センター長 / 小林 哲也 へのインタビュー (1/3)

センター長 /小林 哲也 へのインタビュー

小林 哲也KOBAYASHI TETSUYA

動物たちがどんな症状を抱えていても、
私たちがさじを投げることは決してありません

躍進の著しい近代獣医学をもってしても今なお不治の病とされ、多くの動物たちの死亡原因としてその名が挙げられる腫瘍(がん)。埼玉県所沢市にある日本小動物がんセンターでは、そんな腫瘍を抱えた動物たちに希望をあたえる駆け込み寺として、日々の治療に取り組んでいる。飼い主はもちろん、多くの獣医師からも信頼を得るこの病院でセンター長を務めるのは、国内腫瘍内科学の権威でもある小林哲也先生だ。
ドイツの偉人ビスマルクの言葉や孫氏の兵法を例えに用いたお話は非常に興味深いもので、穏やかに話す言葉の一つ一つには、長らく腫瘍の専門医として辣腕を振るってきたからこその重みが感じられた。

プロフィール

所属 / 役職
  • 公益財団法人 日本小動物医療センター附属 日本小動物がんセンター / センター長
  • 小林犬猫病院(腫瘍科)
所属学会
  • 埼玉県獣医師会
  • 米国獣医内科学会
  • 米国獣医がん研究会
  • 日本獣医がん学会
  • 日本臨床腫瘍学会
  • 日本癌治療学会
  • ねこの医学会
経歴
  • 2001年:米国獣医内科学専門医(腫瘍学)として認定(日本人第1号)
  • 2002年4月~日本獣医生命科学大学非常勤講師
  • 2004年10月~日本小動物医療センター付属 日本小動物がんセンター センター長
  • 2010年~JVCOG 日本獣医臨床研究グループ 代表
  • 2011年~JFVSS 日本獣医学専門医奨学基金 代表理事
  • 2014年〜JSFM ねこ医学会 理事
  • 2015年~アジア獣医内科学専門医(小動物)

インタビュー

  • 初めに、小林先生が現在の専門性を高めたスタイルで治療を行う様になった経緯をお聞かせください

    大学6年生の時に就職活動を兼ねていくつかの病院に伺った後、さらに自分の思い描く理想の場所を求めて海外の環境も視野に入れるようになりました。そして米国の獣医学教育の環境が、当時多感な時期であった私の胸を強く打ったのです。
    日本国内の大学で行っている教育は、国家資格を取るための勉強という意味合いが強く、臨床医になる為のトレーニングは卒業後に現場で積むという定説があります。そのトレーニングをよりシステマチックに行える場所を探した結果、見つけたのが米国の大学の研究室でした。学生の頃から専門性の高い高度医療のことを考えていたわけではなく、全ては自分の理想を突き詰めていった結果だと思います。
    「この場所で得たものを日本に持ち帰ろう」という気持ちだけを抱いていましたが、何年か後に専門医制度の存在を知り、チャレンジしてみたくなったのです。

  • 専門で行っておられる腫瘍内科学について伺います。具体的には腫瘍にどういったアプローチで治療を行うのでしょうか

    腫瘍内科医はその動物が抱える症状に対する戦いにおいて、どのタイミングで、どのレベル(強度)の治療を、どの順番で投じるかをコントロールする司令塔となるポジションであり、 状況を総合的に俯瞰で判断する目線が重要になってきます。
    治療そのものを直接行うことは意外と少なく、それについては人に頼んでばかりです (笑)。
    腫瘍学は日本にいた頃から興味があった科目で、絶体絶命の状況にある動物やご家族に対しても「Can I help you?」と声をかけることができる点に魅力を感じています。また腫瘍を患っている動物は他の疾患を併発しているケースが多く、腫瘍学は外科、内科、放射線など全てを含めた総合的な医療を行う必要があります。

  • 獣医がん臨床研究グループ(JVCOG)の設立に関わられたそうですが、設立の動機などをお聞かせください

    ドラッグラグという言葉をご存知でしょうか。簡単にご説明すると、海外で開発されたお薬が日本で使えるように承認されるまでの時間差のことです。これが長ければ長いほど、最終的にお薬を必要とされる方に大きな負担がかかります。
    獣医がん臨床研究グループ(JVCOG)設立のきっかけであり目的は、輸入薬のドラッグラグを最小限にすることと、同時に新薬の開発の加速化にあります。
    最近はJVCOGというグループの認知度が上がってきたことで、ヨーロッパ・アメリカ・日本の国々で同時に治験を行い、日本でも同時に承認をしていこうというプロセスを、世界が認めてくれるようになりました。また製薬会社の方々は必ずしも臨床に携わっている方ではなく、具体的にどうしていいかわからない場面も多くあります。そのため私たちがキーオピニオンリーダーとして積極的に開発に関わることで治験プロセスの加速化を図り、いいお薬を日本で承認・開発してすぐに使用できるように環境を整え、がんという不治の病に対しての治療の質を向上させていきたいと考えています。
    研究内容はその他にも、診断・治療に関して基礎系の先生が築き上げたものをいかに臨床の現場に活用するかという橋渡し、いわゆるトランスレーショナルという部分についてのリサーチを行っています。