Veterinarian's interview

インタビュー

常に全力投球、責任を持って治療に取り組む 常に全力投球、責任を持って治療に取り組む

常に全力投球、責任を持って治療に取り組む

ありす動物眼科クリニック

小林 由佳子院長

ありす動物眼科クリニック

小林 由佳子院長

動物のどんなところが好きかと聞かれた際に、その答えとしてキラキラと輝く瞳を挙げる方は少なくないだろう。2006年川崎市でありす動物クリニックとして開業し、2017年9月から横浜市青葉区に移り、新たに獣医眼科専門診療をスタートしたありす動物眼科クリニック、眼科分野に関して専門性を極めたこの病院で院長を務める小林由佳子先生もその一人である。
自身の医院は元より、日本やアジアの獣医眼科医療の未来を視野に入れ多方面で活躍する小林先生。その見つめる先にあるものとは。

contents 目 次

まず初めに、小林先生が獣医師を志したきっかけについてお話を聞かせてください

獣医師という職業を意識し始めたのは高校生の頃でしょうか。私が通っていたのはクラス替えのない高校だったのですが、その頃良くしていただいていた担任の先生が生物の授業を担当していたことが、生き物への関心を持つきっかけになったと思います。

とは言えそれ以前から、父が日本野鳥の会で調査や写真撮影目的に行っていたフィールドワークには子供の頃からついて行っていたこともあり、幼い頃から動物関連の仕事に就きたいという気持ちはありました。

数ある医療分野の中から、眼科を専門にした理由について教えてください

大学時代、上野動物園で実習し、故・増井光子先生と一緒に仕事をさせていただいたことから、大学卒業後には東京都の動物園で働くことを目標として東京都の獣医師になりました。その後、個人の動物病院での診察等を行っていましたが、目の疾患を抱えた動物に多く出会ったこともあり、自分の獣医療の特徴となる専門分野が必要だと感じるようになりました。

仰るように獣医療の中には様々な分野が存在しますが、動物の目を見たときに感じる不思議な魅力に惹かれるものがあり、同じ専門医療でも他の分野は考えませんでした(笑)。

初めに川崎市の鷺沼で開業した病院では全科で診察を行いながら専門医療に必要な設備を少しずつ導入していき、並行して比較眼科の専門医、アジア獣医眼科学会と二つの専門医認定を取りました。そして今回、2017年に動物眼科専門の病院である、ありす動物眼科クリニックをスタートさせていただきました。

海外の大学での研修経験があると伺っています留学中のご経験についてお話を聞かせてください

獣医療そのものに対する見識は勿論、良い人間関係を作ることができた時間でした。私がイギリスで一緒に学んでいた先生とは、その方がソウル大学の教授になった現在でも親交を深めています。今後進めていきたいアイチェックなどの活動についても理解を示していただいているおかげで、活動の広がりが生まれていると思います。

当時の恩師が今でもヨーロッパの獣医眼科学会で学会長となるなど、同じ眼科医療の分野で活躍している便りを耳にすることは良い刺激になり、自分もさらに研鑽を積んでいこうという気にもなります。そう考えると良い人間関係を作れたことは大きかったですね。

現在の獣医療において、日本と海外の専門医療に違いなどを感じるときはありますか?

臨床の現場に目を向けてみると、海外と日本の専門医診療の違いはあまり無いように思います。

例えば眼科診療に関しては、日本の眼科専門医がイギリスやアメリカで治療を任された場合に、その国の専門医と比較しても劣ることのない治療ができると考えています。今や日本の専門医はそのようなレベルにあると思いますし、どの先生も日頃の研鑽を欠かしてはいないと思います。同じ症例を目の前にして、正しい診断と治療をして病気を治すというステップにおいて、同じシチュエーションであれば海外の先生と日本の先生で違いがあるとは感じません。

小林先生が日々の診療の中で心がけていることはどんなことでしょうか。

基本的に症例ごとに病気は違いますので、常に各症例に真っ直ぐ向かい合い、常に全力投球で治療に立ち向かうようにしています。また、診断のつかない目の疾患はないと自負して診療を行うようにしています。

病気になった動物も、そのご家族も、満足していただけるところまでお手伝いをするように心がけています。多くの場合一つの疾患に対する治療は様々な方法があり、飼い主さまが何を望んでいるのか、お話をよく伺いながら治療を進めています。自分が責任を持って診察すると決めた動物に対しては、できる限りのことをしたいですね。

このページをご覧になる飼い主さまにお伝えしたいことはありますか?

動物におかしな様子があったら早くに動物病院へ連れて行くということにつきますね。片目だけ眩しそうにしている、片目だけ涙の量が多い、目やにが異常に多い…そのように、何か心配事があれば早めに動物病院での検査を受けてみてください。目の病気は早めに治療を開始することが何より重要な対処方法となります。

また、治療中はお家での過ごし方について幾らか獣医師の指導があると思います。病気の種類により内容は様々ですが、エリザベスカラーや投薬など動物達には少し我慢してもらい、指導の内容はしっかり守っていただきたいですね。

盲導犬協会でも腕を振るわれていると存じますが、やはり行っているのは眼科医療でしょうか?

盲導犬協会では2003年からアイチェックとそれに基づいた繁殖アドバイスを行っています。これは遺伝性の病気を持った犬を親犬にしないという助言で、遺伝性の病気に関する理解が足りないために、病気を持つ犬で繁殖を行い、若年性の白内障等で視覚異常を持った犬が発症する可能性を減らすことを目的としています。

残念ながら現在の日本ではこういった事業への理解・認識が行き届いていないのが現状です。現在は基本的に盲導犬のみを対象としていますが、一般の家庭犬にも対象を広げていけるようJKC(ジャパンケンネルクラブ)の部会で勉強会を実施する等の活動を行っています。

最後に、小林先生の今後の目標を聞かせてください

まずは自分の病院を持つという目標を達成しました。次に目標としているのはアイチェックという事業をスタートすることです。

日本をはじめとしたアジア圏も、アメリカやヨーロッパと同じように眼科専門医による統一した眼科検診をできるようにしたいと考えています。最終的にはブリーダーの方たちに、先程お話ししたような遺伝性の病気について理解を深めて貰い、視覚を失ってしまうような遺伝的な眼の病気のない犬を増やしていくためのシステムを構築したいですね。そこまで進めることはまだ時間がかかると思いますが、その第一歩としてまずはアイチェックをスタートさせることを目指して活動していきます。