Veterinarian's interview

インタビュー

コミュニケーションを重視し、飼い主さまの意思を尊重した診療に努めています コミュニケーションを重視し、飼い主さまの意思を尊重した診療に努めています

コミュニケーションを重視し、飼い主さまの意思を尊重した診療に努めています

工藤動物病院

工藤 圭介先生

工藤動物病院

工藤 圭介先生

一般診療を中心に、眼科、皮膚科、耳科、消化器内科、内視鏡診断などの専門的な獣医療を幅広く提供している東京都中野区の工藤動物病院。飼い主さまのご要望に沿った診療をモットーとしているこちらの病院には、より詳しい検査を求めてセカンドオピニオンに訪れる飼い主さまも多い。今回は、皮膚科の認定医でもある工藤圭介先生に、自身の動物医療への思いを語っていただいた。

contents 目 次

治療の際に心がけていることはどんなことですか?

とにかく、飼い主さまの話を聞くことですね。飼い主さまが何を求めているのかをしっかりとヒアリングすることが、全ての治療の原点となります。また、飼い主さまからの情報を元に獣医師が治療方法を決めるのではなく、飼い主さまのご要望に沿った治療方法を複数ご提案し、その中から飼い主さまが選択できるよう心がけています。

選択肢が多いことで、より飼い主さまのご希望に沿うことができますし、治療に対する意識もより強くなります。それが今の時代に合った診療スタイルだと思います。

勿論中には、治療中に迷いが出てしまう方もいらっしゃいます。そういった場合には、最初に決めた治療方針を猪突猛進で進めるのではなく、現在の状態を正確にお伝えして、気持ちを切り替えて差し上げることが重要ですね。一本のレールを走り続けるのではなく、途中で止まっては振り返り、話しかけて、飼い主さまに寄り添いながら治療を進めていくことが大切だと考えています。

工藤先生が認定医として診察を行っている皮膚科に関してお話を聞かせて下さい

皮膚疾患の治療に関しては、飼い主さまがどこまでの治療を望んでいるのかを把握することから始めます。例えば、被毛が抜けてしまってツルツルの状態でも、動物が病気に悩むことなく生活を送れることができれば良いのか、美観まで含めて治療して欲しいのか、飼い主さまごとにご要望は様々ですよね。このように、皮膚疾患は痒いとか痛いとかの症状だけではなく、見た目にも関わる病気なので、飼い主さまがどこまで求めているかということをゴールに、そこから逆算して治療していくという流れが大事だと考えています。

また、飼い主さまがどれだけ多く病院に通えるかということも重要なポイントです。飼い主さまもお仕事の時間帯や経済面など、様々な事情があると思いますので、そのようなことも考慮して、どういう手を打っていくかを考えることは必要ですね。

皮膚疾患の治療は単にお薬を出せば良いわけではなく、食事やご自宅でのケア、飼育環境など、生活面の改善が必要となる場合も多々あります。ときには睡眠不足が皮膚に現れることもあるんですよ。日常の中の些細なことを改善するだけで、どんどん皮膚が良くなっていくケースもありますので、原因をいち早く見つけ出すためにも、診察時には些細なことでも構いませんので、何でも話していただきたいですね。

近年では動物達が受診できる医療は高度なものに進歩していますが、高度医療について先生はどのようなお考えをお持ちでしょうか?

飼い主さまが抱える負担は大小問わず必ずありますが、ご自身の生活を崩さない範囲で受けられる治療であれば良いと思います。高度な医療を求めて、飼い主さまが自分自身の生活を蔑ろにする必要は無いのではないかと思っています。一言で高度医療といっても、治療には幅がありますから、ご自分ができる最大限の範囲で、大切にしている動物たちに愛情を捧げてあげれば良いのではないでしょうか。

とはいえ、インフォームドコンセントの一環として、獣医師はその治療の手段があることをお伝えする義務があると思います。直接自分が手を施すことはできなくても、獣医師はそのような治療があることを知っていなければならないと思っています。 私たちの専門外である腫瘍や整形外科疾患で高度医療が必要と判断した場合も、「このような治療があるんですけど費用はこの位かかりますがどうしますか?」「希望されるのであれば、その治療ができる先生に連絡することが可能です」という話はきちんとするようにしています。高度医療を受けることについては獣医師が強要することではなく、飼い主さまが望んだ時点で協力するべきものだというのが私の考えです。

治療に積極医的な飼い主さまが増加している分、セカンドオピニオンを求められるケースも増えてきているのではないでしょうか

セカンドオピニオンというのは結局、飼い主さまに不満があるというか、治療に対する心残りがあるから存在するものだと思います。その心残りが何なのかをしっかり特定して、飼い主さまに満足していただくことが大切です。

また、当院でも皮膚や眼の治療に関して意見を求めて受診される飼い主さまは多くいらっしゃいますが、必ずしも当院で完結する必要はないと思っているんです。調べていくうちに別の原因が把握医出来れば、さらに別の専門病院をご紹介する場合もあります。飼い主さまには少々大変かもしれませんが、次に繋いでいくこともセカンドオピニオンの役目だと思うんです。

逆に、一次診療の先生で治療できると思ったら「ホームドクターにもう一度相談してみたらどうですか」とアドバイスすることも役目の一つだと思います。病気の動物たちや飼い主さまに最適な治療方法を見つけてあげることがセカンドオピニオンなんです。

獣医師を志したきっかけはどんなことでしたか?

父親が獣医師だったこともあり、私が産まれた時からずっと家庭には犬がいる環境でした。それこそ家族のように常に犬がいる生活でしたので、動物には全く抵抗がなく育ったんです。高校生くらいになると現実的な進路として手に職をつけたいと考えるようになり、そこで、父親と同じ獣医師を目指そうと考えたのです。

今後の目標についてお聞かせください

今後はさらに飼い主さまのニーズに応えられる病院にしていきたいと考えています。

私は皮膚の認定医で、父は眼科の専門医ですが、皮膚や眼だけではなく、他の分野の専門的な診療ができる獣医師を仲間に加えたいですね。勿論それには設備を揃えることも必要ですので、5~10年のスパンで考えながら準備を進めて、少しずつできることを増やしていきたいと思います。