、この点は動物も同様なのでしょうか

まだはっきりとわかっていない部分もあるのですが、その点は人間と異なるところです。人間の循環器疾患で一番多い病気は心筋梗塞とされていますが、これは生活習慣も関係する病気ですね。しかし犬についてはそれよりも弁膜の疾患が多く、その原因は高齢化による弁の形状の変化であり、生活習慣よりは遺伝的な関与が大きいとされています。生活習慣で言えば、例えば肥満と心臓病は一概に関係ないとは言えず、原因の一端であるかもしれません。猫の場合は、心筋症が多く、遺伝性病患の関与が疑われています。

数ある診療科目の中から、循環器科に興味を持ったきっかけについて教えてください

私たち獣医師は、まず聴診器を使用して診察を行うことがほとんどで、聴診器を使いこなせなければ心臓の状態の判断はできません。しかし、まず鼓動の中の雑音を聞き取れるかどうか、次に雑音から問題を判断できるかどうかは獣医師の腕…というか、耳によるところが大きく、聴診器である程度の目星をつけなければ、的確な診断を行うことはできません。

そういった意味で、命に直結する心臓という部分を勉強しようと考えたことがきっかけです。音で全てが判断できる訳ではありませんが、異常か正常かはわからないと話にならないと思いますし、そこで異常を見つけることの難しさはある意味奥深いというか、興味深い点かも知れません。

循環器科の診療を行う上で、特に注意して取り組んでいることはありますか?

循環器の病気の多くは、症状が表に現れた時には全ステージの半分を越えるところまで病気が進行している場合が多いです。そうなると、飼い主さまに対してその病気をどのように伝え、どのように治療に繋げていくかが非常に大切になってくると考えています。 専門的に勉強して知識を蓄えているからこそ、多くの情報を踏まえてお話が出来ると思いますし、一つの病気に関しても、状況に応じて適した対処は違いますので、その判断をするにはやはり専門的にやっていないとわからないことも多々あると思います。

獣医師を志すようになったきっかけについて、何か思い出はありますか?

幼い頃シェットランドシープドッグを家族に迎え入れたことをきっかけに、ワンちゃんとの生活の楽しさを知り、その子がヘルニアを患ったことで動物病院の存在や獣医師の存在を知りました。

当時の国内の獣医療は決して高度なものではなく、治らない、原因もわからないという診察結果に対して、子供ながらに疑問を持ちましたし、この子を治してあげたいと強く感じました。その後、毎日のマッサージで少しずつ足が動くようになり、看病の喜びを感じることができたのですが、そのようにワンちゃんを通じて知った様々なことがきっかけですね。

私が進学したのは獣医学部のある大学の附属高校でしたが、獣医学部に入れる倍率が非常に高く、我ながら猛勉強をした記憶があります(笑)。都内でも強豪のバスケットボール部にも所属していたので、両立はとても大変でしたが、今となっては良い思い出です(笑)。

実際に診察を行うにあたって、飼い主さまに対して心がけているのはどんな点でしょうか

最善の医療という意識の中には病気の原因を定かにしてお伝えしたいという気持ちが根本にあり、それを実現するためには専門的な知識を蓄えると同時に、病院の方針をそのように定めていく必要があります。

もし力及ばず動物が亡くなってしまったとき、その原因がわからないのは辛いと思いますし、場合によってはさらなる専門機関を強く薦めることも獣医師の役目だと思います。最初から最後まで飼い主さまに寄り添うことがコミュニケーションであると思いますし、そういった意味で飼い主さまとの関係性はとても大事にしている部分です。

そういったお付き合いをしていく中で、飼い主さまには動物の健康に関する知識を付けていっていただきたいと考えています。飼い主さまがある程度の知識を持って普段の様子を見ていただけるのは健康を維持する秘訣ですし、知識があるゆえに不安を感じることがあれば、来院していただけるきっかけにもなると思います。

ありがとうございます。最後に、佐藤先生の今後の目標について聞かせてください。

個人的には循環器の治療をさらに突き詰めて勉強していきたいですね。この分野は進化・発展の著しい分野ですし、さらに研究を重ねて進化していくべきだと思います。また、病院を束ねる院長として、手術や診療を行う現場のスタッフが自分の治療に集中できる環境を作っていきたいと思います。

病院としては…、ネームバリューというと何だかむず痒いですが、私たちが飼い主さまからさらに信用・信頼を得ていくことが必要だと考えています。例えば、「白金高輪動物病院の系列なら安心だね」と思っていただける、地域の飼い主さまに安心を感じていただける存在になっていきたいと思います。

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