Veterinarian's interview

インタビュー

治療を通じて、ペットと飼い主さまの間に真の絆が生まれることが重要と感じています 治療を通じて、ペットと飼い主さまの間に真の絆が生まれることが重要と感じています

治療を通じて、ペットと飼い主さまの間に真の絆が生まれることが重要と感じています

もみの木動物病院

村田 香織副院長

兵庫県 神戸市

もみの木動物病院

村田 香織副院長

動物との暮らしを楽しむ愛犬家・愛猫家たちの脳裏に、必ず一度は浮かぶ疑問がある。
「この子は今、何を考えているのだろう」
ペットとのより良い関係性を築くにあたり、互いの気持ちを汲み取ろうとする姿勢は不可欠であり、動物たちの心理的健康はそうした相対する人々の心に守られる。
そんな行動診療を専門として数値に現れない異常に対して治療を行うのは、神戸市にあるもみの木動物病院で副院長を務める村田香織先生だ。聞きなれない飼い主も多い行動診療について、自身のこれまでの歩みについて、お話を聞かせていただいた。

contents 目 次

初めに、村田先生が獣医師を志したきっかけについて、お話を聞かせてください

悩み多き10代の頃に飼っていた猫や犬に心を救われていたことがきっかけです。

一方で不幸な動物たちを見て、人と動物が仲良く暮らすことができれば、みんなもっと幸せになれるはずだと考えていました。人と動物が仲良く幸せに暮らせる社会の実現を目指して、獣医師というお仕事を選びました。

実際に多くの動物や飼い主さまにかかわる中で、やりがいを感じる時はどんな時でしょうか

飼い主さまの依頼で行う獣治療ですが、私は常に動物たちの目線で考えることを心がけて、物言わぬ動物の良き理解者として動物たちの気持ちが飼い主さまに通じるように橋渡しができればと考えています。

そんな中で、飼い主さまがご自分のペットを愛おしそうに見つめたり、声をかけたり、撫でたりされる様子を見られたり、飼い主さまの傍で嬉しそうな表情をしているペットを見られることはとても幸せな気持ちになれる、大きなやりがいだと思っています。

これまでのご経験の中で、特に印象に残っている出来事はありますか?

愛犬が散歩中に出会う知らない人や犬に吠えることに困って相談に来られたご夫婦がいらっしゃいました。その子は仔犬期に他の人や犬と触れ合う機会がなく育った社会化不足のワンちゃんで、知らない人や犬とどのようにコミュニケーションすれば良いかわからなかったのです。

治療の結果、色々なワンちゃんや人と楽しく触れ合えるようになったのですが、その様子を見た飼い主さまは涙ぐんで喜んでおられました。飼い主さまによって何より嬉しいのは、愛犬や愛猫が幸せであることなのだと感じました。

村田先生が専門的に行っておられる行動診療について、お話を聞かせてください

人と同じく、晩成性動物(体も心も未熟な状態で生まれる)である犬や猫は、子供の時期の環境が性格形成に大きな影響を及ぼします。彼らにとって異種動物である人が作る社会の一員として幸せに暮らすためには、子犬・子猫の時期からの教育が極めて重要と考えています。 問題行動を起こしてから治療するのではなく、予防することが最も重要であると考え、パピークラス(子犬教室)とこねこ塾(子猫教室)を実施しています。

できるだけ早期に人と幸せに暮らすための子犬・子猫教育をスタートし、多くの飼い主さまに動物との幸せな生活を楽しんでいただきたいです。 行動診療をしていてペットの問題行動に悩んで来られた飼い主さまが「この子のことが大好きになった。」とか「今はこの子が可愛くてしかたない。」と仰るとき、本当に嬉しく思います。ペットが困った行動をしないことばかりでなく、ペットと飼い主さまの間に真の絆が生まれることが重要と感じています。

毎日の生活の中で、飼い主さまが気を付けるべきポイントがあればアドバイスをお願いします

人に比べてペットの寿命は短く一緒に過ごせる時間は限られています。ペットと過ごす一日一日を大切に、楽しい思い出をいっぱい作ってあげてほしいと思います。 動物たちには言葉はわからなくとも、人の情動(喜怒哀楽)はきちんと理解しており、問題行動も多くの場合不快情動から起こっています。

ペットを幸せにできるのは飼い主さんしかありません。ペットの心を満たす生活環境や刺激(犬であれば毎日のお散歩や楽しいふれあいなど、猫であればおもちゃでの遊びや穏やかなふれあいなど)を与え、毎日笑顔で明るく声をかけてあげてください。

今後の獣医療の展望について、村田先生のお考えを聞かせてください

ペットと飼い主さまが良い関係を築き、幸せに暮らせるようにサポートすることが、伴侶動物医療に携わる獣医師や動物看護師の重要な役割だと考えています。ペットの健康状態を改善したり寿命を延ばすための治療であってもペットに心理的なトラウマを作ったり、飼い主さまとの関係を壊すようなことがないよう心がける必要があると思います。

適切な獣医療を受けるためにも、子犬や子猫期から体中触ることに慣らしたり、動物病院やそのスタッフへの社会化などを行っておくことが重要です。今後はペットの身体的健康だけではく心理的健康に配慮した獣医療を行うことが常識となってほしいと思います。

ありがとうございました。最後に、村田先生ご自身の今後の目標を聞かせてください。

犬猫以外の動物も含めて人と動物が良い関係を築いて両方が幸せに暮らせるように、また人間社会の一員としてペットが生涯幸せに暮らせるように、飼育環境の整備や教育の重要性を伝えることです。 そのために、ペットを飼っていない人にも動物と過ごす楽しさを感じてもらえるようなふれあい活動や、動物行動学やアニマルウェルフェアの概念の啓蒙を行っていきたいと思います。

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