Veterinarian's interview

インタビュー

地域に暮らす皆さまの動物病院でありたいという思いは、開業当初から変わりません 地域に暮らす皆さまの動物病院でありたいという思いは、開業当初から変わりません

地域に暮らす皆さまの動物病院でありたいという思いは、開業当初から変わりません

さくら動物病院

平林 弘行院長

さくら動物病院

平林 弘行院長

1999年の開業以来、長きに亘り、地域に暮らす動物たちのために獣医療の提供を続ける、さくら動物病院。この動物病院を院長として率いる平林弘行先生は、日頃の診察の傍ら大学との共同研究や地域貢献活動などにも積極的に取り組むなど、多忙な毎日を送っている。
これまでの病院の成り立ちや、注力しておられる循環器科の診療、さらに近年で益々環境を整えておられるリハビリテーションのお話など、興味深いお話を聞かせていただいた。

contents 目 次

初めに、平林先生が獣医師を志したきっかけを教えてください

小学校5年生の時、初めて自分で飼うことになった犬の存在が大きいですね。その子がケガや病気をした時、自分が治してあげたいと思ったんです。 今思うと何の根拠もないのですが、自分ならきっと治せると思っていました(笑)。

小動物の診察に関わる中で、やりがいを感じるのはどんな時でしょうか

やっぱり、動物のケガや病気が治って元気な姿を見せてくれること、そのことを飼い主さまに喜んでもらえた時ですね。中でも、厳しい状態の子を何とか救うことができると、自分が診ることができて良かったと思います。

また、院長として後進のスタッフたちの指導を行うなかで、成長していく様を傍で見られることです。スタッフ一人一人が自分の仕事に誇りを持ち、懸命に動物たちに向き合う姿を見られることは、私にとって大きな励みになっています。

平林先生は循環器科の治療に専門的な知見をお持ちと伺っています。その分野に興味を持つようになったきっかけはありますか。

恩師である千村どうぶつ病院の千村収一先生の存在が大きいですね。 千村先生は動物の循環器科の第一人者でありますが、千村先生が動物たちのために情熱をかけて懸命に取り組んでいる姿に感銘を受けたんです。

私の母校である北里大学に一緒に講演に行く機会などもあり、千村先生のひたむきな姿を間近で見てきたからこそ、今の自分があると思っています。

そうだったのですね。2018年には認定医の資格を取得されたと伺っています。

そうですね。誤解を恐れずに言うと、実はそういった資格を「紙切れ一枚みたいなもの」だと思っていたこともありつい先延ばしにしてしまっていましたが、2018年にようやく認定試験に合格し無事取得となりました。 循環器の認定医については、取得するためにレポート提出や学会発表、講習会の参加など、多くの課題があり、日々の臨床と並行しながらそれらに取り組むのは労力的にも時間的にも容易なことではありませんでしたね(笑)。

昨今では、循環器系の病気に罹る動物が増えていると聞きます。多い症例などがありましたら教えてください。

犬の循環器系の病気の中で最も発症率が高いのは、左心房と左心室の間にある「僧帽弁」に異常をきたす病気で、血液が逆流を招き、それを補うため心臓に負担がかかってしまうのです。当初は目立った症状が見られないのがこの病気の大きな特徴であり、早期の段階で飼い主さまが気づくことが難しい病気でもあります。

そういった症状を、初期段階で発見する方法はあるのでしょうか

自覚症状がない時期であっても、聴診してみると「心雑音」が聞こえ、さらに心拍数も大きく上昇しているはずで、健診などの際に心臓の音を聞いてみて気づくことも少なくありません。病気の診断には、聴診のほか、エコー・レントゲン・心電図による検査も有効です。

この他にも、病気が進行してしまうまで症状が現れにくい病気は沢山あります。そのような病気を見逃すことなく、できるだけ早く見つけてあげるためにも、動物の小さな異変に気づくこと、定期的に健康診断を行うことなど、元気な時から気軽に動物病院を訪れていただく機会を持つようにすることを推奨しています。

