Veterinarian's interview

インタビュー

現代医学に自然療法を加えて、動物たちの体と心を様々な面からケアします 現代医学に自然療法を加えて、動物たちの体と心を様々な面からケアします

現代医学に自然療法を加えて、動物たちの体と心を様々な面からケアします

プレマ動物ナチュラルクリニック

羽尾 健一院長

プレマ動物ナチュラルクリニック

羽尾 健一院長

近年、獣医学界でも注目されている漢方や鍼灸、ホメオパシーを用いた自然療法。
そんな自然療法を、時代に先駆けて治療に組み込んできたのが、プレマ動物ナチュラルクリニックの羽尾 健一先生だ。先生の治療における最大の特徴は、自然療法のみを用いるのではなく現代獣医学と並行して多面的にアプローチしていくところにあり、動物の体に負荷をかけることなく体質を改善して、病気になりにくい体を作ることにも力を入れている。また動物だけでなく飼い主さまのメンタルケアも大切にした、じっくり丁寧なカウンセリングには定評があり、その評判を聞きつけて他県から通院される方も数多くいらっしゃるそう。
動物だけでなく飼い主さまにも健康で幸せに過ごしていただきたいと願う羽尾先生に、今回は自然療法の魅力について存分にお話ししていただいた。

contents 目 次

まずは羽尾先生が獣医師を目指したきっかけを教えてください

子供の頃から動物が好きで、よく動物関連の雑誌を読んでいました。 その中で、たまたま獣医師特集が組まれていて、獣医師になるにはどうすれば良いのかという記事と一緒に動物病院でコーギーと一緒に写っている獣医師の写真が掲載されていたんですね。それを見て「自分も動物病院で働く獣医師さんになりたい」と思ったのが最初のきっかけです。

初めはペットフードを作る会社に勤められていたんですね

大学卒業が近づくと、就職活動の一環としてあちこちの病院で研修をさせてもらったのですが、「ここでお世話になりたい」と思える病院になかなか巡り合えなくて、悩んだ時期がありました。そんな中、外資系のペットフードの会社が求人を出していたんです。

その会社は科学データに裏付けられた処方食の販売も行っている所でした。元々私は動物の食事に関することを学びたいと思っていたのですが、当時の大学では大型動物に関する栄養学の講義はあるものの、一般的なペットの食事に関しては全く学べませんでしたので、「ここなら犬・猫の食事に関する勉強もできる」と思い、入社することに決めたんです。

自然療法に興味を持つようになったのはいつ頃でしょうか

私の妻が若い頃から体調を崩しがちで、いつもお薬を飲んでいたのですが、試しに官足法や食事の改善、メンタルケアなどを行ってみたんです。すると徐々に体調が良くなってきて、「やっぱり効果があるんだな」と実感したのが興味を持った始まりです。

そのうち、食事の見直しや漢方、鍼灸を用いた方法を動物たちの治療にも活かせるんじゃないかと思うようになって、開業したときに手術や薬による治療だけでなく、自然療法の要素を取り入れようと考えたんです。今でこそ動物向けの東洋医学の本やセミナーがありますが、当時は人間の東洋医学の本を読んだりして独学しました。

趣味が「テニス」ということですが、やはり自然治癒力を高めることにおいて運動の重要性をよく理解しておられるからなのでしょうか

そうですね。ここでは、動物たちの日々の暮らし方も含めてトータルなヘルスケアを提案していますので、運動や食事の重要性というものを飼い主さまにもよくお伝えしているんです。そういったことを指導するにあたって、自分から率先して生活様式を見直して、体幹を鍛えたり、筋トレをしたり、また、栄養的にはバランスの良い食事を適度に摂取するなどして、メタボな体にならないように心がけています。

診察の際に特に力を入れていることはどんなことですか

飼い主さまとのカウンセリングの時間をしっかりとるために、診察は完全予約制にしています。飼い主さまには不安に思っていること、質問したいことがたくさんあると思いますので、それを少しでも解消してあげるために時間に余裕を設けたいと思い、予約制にしました。

大切なワンちゃんやネコちゃんの病気や怪我について、不安でいっぱいの方も多くいらっしゃるかと思います。そんな時も不安が余計に募らないように、しっかりと飼い主さまのお話を伺い、「まだまだ頑張れますよ」「無理せず治療できますよ」など、ポジティブな言葉も交えることをとても大切にしています。これによって飼い主さまの気持ちもだいぶ楽になりますし、飼い主さまが安心する様子を見た動物たちにも少なからず良い影響が出てくると思います。

