contents 目 次
- 獣医師の道を選んだきっかけ
- 『動物も人もストレスは最小限で』というコンセプトを掲げている理由
- 待ち時間を少なくするための努力
- 「The Cat Clinic」を併設した背景
- 「The Cat Clinic」の院内を薄暗くしている理由
- ネコちゃんだけでなく人も落ち着ける環境
- CFC(Cat Friendly Clinic)について
- 「子猫リレー事情」の活動内容
- 院内にいるネコちゃんたちは「子猫リレー事情」から引き継いだ子たち
- 今後の目標
平野区で長年続いてきた『くわはら動物病院』ですが、桑原先生はなぜ獣医師の道を選んだのでしょうか
私の祖父と父は、代々町のホームドクターとして動物医療を行ってきました。幼い頃から祖父や父の診療する後ろ姿を見ながら育ってきた影響でしょう。気づいたら私自身も獣医師の道を選んでいました。まだ私が小さかった頃の話なのですが、病院前で遊んでいたら「あんたで三代目やなぁ」と近所の方から言われることが度々あったので、もしかしたら子どもの頃から飼い主さんに刷り込まれていたのかもしれませんね。
『動物も人もストレスは最小限で』というコンセプトを掲げていますが、その理由はなぜでしょうか
病気やケガで辛いなか、なんとか頑張って病院へ行ったのに逆に疲れてしまったことってありませんか。
あります、待ち時間が長くて「まだかなぁ…」と何度も思いながら待つことが度々ありますね
ですよね、待ち時間が長過ぎて「もっと具合が悪くなってしまうのではないか…」と思ってしまうほど待たされる時ってありますよね。それでは何のために病院へ来たのか正直わからなくなりませんか。私はそんな状況を解決したいという思いから、待ち時間を少なくするための予約診療を設けたり、ワンちゃんとネコちゃんの待合室や診察室を分けたりすることで、お互いがリラックスした気持ちで診察を受けてもらえるのではないかと考えました。
また動物たちのリラックスは、飼い主さまのリラックスにも繋がるのではないかと思っていますので、相互が安心して足を運んでもらえる動物病院にしたいという願いを込めて、日々診療に努めています。
ワンちゃんとネコちゃんの待合室や診察室を分けているというのは、2017年に併設された「The Cat Clinic」が関係しているのでしょうか
そうですね、『皆が笑顔でいられる病院にしたい』という思いから「The Cat Clinic」を併設しました。ネコちゃんは、ワンちゃんの声やニオイを察知するとストレスを感じてしまうとてもデリケートな生き物です。ただでさえ自分のニオイがない場所へ行くだけでストレスなのに、さらに他の動物がいれば恐怖の何者でもありません。それで病院嫌いになってしまうと、病気やケガを患ったときに最善の治療が行えなかったり、病状を悪化させてしまったりするかもしれません。
また、ワンちゃんも同様で他の動物のニオイで興奮してしまい、きちんと診察ができないこともあります。そうならないためにも、ネコちゃん専用の「The Cat Clinic」を併設し、完全予約による診察を開始しました。ネコちゃんが落ち着いてくれれば飼い主さまも気が楽ですし、安心して診察を受けていただくことができますからね。
「The Cat Clinic」はその名も通りネコちゃんのための病院ですが、院内を薄暗くしているのも理由があるのでしょうか
ネコちゃんは、夜目が利く代わりに明るく眩しいのが苦手な生き物です。そのため院内の照明から壁紙にかけて全てシックで落ち着いた色に統一して眩しさを軽減してみたり、ネコちゃんが好むフェロモンを噴霧して落ち着ける環境づくりに配慮したりしています。見知らぬ環境では狭くて目立たない場所に隠れることで安心感を得ているネコちゃん。安心して隠れることのできる場所を随所に配備し、猫ちゃんの避難所としていますが、大前提として恐怖感やストレスが最小限になるよう、十分注意を払って診察や入院のお世話に当たっていますのでご安心を。
院内が落ち着いた雰囲気ですと、ネコちゃんでなくてもホッとしますね
そう仰っていただけると嬉しいです。人も薄暗い部屋にいるとリラックスして落ち着くと思うのですが、その理由として人は五感で感じたものを脳に伝達し情報として処理されます。そのため、部屋を暗くすることで目から入る情報が遮断されて脳が休める状態になるので、心理的に休めるだけではなく、脳も休まることからきっとそう感じていただけたのかなと思います。
ネコちゃんにとっても、飼い主さまにとっても居心地の良い環境を提供できるように、これからも色々工夫を凝らしていきたいなと思います。
「The Cat Clinic」では国際認定を受けていらっしゃるそうですね。これはどういった認定なのでしょうか
CFC(Cat Friendly Clinic)というISFM(国際猫医学会)によって画一化された国際基準の規格で、欧米・アジア・太平洋地域を中心に2018年現在世界31カ国で適用されていいます。専門性の高い知識や、質の高い医療を提供できているかなど、厳しい基準に通った動物病院のみ認定されるものなので、認定が受理されたときは本当に嬉しかったですね。これからもネコちゃんにとってよりよい診察と、より優しい環境づくりに配慮していきたいと思います。
桑原先生は「子猫リレー事情」にも参加されていらっしゃるそうですね。どんな活動を行っているのでしょうか
子猫リレー事情は、「子猫の殺処分を減らすため」「シニア世代の社会参画」「子供たちに動物との生活の素晴らしさを知ってもらう」ために2015年10月に大阪市獣医師会が立ち上げた活動です。
自治体に保護された飼い主さまのいない子猫たちを獣医師やキトンシッターと呼ばれるシニアボランティアさんの手で生後6ヵ月齢まで育て、その後生涯かけて大切に育ててくれる方に譲渡する取り組みです。毎年多くの動物たちが殺処分されていますが、私は数字だけの殺処分ゼロを目指すだけではなく、獣医師として死ななくてよい動物たちの命を救えたらなと思い、積極的に活動に取り組んでいます。
院内にいるネコちゃんたちは「子猫リレー事情」から引き継いだネコちゃんたちなのですか
そうですね、当院にいる子猫はこの活動で出会った子たちばかりです。当院のスタッフとキトンシッターさんたちの手で人が大好きな子に育つよう、毎日愛情たっぷり注いで育てています。
もちろん、5種混合ワクチンは摂取済みですし、猫エイズや猫白血病ウイルスの検査も行っています。また、新しい飼い主さまの元へ行く前に去勢・不妊手術を行うと共に、迷子対策としてマイクロチップの装着も行っていますので安心です。近い将来、この子たちを家族の一員として迎え入れてくれる素敵な飼い主さまと出会えたら嬉しいです。
最後に桑原先生が考える今後の目標についてお聞かせください
ワンちゃんとネコちゃんの診療を分けることで、動物たちと飼い主さまが安心して通える動物病院を目指していきたいと考えています。そのためには、日々試行錯誤を繰り返しながらそれぞれが過ごしやすい環境づくりを追及し、なるべくストレスが最小限に済むように努めていきたいですね。