日頃から飼い主さまが気をつけておくべきポイントなどがあれば教えていただきたいです

循環器呼吸器疾患のわかりやすいサインとして、呼吸数の変化があります。目安として、安静時の呼吸数が40を上回るようなら、心臓病や肺水腫などが疑われます。息苦しそうにしていることが多かったり、安静時であっても「ゼーゼー」と呼吸をしていたりするなどの変化が見られる際には、できるだけ早めに受診してほしいです。

動物は人と比べると何倍ものスピードで生きていますので、大したことはなさそうだとつい様子見してしまうと、その間に症状が進行してしまう場合もあるんです。

循環器科以外でも、こちらの病院(さくら動物病院)ではリハビリテーションに注力しておられると伺っています

そうですね。国内では、動物の術後管理としてリハビリを十分に行える動物病院は多くはありません。きちんとした知識・技術を学びたいと調べたところ、テネシー大学公認のCCRP(Certified Canine Rehabilitation Practitioner)に辿り着きました。

これは、アメリカで唯一の認定プログラムであり、テネシー大学のオファーする講義の受講・5症例のケーススタディを提出の上、認定試験を受けるハードルの高いものでありましたが、無事に認定を取得し、手術後の回復療法として、また骨折や椎間板ヘルニアといった整形外科の治療の一つとして、ご提供しています。

また、関西学院大学大学院でロボット工学を学ぶ学生との共同研究として、リハビリの動作解析研究などにも積極的に取り組んでいます。

動物の専門医療の重要性について、先生のご意見をお聞かせください

きちんとした知識と技術、根拠を持って診療に当たることが大切であり、また獣医師としてそうでなければならないと思います。 獣医療も人の医療と同様、日進月歩で進歩しています。新しい薬が開発されるなど、毎年のように新しい技術や治療法が出てくる中で、それらをうまく取り入れ、対応していくことも必要とされます。

そのためには、日々の臨床だけでなく、積極的に学会に参加することが大切だと考えています。

それでは、学会や研究の現場など、足を運ばれる機会も多いのですね

もちろんです。当院では、日曜日を休診としていますが、その理由は、私も含めスタッフが学会に参加できるようにするためです。学会に参加することで、人との繋がりも増え、また刺激にもなります。そのため、スタッフが気軽に学会に参加できるように、出張費は病院で負担。戻ってきたら、学んだ知識や情報を皆にシェアするようにしています。

その中でも、さらに社会活動にも取り組んでいらっしゃいますが、先生の思いを教えてください

当院は、1999年7月に夫婦2人で開業しました。 これまでに当院が成長し続けてこられたのは、スタッフ一人ひとりの前向きな気持ちと、病院を慕って来てくれる地域の皆さまのお陰で、地域に暮らす皆さまの動物病院でありたいという思いは、開業当初から変わりありません。

だからこそ、私たちも地域の皆さまに貢献していきたい、地域の方々との繋がりを大切にしたいと考えています。具体的には、地元の小学校での「ふれあい教室」、職場体験学習、聴導犬・盲導犬募金、清掃活動などに、当院全体が一企業として積極的に取り組んでいます。

最後に、平林先生が獣医師として一番大切にしていることを教えてください

飼い主さま、そして動物たちの気持ちに寄り添うということでしょうか。 それにはやはり、相手を思うこと、相手の立場に立って考えることが必要だと思います。 例えば、治療を進めていく中で、飼い主さまにとって厳しい選択をせざるを得ない場合もあります。そのような時にも、ただ事実を伝えるのではなく、飼い主さまの気持ちを考慮しながら、お話することを心掛けています。

同じ病気であっても、飼い主さまや動物によって、ベストな治療法は異なります。そのご家族にとって、もっとも幸せになれる選択肢を見つけてあげたいと思っています。 飼い主さまとコミュニケーションを積み重ねていくことで安心して任せていただけるように、飼い主さまとの信頼関係を作り上げていきたいですね。