飼い主さまとのコミュニケーション時には、どういったお話をヒアリングしているのでしょうか

症状を根本的な部分から治療するには、動物の体調面の情報だけでなく、好きなこと・嫌いなことなど動物の性格に関してもしっかりと把握する必要がありますので、飼い主さまは大変かと思いますが、問診票にある多数の項目について記載していただいています。それらの情報を元に、「どうしてこのような症状が出たのか」を体だけでなくメンタル面の診察も含めて行っています。

例えば人間でも、感情を表現する人よりも我慢して溜め込んでしまう人の方が、ストレスを発散する機会が少ないため病気になりやすい傾向がありますが、それは動物にも同じことが言えることで、我慢してしまうタイプの子は体調を崩しやすいんですね。当院では動物の性格や気持ちも考慮した治療方法をご提案するよう心がけています。

食事の改善も重要だということですが、どういったご提案をしているのでしょうか

動物たちの自然治癒力を活性化させるにあたって、日頃の食事を見直して体質改善を図ることは重要なポイントの一つですが、飼い主さまの状況によってできること、できないことが出てくるかと思います。

特に大型犬の場合は食べる量も多いですので、食事に多大な費用をかけるのが難しいという方もいらっしゃいます。ですが「じゃあしょうがないですね」と終わらせるのではなく、週に一回でも犬や猫に必要な、本当の意味で栄養のバランスの取れた手作り食を与えてあげる、ドライフードにお肉をトッピングしてあげるなど、少しでも飼い主さまが負担なくできる方法をご提案するようにしています。

自然治癒力を高めるために重要なのは、体に良いことを長く続けることです。飼い主さまが「それだったらできそう」と思えることを積み重ねていくことが一番大切なんです。治療の際に、併用して貰うためにお薬を出す場合もありますが、食事を改善することでお薬の効きも良くなりますし、中には食事を改善するだけで病気自体が治る子もいるほどです。

治療の際に、漢方薬やホメオパシーなどの自然薬を使っていますが、主にどういったメリットがあるのでしょうか

漢方薬やホメオパシーなどの自然薬は、天然の有効成分を含んだお薬ですので動物の体に優しく、その分野の研鑽をきちんと積んだ獣医師が適切に用いれば副作用もありません。そのため高齢の子には勿論のこと、妊娠している子にも使用できるんです。

そして、当院では「未病を治療する」ということをテーマの一つとして掲げています。人間でも、特に検査では異常が見当たらないけれども何だか頭が痛い、体がだるいといった不調を感じる時があると思いますが、漢方や鍼灸などの東洋医学を用いた治療は、そういった病気になる前の「未病」の状態にもアプローチできます。病気になってしまうと、お金も期間もかかって大変ですし、重症になると治る程度も限られてしまいますので、自然薬を用いて自然治癒力を高め、事前に病気になりにくい体を作ることこそが大切だと考えています。

一般的に用いられる西洋医学の薬品は、治療には用いないのでしょうか

いえ、そういうことではありません。自然療法に力を入れている話をしてきましたが、決して現代医学を否定しているわけではないんです。現代医学だけでは良い効果が得られずに苦しんでいる動物や飼い主さまに、その子の状態、体質に合った治療方法を別の角度からアプローチしていくという統合医療の考え方で臨んでいます。

私が最も大切にしていることは、その動物が元気に長生きできるためにベストな治療を行うことですので、手術や化学薬品と併用して治療を行った方が良い結果が得られる場合は、そのようにしています。

その他に、飼い主さまにお伝えしたいことはありますでしょうか

遠方にお住まいの方や、動物を動かすことが難しい場合はお電話での対応も可能です。勿論、症状を見てみないとわからない場合もありますが、電話相談だけで解決できることもありますし、お話ししていただくだけでも安心できると思いますからね。

最後に、今後の目標をお聞かせください

病気になりにくい体を作る「養生」の考えを、これからも飼い主さま方に啓蒙していきたいですね。また、体のことだけでなくメンタルの部分でも動物たちは色々な悩みを抱えていると思いますので、そういった面もフォローして、犬生、猫生最後の日までご飯が美味しく食べられて、自分の足で歩き回れるような、そんな一生が送れるようサポートしていきたいと思います。