Veterinarian's interview

インタビュー

聖ルカのように誰からも愛され尊敬される医師でありたい 聖ルカのように誰からも愛され尊敬される医師でありたい

聖ルカのように誰からも愛され尊敬される医師でありたい

ルカ動物医療センター

江原 郁也院長

ルカ動物医療センター

江原 郁也院長

大阪モノレール少路駅から徒歩7分ほどの場所にある『ルカ動物医療センター』は、動物たちの心と身体に優しい医療を提供するため、常に先進的な動物医療を学び、各分野のスペシャリストたちと連携を組みながら最善の医療を提供している動物病院だ。江原先生の幼少期から現在に至るまでの道のり、そして人の医療では広く行われている内視鏡手術をなぜ動物医療にも取り入れたのか、その理由についてお話しを伺った。

contents 目 次

江原先生の幼少期時代から獣医師を目指したきっかけまで教えてください

私は穏やかな瀬戸内海と温厚な気候、そして自然に囲まれた姫路市で育ちました。家にはたくさんの動物たちがいて、友だちと遊ぶといえば虫を捕まえたり、かけっこしたり、山に基地を作ったりする日々でした。そのなかで生き物に興味を持ち始めたのは、小学生の頃でした。

大きなお菓子の空き缶にたくさん穴を開けてから青虫の付いたキャベツの葉を入れ、毎日霧吹きをしながら観察をしていました。そのなかで青虫が次第にサナギになり、やがてキレイな蝶に成長する姿を目にしたときは、子どもながら生命の神秘を感じましたね。それから生き物の生態に興味を持ち始め、それから様々な動物たちと触れ合う日々を通じ、いつしか「大きくなったら動物たちに優しいお医者さんになりたい」という思いが強くなり、獣医師を目指しました。

獣医師を目指していた大学時代の思い出を教えてください

ずっと北海道の大自然に憧れていたので、大学は北海道江別市の大学を選びました。大学時代はたくさんの友人に恵まれ、クラブ活動に打ち込み、楽しいキャンパスライフでした。また、クリスチャンになったきっかけも北海道でした。北海道の大学を選んだことで様々な経験ができたこと、また親友と呼べる友人にも出会えたことは私の財産の一部だなと思っています。

大学卒業後、ルカ動物医療センターを開業するまでの経緯を教えてください

もともと獣医師を目指そうと思っていたときから「小動物専門の動物病院を持ちたい」と決めていました。そのため開業するまではたくさんの知識と経験を積みたいと考え、4年間大阪にある動物病院で勤務医として勤めていました。何歳になっても一人前になりたいと願いがむしゃらに頑張り続けてきましたね。

その後、豊中市内に当院を開業するのですが、この地に開業した理由は「ロマンチック街道」の風景に一目ぼれしてしまったことですかね。もともと緑に囲まれた場所に住みたいと思っていたのですが、このロマンチック街道は路上にたくさんの綺麗な花が植えられ、オシャレなお店が多く立ち並んでいるので、「開業するならここだ!」と思ったのがきっかけですね。

それから20年以上、この地で動物医療を続けていられるのは、地域の皆さまからのお力添えをいただいているおかげだなと思っています。

ルカ動物医療センターの名前にある「ルカ」はどのような由来があるのですか

「ルカ」は、聖書の中で登場する医者の名前です。ルカは、新約聖書の『ルカによる福音書』や『使徒行伝』の著者とされる人物でもあります。彼の記述した内容は感謝と喜びに満ち溢れ、また人々から大変愛され尊敬されていた医者でした。私はそんなルカの生涯を尊敬すると共に、クリスチャンとしてまた一人の獣医師としてルカのような医者になりたいという思いから『ルカ動物医療センター』と名づけました。

皆さまに愛され、そして尊敬される動物病院となれるようスタッフにもこの思いを日々伝えていますし、動物たちに優しい医療を行っていけたらと考えています。

江原先生の専門分野を教えてください

当院を開業した当初は内科・外科問わず行っていましたが、2003年頃から内視鏡を用いた外科手術を本格的に始めました。それまでは「地域ナンバー1」になることを目標にしていましたが、ある目標が実を結んだとき次に目指すことを見失ってしまい、燃え尽きてしまいました。あの頃は健康を害してしまって、獣医師として、また一社会人としても失格だったように思います。

そんな日々を送っているとき、自分と向き合い、何のために獣医師になったのかを自分に問いかけるようになりました。そして自分にしか出来ない専門分野を持って人の役にたつことができたらと思い、自分がこの先打ち込んでいける専門医療を探しました。そして海外の先生が来日され講演された「内視鏡手術」に深く興味を持ち取り組もうと思いました。

内視鏡手術に心惹かれた理由は何だったのですか?

