Veterinarian's interview

インタビュー

来院した全ての動物たちへ、常に本気で全力の治療を心がけています 来院した全ての動物たちへ、常に本気で全力の治療を心がけています

来院した全ての動物たちへ、常に本気で全力の治療を心がけています

近畿動物医療研修センター 附属動物病院

森 拓也病院長

近畿動物医療研修センター 附属動物病院

森 拓也病院長

生き物全ての体には鼓動が脈打ち、体には血液が循環している。これに異常をきたした時、その体をどんなに大きなダメージが襲うかは、想像に難くないだろう。
循環器を専門とし、深い知識と研鑽に研鑽を重ねた技術を持って日々の治療に取り組む森拓也先生は、2015年5月に東大阪市に開設された近畿動物医療研修センター 附属動物病院で病院長として、その辣腕を振るっている。
今回は自身の獣医師としての心がけや、実際に行う医療、二次診療の在り方まで、様々なお話を聞かせていただいた。

contents 目 次

初めに、森先生が獣医師を志したきっかけについてお話を聞かせて下さい

現在は獣医師として動物と関わる立場に身を置いていますが、子どもの頃はそのようには全く考えていませんでした。気持ちが変化したのは高校生時代に、生物の授業を担当していた先生が獣医師だったことがきっかけです。

私が通っていた高校は進学校でしたので、受験にはあまり関係のない生物は選択科目という位置付けでした。当然のように生物を選択する生徒は少なかったのですが、それを逆手にとって、その先生はフィールドワークと称して様々な場所に私たちを連れ出してくれました。また、と畜場からブタの内蔵を買ってきて解剖させてもらったり、生き物や命と向き合うことも教えていただきました。とても貴重な経験をさせていただいたと今でも感謝しています。そのような先生との出会いによって動物や医学への興味や関心が高まり、動物に関わる仕事をしたいと考えるようになりました。

獣医師になってやりがいを感じるのはどのような時でしょうか

当院は二次診療専門の動物病院ということもあり、一次診療では対応できない症状の動物が紹介されてくることがほとんどです。当院に動物を連れてくる飼い主さまの中には半ば諦めた表情で来院される方もおられますが、治療によって動物が回復していくにつれて飼い主さまの表情が明るくなっていく様子を見られた時にはとてもやりがいと充実感を感じます。

また私は心臓外科を専門にしていますが、内科で対応できる限界まで症状が進行してしまった動物を外科手術によって治療できた時などは、心臓外科の獣医師で良かったと思います。これからも飼い主さまの笑顔と動物の健康のために、日々一生懸命に治療を実施していきたいと思っています。

森先生が、獣医師として一番大切にしているのはどんなことでしょうか

それは「常に本気で全力で治療する」ことです。

一刻を争う症状や重篤な症状の動物たちと真摯に向き合いながら、治療を進めていくことを常に心がけています。基本的に二次診療の動物病院は高度診療や手術を担当する病院ですので、必要な治療が終わった動物は一次診療の動物病院に帰っていきます。

つまり治療を担当した動物が元気になった様子をほとんど見ることができないという一面はありますが、それだけに当院に来院した動物たちとは一期一会の精神で真摯に対応したいと思っています。

また、懸命な治療にも関わらず力及ばず亡くなってしまった子たちを決して忘れないということも心がけています。手術の合併症が重篤化し亡くなってしまった子は当然ながら、状態が悪過ぎて手術までもたなかった子や内科治療の末に亡くなった子、全ての子たちを鮮明に覚えています。これは私の師匠からの教えでもあるのですが、同様の症状の子と次出会った時はどうやったら救ってあげられるのかを常に考えています。医療というものに対してのそのような姿勢も大切にしています。

森先生は循環器科の分野を専門とされているそうですが、その分野に興味を持ったきっかけを教えてください

大学時代の卒業論文の最初のテーマが、心臓に関するものだったことが一つのきっかけですね。それで心臓の機能美とも言える構造の美しさや血行動態の奥深さにどんどん魅了されて行きました。

私が獣医師として勤務し始めた頃は動物における心臓外科は一般的でなく、若い頃は循環器内科に特に力を入れて勉強していました。しかしながら小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症は内科管理ではいつか必ず限界を迎えます。肺に水が溜まってしまって苦しむ子たちをなんとかできないものかと模索する中で動物での心臓外科の存在を知り、動物での心臓外科の第一人者である茶屋ヶ坂動物病院 金本 勇先生の下に弟子入りをしました。

