contents 目 次
- 獣医師になったきっかけ
- きのくに動物病院の名前の由来
- 椎間板ヘルニアについて
- 椎間板ヘルニアになってしまう原因
- 猫が椎間板ヘルニアを発症するリスク
- 椎間板ヘルニアの治療法
- レーザーを用いた治療について
- 外科療法におけるCT検査の内容
- 椎間板ヘルニアにならないようにするための予防法
- オゾン療法の治療内容と施術対象となる病気について
- 人工透析の治療内容と犬・猫への処置について
- 腎不全の患者(動物)が人工透析を定期に受ける必要性について
- 動物病院に来院される前に飼い主さまにしてもらいたいこと
- 飼い主さまへのメッセージ
獣医師になったきっかけを教えてください
子どもの頃から医療の分野に興味があり、大人になったら医療関係の仕事に就きたいと漠然と考えていました。 その中でなぜ獣医療の道を選んだのかというと、実家で飼っていた愛犬がきっかけでしたね。
愛犬を通じて色々な動物たちと触れ合う機会が多かったことから、小学校の高学年の時は自然と獣医師の仕事に興味を持つようになっていました。 それからは他の職業に目移りすることなく、夢への実現に向けて獣医師の道を歩み始めました。
きのくに動物病院の名前の由来について教えてください
当院がある和歌山県は雨が多く森林が生い茂っていることから、木の神様が棲む国として「木の国」と命名された説があります。 また、古代豪族であった紀氏が支配していた地域であったことから「紀伊国」と呼ばれるようになったそうです。紀伊国は古事記に記載されるほど歴史が長く、古くから根づいてきました。 私はそんな紀伊国のように、地域に根付いた動物病院を創りたいという決意と思いを込めて「きのくに動物病院」と名づけました。
近年、椎間板ヘルニアを発症している犬が多いそうですが、そもそも椎間板ヘルニアとはどのような病気なのでしょうか。
人の場合は、頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、仙椎5個、尾椎4個の計33個あるに対して、犬と猫の場合は頚椎に7個、胸椎に13個、腰椎に7個の計27個あります。
これらの背骨同士がぶつからないようにクッションの役割をしているのが「椎間板」と言われる円板状の軟骨です。 これが擦れたり、飛び出したりして背骨の中にある太い神経を潰してしまうと、痛みや麻痺を起こすなど様々な問題が起こります。 症状としては足に力が入らなくなるのですが、酷い場合は立ち上がることができず、排尿や排便も自力でできなくなってしまうことがあります。
なぜ椎間板ヘルニアになってしまうのでしょうか
原因としては二つ考えられます。
一つは遺伝的なものです。軟骨異栄養症という遺伝子を持っているダックスフンドやビーグル、コーギーなど、胴長の犬種に多いとされています。 本来ゼリー状の髄核が生まれつき固く、線維輪を圧迫するため線維輪に亀裂が入り、髄核が線維輪から逸脱して脊髄を圧迫することから、椎間板ヘルニアになりやすいと言われています。
もう一つは加齢によるものです。加齢に伴い椎間板が変性して亀裂が入り、そこから髄核が入り込むことで線維輪が押し上げられて脊髄を押してしまうことで椎間板ヘルニアを引き起こすことになります。これらのことをハンセン1型とハンセン2型と分けられ、ハンセン1型は「遺伝」、ハンセン2型は「加齢」と分けられています。
猫も椎間板ヘルニアになってしまうことはあるのでしょうか
そうですね、最近猫も椎間板ヘルニアを発症しているケースが多く見受けられます。 猫の場合も犬と同じで、遺伝や加齢によって発症しやすいです。 また、肥満が原因で椎間板に圧力がかかり椎間板が変形してしまったり、壁に激突や交通事故、高所からの落下など瞬間的に強い圧力が加わる外傷によるものだったりします。
あと、これは犬や猫どちらにも言えるのですが、フローリングによる室内の事故も原因の一つとして挙げられます。 近年、畳の家よりも圧倒的にフローリングの家が多いと思うのですが、滑りやすいフローリングで体を支えることが難しく、通常より圧力がかかりやすくなることから椎間板ヘルニアを発症してしまうケースがあります。 フローリングは犬猫にとって体に負担をかけるので、絨毯を引いたりフローリング上では遊ぶことを止めたりするなど、気をつけてもらいたいですね。
椎間板ヘルニアの治療はどのように行われるのでしょうか
大きく分けて内科療法と外科療法の二つに分けられます。
内科療法では、脱出した椎間板が安定する4~6週間は安静にしてもらい、NSAIDS(非ステロイド系消炎鎮痛剤)またはステロイドなどの薬を投薬したり、レーザーを用いたりすることがあります。 主に加齢や比較的症状が軽い場合に行われることが多いです。
外科療法では、歩行不能など重症化している場合において行われます。原因となっている椎間板の場所を特定するために、脊髄造影やCT、MRIなどで検査を行った上で手術をします。
内科療法で述べていらっしゃったレーザーを用いた治療とはどのような治療法でしょうか
皮膚切開や椎間板の摘出を行わない治療法として「経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)」があります。 皮膚の外側から病変部の椎間板中央部にある髄核に細い針を挿し込み、その針穴にレーザーファイバーを通して照射し、熱によって髄核の一部を焼いて炭化させたり、蒸発させたりします。