内視鏡手術による術例からメリットについて伺ったとき、私の中で衝撃が走りました。本来なら大きく切開しなければならなかった手術が、ほんの数ミリの小さな傷で手術ができるようになり、手術の負担が少なく、術後の回復が早いこと、そして何よりも内視鏡を用いることで拡大された鮮明な視野の中で細やかな手術を行うことができるからです。私はそれを知ったとき、素直に「すごい!」と感じてしまいましたね。

当時は内視鏡手術というのは画期的な手術法だったのですか?

今から10年以上前は、人の医療界でも内視鏡の地位は確立されたとは言い難い状況でした。そのため人間の医療界でさえ地位が確立していない訳ですから、動物の医療界では教科書もなく、学ぶ場所なんて全くありませんでした。それでも私はどうしても動物の医療にも内視鏡手術を取り入れたいと思い、自身の実績を持参して人の内視鏡手術で名声のある先生のところへ足を運びました。

その先生は私の思いに共感してくださり、快く手術を見学させてくださいました。あの時は本当に感謝でしたね。その後、医療界のトップランナーと称される先生たちとお会いする機会に巡り合い、公私ともにお付き合いさせていただく中で、医療にかける情熱が大きくなりました。

今の江原先生を構築しているのは、人間のお医者さまの存在がとても大きかったのですね

そうですね、私に内視鏡の素晴らしさを教えてくれた先生方のお陰で今があると思っています。これまでに出会ってきた先生方に共通することは、医療に対しての『情熱』が大きいということですね。10年以上前は、内視鏡手術と言えば「リスクが大きい」とデメリットばかり挙げられることが多かったのですが、先生方は「内視鏡は有能な手術方法だ」と信念を持って普及活動に取り組んでいらっしゃいました。

私はその先生方の姿を見て「技術は情熱によって裏打ちされることで、初めてその真価を発揮するもの」だと感じました。また「これは正しい」と自分が信じられるからこそ自分も取り組めること、正しいものによって人の役に立っているという喜びを感じられること、これらが本当に大切だと学びました。

この思いは次の世代に繋げていきたいと思いますし、これからも動物医療における内視鏡の役割を高めていきたいと思っています。

内視鏡手術のメリットを一言で表すとどんな言葉が挙げられますか?

『最小の傷で手術を行うことができる』でしょうか。

通常腹部を切る手術では皮膚をメスで大きく切り取り、体内を直接目で見て、手で触れながら手術を行います。これに対し内視鏡手術では体に3mm~1cm程度の小さな穴開け、カメラを入れて体内のモニターを見ながら手術を行います。傷口を最小限に抑えることができますし、出血を減らすこともできる。そして何よりも、拡大された鮮明な視野の中で、繊細な手術ができることで動物たちにかかる負担もなるべく抑えられているのではないかと思います。但し、内視鏡手術はとても高度な技術を必要とします。そのため何処の病院でも気軽に受けられる手術ではないのが飼い主さまにとってネックなのかなと思います。

江原先生は日本獣医内視鏡研究会を立ち上げていらっしゃいますが、これはどのような研究会なのでしょうか?

先ほど内視鏡手術は高度な技術が必要とお話ししたと思いますが、内視鏡手術の発展のために必要な知識や技術を多くの獣医師の方々と共有していきたいと考え、日本獣医内視鏡研究会を立ち上げました。この研究会では独自の『技術認定制度』を設けています。この制度を設けることで獣医師の技術向上はもちろんのこと、動物を飼われている飼い主さまたちが動物病院を選ぶときの線引きになるのではないかと考えています。

私は、医療というのは「どの先生に巡り合うか」によって大きく変わると思っています。「この先生に出逢えて良かった」と思っていただけるように日々努めています。

今後の目標についてお聞かせください。

これから更に成長してく若手獣医師たちを育てて行きたいと思っています。若い獣医師たちのなかには「情熱はあるがそれをどうやって形にすれば良いかわからない」と、もがいている人たちがたくさんいます。私は、その人たちに適切なアドバイスをしていきたいし、夢を実現するための手助けをしてあげたいと思っています。

ルカ動物医療センターは私だけの病院ではなく『みんなのもの』だと思っています。ここを若手獣医師たちの活躍の場として自分の可能性をどんどん広げてもらいたいですね。

最後にEPARKペットライフをご覧の飼い主さまへメッセージをお願いします。

獣医療は目覚ましい進歩を遂げています。そのなかで当院は一般診診療はもちろんのこと、専門的な診療にも力を入れています。そのなかの一つとして挙げるのが「内視鏡手術」です。全ての診療に内視鏡手術を採用しているのではなく、あくまでも選択肢の一つとして飼い主の皆さまにご提案させていただいています。飼い主さまと動物たちがどうすれば一番幸せなのかを一緒に考え、納得のいく最善の治療をご提案させていただければと思っています。

当院は高度動物医療を始め、基本的なしつけや老齢動物介護の相談、セカンドオピニオンを含めて幅広く提供していますので、どんなことでも気兼ねなくご相談していただければと思います。