当院には心臓に関する病気で来院する動物もたくさんいますが、苦しみを少しでも軽減してあげることができるように、日々真摯に治療にあたっています。

こちらの病院での循環器診療は具体的にはどのように行われていますか

当院では心臓エコー図検査を中心として、血液検査やX線検査、心電図検査など様々な検査を通じて、循環器疾患の確定診断や適切な治療計画を策定しています。また、当院では検査だけではなく、循環器疾患に対する内科治療・外科的治療も実施しています。

特に犬の死因として上位に挙げられている僧帽弁閉鎖不全症に関しては、一般的には内科的治療が行われるのですが、当院では手術による僧帽弁形成術を実施し、その他にも動脈管結紮術や心膜切除などの開胸術、カテーテルによる治療やペースメーカー設置など様々な外科的治療を行っています。

循環器に関する病気について、飼い主さまが日々心がけておくことはありますか

そうですね…。具体的な症状でいいますと、「疲れやすくなった」「咳が多くなる」「呼吸がおかしい」という場合はすぐに動物病院で受診することをお勧めします。

ただ基本的な考え方としては、具体的な症状が出ていなくても、かかりつけの獣医師による健康診断を定期的に受けることが大切です。健康診断が大げさだと考える飼い主さまは、ワクチン接種やフィラリア治療を受けた時にでも心臓の音を聞いてもらうと良いと思います。循環器に関する病気は外部から見てもわからないことがほとんどですので、こまめに心臓の音を聞いてもらうことはとても大切なのです。

日進月歩の進化を続ける獣医療ですが、時代の変化に対応する取り組みなどは行っておられますか

時代や獣医療がどれだけ変化したとしても、当院に来院したペットの治療に関する責任は私にあることは変わることのない事実だと思います。

当院では動物たちに安心できる治療を提供するために、私自身が最新の獣医療に関する最新知識を持っていなければいけないと常に心がけています。当院のような二次診療を担当する動物病院の獣医師が、「この症状は手に負えない」と言ってしまうとそこで終わりになってしまいます。そのことを常に意識し、日々知識をブラッシュアップし自分の限界が獣医学の限界であるよう努めています。また現在の獣医学では対応できない疾患への治療方法を模索すべく獣医療の知識だけではなく、人に対する医療知識も吸収するために現在は医学部の大学院に席を置いて研究に励んでいます。

今後の獣医療について、森先生のお考えやお気持ちをお聞かせください

これは私の個人的な考えですが、日本の獣医療にも専門医制度を採用する必要性が出てくるのではないかと思います。現状の獣医師は様々な病気に対応するために幅広い医療知識をもつことが必要とされますが、獣医師の診療範囲は「人以外の全ての動物」であり、動物種毎にあらゆる疾患に精通しきることは実質不可能です。一方で飼い主さまの治療に対する意識は年々向上しており、時代のニーズとして今後は特定の分野に関して狭く深い医療知識をもつ獣医師が必要になると思います。

そしてそのような時には専門医制度が、それぞれの獣医師としての質をある程度は担保してくれるようになるのではないかと思います。現在の日本では専門医制度はまだ十分に確立されておりませんが、欧米の制度を参考に確立しようという動きも見られており、今後変わってくるかも知れません。

また、今後の動物病院に関してお話ししますと、日本はアメリカに比べて一次診療を担当する獣医師のスキルが高く、それ故診療範囲が広く負担が大きい傾向があると聞きます。獣医療の中心であり基本は一次診療であると私は考えておりますので、日々の健康チェックや総合的な治療は一次病院でしっかりと行ってもらい、高額な検査機器が必要な検査や特殊な技術が必要な手術、専門的な知識が必要な治療は二次で、と使い分けていただくのが理想だと考えております。

今後は一次診療を担当する先生方の負担を少しでも軽減し、飼い主さまにとって本当に満足できる治療ができるように、一次診療と二次診療がより密接に連携していかなければならないと思います。そのために当院でも、地域の一次診療を担当する獣医師の先生方との繋がりをもっと大切にしていきたいと考えています。

最後に、このページをご覧になる飼い主さまにメッセージをお願いします

当院では二次診療の動物病院として、専門性の高い検査や検査機器、画像診断技術などを積極的に活用して、一次診療を担当する動物病院をサポートしていきたいと考えています。二次診療は決して一次診療と相対するものではなく、一次診療と協力して一緒に動物の病気を治していく存在です。

加えて、私の専門である心臓外科のことをお話ししておきますと、従来の内科治療では治らなかった心臓病が、獣医学の進歩によって最近では治せるようになっているものもあります。獣医療における心臓外科はまだまだ発展途上ではあるものの、治療成績はどんどん向上しています。決して諦めることなく、当院を受診していただくようにお願いしたいと思います。