獣医師・歯学博士/林 一彦 へのインタビュー(1/4)

林 一彦HAYASHI KAZUHIKO
無麻酔と非抜歯をモットーに動物に負担をかけない歯科治療に取り組んでいます
獣医療の各分野において、一つの専門科目のみに特化して診療を行う動物病院は国内でもその数は少ない。その稀有な存在の一つである花小金井動物病院は、動物の歯科分野の治療を専門的に行う医療機関である。
重度の違いはあれ、口腔内に何らかの問題を抱えている犬は多く、3歳以上の成犬の歯周病罹患率は80%以上とも言われている。この病院で獣医師・歯学博士 を務める林一彦先生は、獣医師であるとともに歯学博士でもあり、「口腔内疾患」の一点にターゲットを絞ることでその専門性を限りない高みへ押し上げている。 自身が長きに渡り研鑽を積み重ねてきた歯科医療について、多くの動物を受け入れる病院のあり方について、医療現場の第一線から林先生の言葉をお届けする。
プロフィール
- 所属 / 役職
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- 花小金井動物病院 / 獣医師・歯学博士
- 所属学会
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- 日本大学口腔科学会
- 日本実験動物医学会
- 日本歯周病学会
- 日本実験動物学会
- 米国獣医歯科学会
- 日本獣医学会
- 歯科基礎医学会
- 比較歯科医学研究会
- 日本薬理学会
- 日本大学獣医学会
- 学歴
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- 日本大学農獣医学部獣医学科卒業
- 日本大学松戸歯学部病理学教室専任講師
- イギリスのブリストル大学歯学部へ留学
- 経歴
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- 2012年 動物歯科クリニック・花小金井動物病院開設
- 2013年 日本大学歯学部名誉教授、ヤマザキ学園大学教授
- 2016年 LLC動物歯科医学研究所開設
インタビュー
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本日は宜しくお願いいたします。まず、林先生が獣医師を志したきっかけからお聞かせください
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獣医師を目指している若い皆さんと同じですね。動物が好きだとか、人とのコミュニケーションが苦手とか(笑)。若い頃からそのような具合でしたので、牧場で牛たちと生活できればそのような仕事もいいなと思っていましたよ。ただ、やはり獣医師の道に進むことを決定づけたのは、親戚に医者や歯医者、薬剤師が多かった家庭環境ですね。そのような環境で育ち、動物が好きなのだからこれは獣医師になるしかないと思っていました。
大学で獣医学を学んだ後は、ちょうど世間的にも歯学部や医学部など新設大学が増えている頃でしたので、お世話になった教授に誘われて大学の歯学部へ就職して研究などを行いました。はじめのうちはそこを2、3年で辞めようかと思っていたのですが、イギリスのブリストル大学歯学部に留学する機会にも恵まれたために腰を落ち着かせてしまい、気がついたら41年間勤めてしまいました。
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こちらの病院は歯科専門として診察を行っていると伺っています
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当院のように歯科専門として歯の治療と予防に特化した動物病院は全国でも他にはないかもしれません。なぜ私が歯科専門で診療しているかというと、それしかできないからです(笑)。
獣医師の場合は基本的に全科診療を行うため、単科診療を標榜している獣医師は国内にはまだまだ少ないのが現状であると思います。臨床経験上、治療分野の得意不得意が分かれているだけでエキスパートがいない現在の状況は決して望ましいものではないと思っています。他のことはやりません、わかりませんと言えるくらいの専門性が欲しいなと思っています。私の場合は開業の際に歯科以外のことはやらないと決め、それに特化する方針をとったわけです。職人さんの世界も同じように、一つのことに集中してそれ以外には手を出さないというのがプロフェッショナルの条件で、自分の仕事にプライドを持つことが大切ですね。

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