体へのダメージは最小で済むことが可能なので、主にハンセン2型で利用することが多い施術法です。
外科療法ではCTを用いるそうですが、どのような検査をするのですか
当院ではより正確に場所の特定をするためにCTで検査を行います。 CTは撮影時間も短時間で済み、麻酔をかける時間も短いのでペットたちへの負担もなるべく抑えることができます。 また、脊髄神経が圧迫している場所を特定することができるので、適格に手術を行うことが可能になってきます。
手術では、その部位の圧迫を開放するベントラルスロット、片側椎弓切除術、背側椎弓切除術などの術式を行っています。 詳しい内容は当院までご相談いただければと思います。
椎間板ヘルニアにならないようにするための予防法などはありますか
椎間板ヘルニアを患った場合、必ずリハビリを行う必要があります。 その際必要となってくるのが「筋肉」です。 そのため、子犬や子猫の時からバランスの良い食生活、そして適度な運動をしていくことがとても大切ですね。 肥満になると関節を痛める原因にもなりますので、標準体型を維持することを心がけていただきたいですね。
また、あまり無理な姿勢をとらせないことも大切です。例えば二本足で立たせるとか、抱っこをする時、両脇の下に手を入れて立たせる縦抱きをしてみたり、仰向けの状態にしてみたりするのは背中に負担がかかりますので、気をつけていただきたいですね。
きのくに動物病院では、治療法の一つとしてオゾン療法行われているとのことですが、そもそもオゾン療法とはどのような治療法なのでしょうか。また、どのような病気に取り入れているのでしょうか。
オゾン療法では、犬や猫の肛門からオゾンガスを注入する治療法です。 体への負担が少なく、比較的安価で様々な病気に対応できる療法の一つとされています。 またリスクも極めて少ないと言われているため、体力の衰えてきたシニアの健康維持にもおすすめです。
オゾン療法で主に適用される病気としては、ガンやアレルギー性皮膚炎、椎間板ヘルニアなど様々な治療に有効と言われています。 当院ではオゾン療法を補助的な治療として考えているため、既に治療を行っているとしても、オゾン療法を受診していただくことは可能です。 慢性的な病気や食欲不振、投薬での治療ではうまくいかないなどありましたら一度ご相談いただきたいと思いますね。
人間の治療では、低下した腎臓の機能を人工的に補う「人工透析」という治療法がありますが、そもそも人工透析とは一体どんな治療法なのでしょうか。また、犬や猫にも治療は可能なのでしょうか
老廃物処理や水分調整などを担当している腎臓はそもそも再生能力のない臓器なので、一度でも機能が低下してしまうとその機能を取り戻すことは難しく、残った腎臓の機能で体を維持できなければ人工的にその機能を補わなくてはいけません。
人工透析では、血液透析と腹膜透析二つの透析治療があります。 血液透析とは、血液を一度体外に出し、その血液から人工腎臓であるダイアライザーを使用して体内の老廃物を取り除き、体内に戻すという治療法であり、腹膜透析は腹部に透析液を入れて腹膜を介して血液中老廃物を透析液に引き込み、その透析液を体外に排出することで老廃物を除去する治療法のことをいいます。これらは人間の治療法では非常に一般的な治療法の一つであります。しかし、まだまだ透析できる病院は少ないのが現状です。当院では、そのなかの一つ「血液透析」の治療を行っています。
完治することは難しいが、補うことができるのが人工透析なのですね。腎不全を患っている場合は、定期的に実施する必要はあるのでしょうか
当院では腎不全を発症した犬や猫を対象として血液透析を実施していますが、定期的な血液透析に関しては、体力面やコスト面を考えて気軽にお勧めできない場合がほとんどですね。 そのため、腎機能の状態が著しく悪化してきた時のみ血液透析を実施することをお勧めしています。
言葉を話せないペットたちのためにも、飼い主さまが病気やケガについて詳細に話す必要性があると思いますが、動物病院に来院される前に飼い主さまにしてもらいたいことはありますか
病気やケガの症状によってケースバイケースだと思いますが、食欲や排泄物の状態、普段の行動などをしっかりチェックしてもらいたいと思います。 もし可能であれば、スマートフォンなどを用いて自宅での様子を動画で撮影してもらうとよりわかりやすいかと思います。 自宅での様子を確認することによって、余分な検査を減らすことができますし、飼い主さまの経済的負担も軽減できるのではないかと思います。
また、明らかに普段より調子が悪いのに「1日様子を見てからにしよう」と自己判断をせず、直ぐに動物病院へ足を運んでいただきたいですね。
EPARKペットライフをご覧になっている飼い主さまへメッセージをお願いします
ペットたちは癒しを与えてくれる存在です。 人とペットの関係性が密になってきたこともあり、飼い主さまの中でも「家族の一員」と考える方が増加傾向にあるように感じます。
当院では、飼い主さまとペットたちが1日でも長く楽しい生活を送ることができるように、最大限の診療とサポートを行っています。 どのようなことでも気軽に話していただけるアットホームな動物病院を目指していますので、近くにお住いの方はぜひ足を運んでいただけると幸いです。