contents 目 次
- 獣医師を志したきっかけ
- やりがいを感じる時
- 奈良動物医療センターの診療方針
- 健康診断の効果
- CT検査のメリットとデメリット
- MRI装置を使用した検査について
- 腹腔鏡下避妊手術について
- 今後の獣医療について
- 動物看護師との関係性や役割について
- 飼い主さまへお伝えしたいこと
初めに、作野先生が獣医師を志したきっかけを教えていただけますか
私は幼少時代に自然に溢れた三重の山間部で暮らしいて、周囲は常に様々な動物に囲まれているという環境でした。狩猟も盛んだったようで、猟犬なども多数飼育されていたようです。そのような環境の中で生活しているうちに動物に対する愛着が強くなってきたことがきっかけとなりました。毎日動物と触れ合いながら仕事ができる獣医師という仕事を目指そうと思ったんです。
獣医師になってやりがいを感じる時とはどのような時でしょうか
獣医師としてのやりがいに関しては自分が様々な経験を重ねるにつれて、少しずつ変化してきているように感じます。獣医師になりたての頃は自分の知識や技術を向上させることによって様々なペットを診療することにやりがいを感じていましたが、現在では当医院に勤務する若い先生方が経験を積み、成長していく姿を後ろからそっと見守っている時にやりがいを感じます。
私が今までに経験してきたことや学んできた知識が若い先生方に受け継がれていく様子を見るのは、他には代えがたい幸せだと思います。
こちらの病院ではどのような診療を実施されているのでしょうか
当医院では「ペットの苦痛を取り除くとともに、飼い主さんの不安も取り除く」ことを常に意識しながら、外科手術や皮膚科、腫瘍科などの診療を提供しております。ペットを連れて来院される飼い主さんは、普段とは違うペットの様子に少なからず不安を抱いているものです。当医院ではそのような飼い主さんの不安を取り除くために、ペットに対して迅速かつ適切な診療を実施することによって、少しでも早く苦痛を取り除けるように心がけております。
ただし、当医院では飼い主さんの気持ちに配慮するあまり、ペットの体力や心理面を無視するような診療は決して行っていませんのでご安心いただきたいと思います。例え、飼い主さんの希望する治療であっても、ペットに余計な負担を与えるような治療は当医院の診療からは省いていくようにしております。
「わんにゃんドック」と呼ばれる健康診断を実施されているそうですが…
はい。私たちが診療しているペットたちは「言葉」を話すことができませんので、ペットの不調に関しては基本的に飼い主さんに気付いていただく必要があります。しかし、飼い主さんがペットの不調に気づくのが遅れて、ペットはすでに重篤な状態に陥っていたというケースも少なくありません。当医院で実施している「わんにゃんドック」は血液検査を始めとした各種検査を実施することによって、病気の徴候を早期に発見し診療に繋げることができます。
また、ペットの身体が健康な状態の基礎データを取得しておくことによって、何らかの不調の際には原因の追求に役立てることができます。当医院では血検コース、スタンダードコース、プレミアムコースという検査内容が異なる3つのコースをご用意しておりますので、ペットの状態に合わせて選択していただきたいと思います。
こちらの医院ではCT装置を導入されておりますが、CT検査のメリットとデメリットを教えてください
当医院では先進のCT装置を導入し、CT検査や手術支援などに積極的に活用しております。CT装置とはX線を使って身体の断面図を撮影する装置であり、通常のレントゲンに比べて立体的で鮮明な画像を撮影できますので、かなり小さな病変であっても見つけることができる優れた装置です。当医院では腫瘍の診断や転移の有無の確認、血管の走行異常の診断などにCT検査を活用しております。
撮影時間は殆どの場合が15分以内ですが、動物の場合には全身麻酔が必要となります。全身麻酔による身体への影響が気になる飼い主さんもおられますが、当医院では経験豊富な獣医師がCT検査を担当しておりますので、安心してお任せいただきたいと思います。
CTだけではなく、MRIも導入されているとお伺いしましたが…
はい。当医院ではCT装置だけではなく、先進のMRI装置を使用した検査も実施しております。MRI装置は磁気共鳴画像診断装置とも呼ばれ、装置の中に強い磁場を発生させ、その電磁波を利用することによって身体のあらゆる断面を撮影できる装置です。CT装置を始めとする他の検査機器では診断することが難しい脳や脊髄などの神経疾患の検査に優れています。一般的には椎間板ヘルニアや脳腫瘍、脳梗塞などの診断を下す際に、正確を期すためにMRI検査を実施する場合が多いようです。
身体に負担が少ないとされる腹腔鏡下避妊手術について教えてください
当医院ではペットの避妊手術を希望される飼い主さんに対して、身体への負担が少ない「腹腔鏡下避妊手術」をおすすめしております。臍の下に小さな穴を開け、手術器具をお腹に挿入して手術を行う方法です。最近では人間の場合でも腹腔鏡を使った手術が数多く行われておりますので、このページをご覧の方にも経験された方もおられるかもしれませんね。
当医院ではこの手術を避妊手術以外にも活用しております。傷口を非常に小さい範囲に収められることや開腹して臓器を強く引っ張る必要がないことから、身体への負担が少なく痕が目立たない手術方法として注目を集めています。当医院では、この腹腔鏡下避妊手術の経験が豊富な獣医師が、大切なペットの避妊手術を担当いたしますので安心して手術を受けていただきたいと思います。
先生は今後の獣医療がどのように発展していくとお考えですか
私は今後の獣医療について、人間に対する医療と同じレベルまで高まっていくのは間違いないと考えています。現状でもCTやMRIを活用するなど、獣医療の設備や技術の面ではある程度のレベルまでは到達していると感じることもありますが、今後も技術の進歩によって今では想像のつかない治療法などが開発されるかもしれません。
ただし、獣医療の設備や技術の進化に比べて、ペットの心理面や日常ケアに関しては若干置き去りになっている部分があるようにも感じています。そこで、当医院では動物看護師を中心として、ペットの栄養面や心理面、介護面などを総合的にサポートするための態勢を整えております。
これからは動物看護師の皆さまの役割がますます重要になりますね
もちろんです。当医院では獣医師と動物看護師は対等な関係だと考え、それぞれが得意な分野を活かしつつペットに対して適切な診療を提供していくことが、本当の意味で飼い主さんに満足していただくためには必要ではないかと思います。
そのため、当医院の動物看護師にも幅広い分野の知識を吸収してもらい、様々な経験を重ねることで成長して貰いたいと考えています。そして、将来的には飼い主さんの大切なペットを総合的にサポートできるような医院にしていきたいですね。
最後に、飼い主さまにお伝えしたいことなどありますか
当医院では飼い主さんに対して、ペットの治療に関する様々な選択肢を提供することを診療方針としております。従来通りの治療から高度で先進的な治療に至るまで当医院では様々な治療を飼い主さんに提供できますので、当医院ではペットの身体状態や治療コストなど様々な要因を飼い主さんと一緒に話し合いながら、ペットに対して適切と思われる治療を提供していきたいと考えております。
ここからは飼い主さんにお伝えしたいことですが…当医院では、治療に関して飼い主が選択肢を持つことは非常に有意義なことだと考えております。正確な検査に基づき根拠のある治療を実施するように心がけており、その上で治療法を決定したいと考えております。必要な検査を実施するためにも、飼い主さんのご理解を賜ることができましたら幸いです。