Veterinarian's interview

インタビュー

専門分野のより深い知識を備え、一般診療プラスアルファの診療を提供していきます 専門分野のより深い知識を備え、一般診療プラスアルファの診療を提供していきます

専門分野のより深い知識を備え、一般診療プラスアルファの診療を提供していきます

室見動物病院

草場 祥雄副院長

福岡県 福岡市

室見動物病院

草場 祥雄副院長

福岡県福岡市にある室見動物病院は、平成元年の開業以来長きに亘ってこの地域の獣医療の中核を担う存在として、多くの動物と飼い主に愛されてきた動物病院だ。幅広い診療に対応している病院だが、一番の特徴は飼い主の気持ちに寄り添った医療を提供しているところに他ならない。
少年時代、動物の命のために昼も夜もなく献身的な医療に取り組む草場治雄院長の背中を見ながら成長し、現在では副院長の立場から病院を支える草場祥雄先生に、獣医療への深い思いを語っていただいた。

contents 目 次

獣医師を志したきっかけを教えてください

直接のきっかけとなったのは両親がこの病院(室見動物病院)を設立したことです。この病院は私が中学生の頃に開院したのですが、当時は放課後に「家に帰る」ではなく「病院に帰る」という感覚に、特別感のような一種のくすぐったさがあったのを覚えています。

父の診察風景、母の受付風景を見ながら学生時代を過ごしてきました。最初は殆どいなかったスタッフも徐々に人数が増えていき、父が「先生」と呼ばれるようになる。そんな風に病院の成長を近くで見てきましたし、私自身も病院と共に育ったと言っても過言ではないと思います。

夜中にチャイムが鳴って家族で病院へ下りていくと、「先生助けてください」と飼い主さまが飛び込んでくるようなこともありました。昼夜問わずに真摯に治療に取り組んでいる両親の姿を間近に見ていて、尊敬の思いを抱いていたのは間違いありません。

中学時代には漠然とした思いでしたが、高校生になって進学を考える時期には「この病院を続けていきたい」と思うようになっていました。両親の作り上げたこの病院を、自分も引き継いでいこうという思いから、獣医師の道へと進みました。

これまでのご経験の中で、特に印象に残っている出来事はありますか?

ペットたちは言葉を話すことができません。そのため動物病院での会話は人対人です。大人と大人の会話であればある程度理性的な会話になるのですが、お子さまが相手の場合はストレートに感情をぶつけられることが多いんです。「ペットが血を吐いた!」と叫びながら飛び込んできた小学生くらいのお子さまがいたのですが、これがたとえば大人の方だとある程度冷静な言い方になると思います。症状が同じであっても、お子さまの方が感じる不安は大きいです。

危篤な状態を目の当たりにしても、大人の場合は色々なことを悟ってしまっているので、極端に言えば「諦めてしまう」こともあると思います。しかしお子さまは諦めることがなく、「先生!お願いします!」「絶対元気にしてください!」とストレートに思いをぶつけてきてくれます。

そのお子さまの声こそが、獣医師のあるべき姿を思い出させてくれます。シンプルなことですが、それ故に大切なことだと思っていて、自分に迷いが生じたときはそういったお子さまの声が自分を導いてくれるような気さえしています。

循環器科の診療について特に注力して研鑽を積まれたとお聞きしましたが、循環器を選ばれたのにはきっかけがあったのでしょうか?

仰る通り、私は循環器に特化した動物病院で研修医時代を過ごしました。循環器の権威であり恩師でもある平川先生の講義に感銘を受けて、循環器の世界に興味を持ったのがきっかけです。

まだ獣医療の診療・検査機器が発達する前の頃で、例えばエコーも型の古いものを使用していた時代です。エコーを覗くことで「動物たちの体の中で何が起こっているのか」を知ることができる、そんな世界に強く興味を持って循環器の分野を学びました。平川先生の下で、自分の知識と技術の差を痛感しながら非常に有意義な新人時代を過ごすことができたと思います。

この動物病院自体は循環器を専門とした医院ではありませんが、循環器についての知識を併せ持つことによって一般診療の中でも多角的な視点をもって診療に臨むことができています。

飼い主さまへ向けてお伝えしたいことや、発信していきたいことなどはございますか?

動物病院というものは、敷居の高いものではありません。「病気ではないので相談できない」と思っている方も多いようですが、動物病院は日常生活の中で気になること、不安に思うことなどを気軽に相談できる場です。例えば「食事の量が減ってきている」という些細な相談であっても、実は病気の前兆だったというケースもあり、何でもないことがペットたちのシグナルである場合も少なくないからです。

「こんなことで相談しても良いのかな」と思う内容でも、まずは気軽に相談をしてください。言葉を話せないペットたちの些細なシグナルを見逃さないためにも、動物病院は気軽に相談のできる場所であるべきだと思います。

今後の獣医療はどのように変化していくと思われますか?

獣医療の今後は、今まで以上に各分野が細分化していくのではないかと思います。当院のように全科診療することが基本ではありますが、その中でも特化した診療科目を持った動物病院が増えていくのではないでしょうか。ヒトの医療と同じように獣医療も徐々に診断技術が向上し、再生医療なども発達してきています。そういった高度医療を求める飼い主さまも増えていくことでしょう。

獣医療において治療の選択肢の幅を広げるという意味合いでは、「細分化」は現実味を帯びた変化ではないかと考えています。例えば当院の院長であれば外科を専門としていますが、そのように得意分野を持つ獣医師は既に増加の傾向にあります。「受けたい治療が受けられる」という環境を求めていくのであれば、より高度な治療を提供できる専門医が増えていくのは自然なことです。

日常生活における動物との関わり方についてアドバイスをいただけますか?

大切な家族の一員であるペットを可愛がっているのはとても良いことだと思います。しかしながら「過干渉」をしないように、飼い主さまには気をつけていただきたいと思います。

ペットである動物たちは人と触れ合うことを喜び、人もまた動物と触れ合うことで喜びを得ます。しかし、人と同じように動物たちにも「自分の時間」というものが必要です。一人で遊ぶ時間を作ってあげることで、ストレスを発散させてあげることができます。是非、過剰に干渉しすぎないように注意をしてあげてください。

また、ペットを可愛がるあまり、人のおやつを与えて一緒に食べてしまうという飼い主さまも多くいらっしゃいます。結果としてペットが病気になってしまったり肥満になってしまったりすることもありますので、食べ物には十分な注意が必要です。人には人の、動物には動物の生活があるという認識を持って、境界線をしっかりと保つことが重要です。

最後に、草場先生の今後の目標についてお聞かせください

獣医療は今後細分化されていくのではないかというお話は先ほどさせていただきました。それを踏まえた目標になりますが、「一般診療プラスアルファ」を提供していくことを目標にしたいと考えています。

一般診療に真摯に臨むことは勿論ですが、それ以上に求められる医療を提供できる環境を整えていくことが大切です。自分自身の知識や技術を磨くこと、スタッフ全員のスキルアップを図ること、通いやすい環境を整えることなど、詳しく言ってしまうと沢山あります。動物たちの病気を治したいというのは、極端に言えば自分の自己満足に過ぎないという側面も否めません。しかしながら、治してほしいと願う飼い主さまがいらっしゃる以上は、それが私たちの使命であると考えています。

ただ診療を行うのではなく、専門分野を活かすことができる診療。一般診療の一歩先にある「望まれる医療」を提供していけるように努力していきたいと思います。

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