獣医師・歯学博士/林 一彦 へのインタビュー(2/4)

花小金井動物病院 獣医師・歯学博士 林 一彦

林 一彦HAYASHI KAZUHIKO

無麻酔と非抜歯をモットーに動物に負担をかけない歯科治療に取り組んでいます

獣医療の各分野において、一つの専門科目のみに特化して診療を行う動物病院は国内でもその数は少ない。その稀有な存在の一つである花小金井動物病院は、動物の歯科分野の治療を専門的に行う医療機関である。 重度の違いはあれ、口腔内に何らかの問題を抱えている犬は多く、3歳以上の成犬の歯周病罹患率は80%以上とも言われている。この病院で獣医師・歯学博士 を務める林一彦先生は、獣医師であるとともに歯学博士でもあり、「口腔内疾患」の一点にターゲットを絞ることでその専門性を限りない高みへ押し上げている。 自身が長きに渡り研鑽を積み重ねてきた歯科医療について、多くの動物を受け入れる病院のあり方について、医療現場の第一線から林先生の言葉をお届けする。

インタビュー

  • 人間の歯科治療にも共通する部分はあるのでしょうか?

    人間の歯と犬の歯は大まかには同じ構造をしていると言えますが、形状は全く異なります。そのような観点では全く異なるという見方もできます。そのことを理解していないと動物の歯科治療はできませんし、共通した要素についてもそれを犬に合うようにモディファイして治療してあげなければいけません。人間への治療方法をそのまま犬にあてはめても上手くいかないということです。
    病気の話をすると類似性のある病気は歯周病だけで、それ以外の病気は人間と犬とで大きく性質が異なります。顔の形も食べているものも違うのですから、病気も同じというわけではありません。肉食の動物は口の中に原因菌がいないので虫歯もなく、食べ物に由来する遺伝的なものがあるのでしょうね。口の中に虫歯の原因菌がいるかいないかは食性によるものなんです。

  • やはり、来院が多いのはワンちゃんの患者さまですか?

    そうですね。比率で言うと犬が9割、猫が1割といったところでしょうか。
    先ほどお話しした理由もあり、治療のほとんどは犬の歯周病です。歯周病の治療は人間と同じくスケーリングによる歯石除去と洗浄・貼薬がメインになります。もちろんその処置を行えば100%歯のグラつきを収められるわけではありませんが、そのような処置で一般的には抜かなければいけないという歯の半分以上は抜かずに済ませることができます。
    猫の場合は口内炎の治療が多いです。猫の口内炎は原因がまだよくわからず有効的な治療方法が見つかっていないのが実状ですので、治療は対症療法が主なものになります。一般的には猫の歯を抜いて対処することが多いようですが、当院では基本的に歯は抜いてはいけない、持って産まれたものを抜いたりすることはよろしくないという考えを持って治療にあたっています。抜かなければいけない状況というのは、手をつくして治療を行い、最終的にそれしか手段がなくやむを得ないという時だけです。はじめから抜くことを前提に治療を行うのはいかがなものかと思いますね。