獣医師・歯学博士/林 一彦 へのインタビュー(3/4)

花小金井動物病院 獣医師・歯学博士 林 一彦

林 一彦HAYASHI KAZUHIKO

無麻酔と非抜歯をモットーに動物に負担をかけない歯科治療に取り組んでいます

獣医療の各分野において、一つの専門科目のみに特化して診療を行う動物病院は国内でもその数は少ない。その稀有な存在の一つである花小金井動物病院は、動物の歯科分野の治療を専門的に行う医療機関である。 重度の違いはあれ、口腔内に何らかの問題を抱えている犬は多く、3歳以上の成犬の歯周病罹患率は80%以上とも言われている。この病院で獣医師・歯学博士 を務める林一彦先生は、獣医師であるとともに歯学博士でもあり、「口腔内疾患」の一点にターゲットを絞ることでその専門性を限りない高みへ押し上げている。 自身が長きに渡り研鑽を積み重ねてきた歯科医療について、多くの動物を受け入れる病院のあり方について、医療現場の第一線から林先生の言葉をお届けする。

インタビュー

  • 抜歯を可能な限り避けるという姿勢は、飼い主さまにも喜ばれる部分ではないでしょうか?

    単純に考えて、ご自分が口内炎で歯医者へ行って「歯を抜きましょう」と言われたらどう感じますか?皆さん拒絶したくなると思います。犬や猫だって同じなんですね。ですから当院へはペットの歯を抜きたくない飼い主さまが多くいらっしゃいます。当院はそのような患者さまに応えるためにも抜かない治療を心がけますし、常に勉強していないとそれもできないですね。また、歯がないと舌が外に出てしまうために乾燥を引き起こし、それが原因となって他の問題を引き起こす可能性があるためという理由もあります。

  • 麻酔をなるべくかけないように努めている理由についてお聞かせください

    方針として麻酔をかけずに歯科治療を行っていますが、ほとんどの子は嫌がらずに治療を受けてくれますよ。中にはすごく嫌がって噛み付いてくる子もいますが数百匹に1匹くらいの割合ですね。皆さんが想像するほど嫌がらずに治療を受けてくれますし、ストレスも感じていないように思います。動物への歯科治療を行う際に全身麻酔をすることが一般的に多いようですが、全身麻酔をする方がリスクも高く動物へのストレスになると思います。 歯周病治療は腫瘍などの外科手術とは違うので、麻酔が覚めた後に何もできなくなってしまう全身麻酔はしない方がよいと思うのです。犬が治療を嫌がることは承知の上で、どのように接すればおとなしく治療を受けてくれるのかを工夫していくべきなのです。厳密に言えば麻酔をしない治療というよりも、どう治療すべきかをまず考えて、それに対して麻酔の必要性を二次的に考えていけばよいことなのです。