Veterinarian's interview

インタビュー

口腔内の問題は、身体の様々な異常の入り口になりかねない非常に重要な問題です 口腔内の問題は、身体の様々な異常の入り口になりかねない非常に重要な問題です

口腔内の問題は、身体の様々な異常の入り口になりかねない非常に重要な問題です

とよだ動物病院

豊田 大介院長

京都府 京都市

とよだ動物病院

豊田 大介院長

1991年3月より京都府京都市左京区に開院して以来、歯科分野の疾患を抱えた多くの動物達の悩みを解決してきたとよだ動物病院。この病院を率いる豊田大介院長は、国内の獣医歯科治療の黎明期からその重要性を啓蒙し、全身の様々な疾患へと繋がりかねない口腔内疾患の治療を行ってきた。
今回は豊田先生のこれまでのご経験、歯科治療の今と昔、自身が考える獣医療の在り方についてお話を伺った。

contents 目 次

豊田先生は特に歯科治療に注力されていると伺っています。数多ある分野から歯科治療に注力するようになったのはどのような経緯がありましたか?

一昔前までは大学での歯科の講義が殆ど無く、獣医師になったとしても歯科に関しては臨床の現場に出て自分で学ぶしかありませんでした。そういった状況の中、勤務医時代に勤めていた病院に飼い主さまとして来院された人間の歯科医の先生と知り合ったことが、私にとっての大きな転機となったのです。

その先生を通じて勉強会や講義などに参加させていただき、その内容に感銘を受けて、獣医療の分野においても、歯科の治療を実践していかなければいけないと感じたことが歯科治療に注力するようになったきっかけです。

口腔内の問題は、ただ単に歯のみを対象としたものではなく、身体の様々な異常の入り口になりかねない非常に重要な問題です。決して数は多くありませんが、最近では授業の中で歯科の分野も扱っている大学があると知り、歯科に対しての関心が高まってきたことを嬉しく感じています。

実際に臨床の現場で目にする疾患は、どういった症状が多いのでしょうか?

歯科の分野においては、特に乳歯の晩期残存や、歯周病、歯肉口内炎などを診察する機会が多いように感じています。程度の違いはあれど、3歳以上の犬の約8割が歯周病もしくは歯肉炎を持っていると言われていて、最近では1歳でも口腔内に何らかの問題が発生している場合があると言われています。

近年で急に歯の疾患が増えたのではなく、飼い主の皆さまの歯科に対する意識が向上したこともあり、今まで見過ごされていたものが認識されるようになった結果であると考えられています。また、小型犬でも大型犬でも歯の本数は一緒ですので、歯が密集している小型犬の方が歯のトラブルは多いかと思います。

歯科というとワンちゃんが主な対象だと思っている方もおられるかもしれませんが、猫ちゃんに多くみられる症状もあり、特にFORLと呼ばれる病気は悪化することでご飯が食べられなくなってしまうこともある恐ろしい病気です。

歯周病は人間にもある病気ですが、動物のそれと性質に違いはあるのでしょうか?

人間と比べても症状自体はそれほど変わりません。しかし、動物たちは自分で病院に来ることができないため、飼い主さまが目視で認識できるレベルまで症状が進行した状態で病院に来るケースが多いように感じています。

歯肉以外の組織にも炎症が及び、歯周組織が破壊されている。歯周ポケットが形成され歯肉が腫れたり、膿が出たりして強い痛みを感じている。この状態まで症状が進行すると、元の状態に戻すことは困難になってしまいます。抜歯を避けられない状態になる前に、相談していただければと思います。

歯周病を防ぐには、具体的にどのような方法がありますか?

他の多くの病気と同じように予防することがとても大切です。具体的な対応策としてはハミガキをすることが基本となりますが、キレイな歯を残してあげられるように、歯に問題が無いうちから相談に来ていただき、これからどのように予防を始めたら良いかなどを相談していただきたいと思います。歯周病以外にも、歯並びや噛み合わせの異常は乳歯のうちから矯正する必要がありますので、小さいうちから一度、見せに来て欲しいですね。

中には生まれつき歯周病になりやすい可能性がある子もいます。口元を気にするようなしぐさ、くしゃみが多いなど、ちょっとしたことから歯の異常を発見できることはありますので、ワクチン接種などを受けに来られた際に、歯の検診も一緒に受けていただければと思います。

豊田先生が獣医師を志したきっかけを教えてください

私は生まれた時からずっと犬が傍にいる生活でした。両親が共働きだったこともあり、一緒に暮らしていた犬に子守りをしてもらっていたくらいです。動物達に対して恩返しというか、彼らが健やかに暮らしてくれる手助けをしたいと思ったことがきっかけです。

犬種や症例に関わらず、診療の際に心がけていることはどんなことですか?

検査・治療は場合によっては痛みを伴い、動物たちに少なからずストレスを与えてしまいます。当院ではそのストレスを可能な限り軽減し、誰よりも、どこよりも、痛みの無いよう対応するよう心がけています。それと同時に麻酔を使用する際の安全性の確保については細心の注意を払って行っています。

最後に、口腔内ケアに悩む飼い主さまへメッセージをお願いいたします

私は、病院で行う歯科治療は始まりに過ぎないと考えています。本当に重要なのはご自宅で行う日々のデンタルケアであり、それができるかどうかで治療の成果は大きく変わってきます。当院では、歯科治療後は定期的な検診を行い、デンタルチェックを実施しています。

最近ではデンタルケアには歯磨き以外にも様々な方法はありますが、やはりハミガキに勝るケアはありません。その子その子に合ったご家庭での上手なハミガキの方法などもご説明しますので、気軽にご相談ください。

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