contents 目 次
- エキゾチックアニマルに力を入れ始めたきっかけ
- ウサギの平均寿命が大きく延びている背景
- エキゾチックアニマルに対して効果的な病気の予防法
- 飼い主さまが日頃から気をつけておくべきこと
- 実際に治療を行う機会が多い症例
- 獣医師になったきっかけ
- 飼い主の皆さまへのメッセージ
今西先生がエキゾチックアニマルに力を入れ始めたきっかけを教えてください
私は獣医師になってからというもの、どんな動物でも診られるようになりたい、診られることが当たり前というように考えていました。そのため元々犬猫以外の動物も受け入れは行っていたのですが、実際にウサギなどのエキゾチックアニマルの診療を行う中で、それまで蓄えていた知識だけではカバーできない部分、わからないことが多くあり、その分野について改めて勉強していくうちに、知識・経験を吸収していき、いつの間にか鳥類、リス、亀なども含めて多くの動物を治療するようになっていったのです。特にウサギに関しては症例も多く、2000件以上のウサギのカルテがあります。
とは言え、全国的に見ても学術的なデータが犬や猫に比べてまだまだ少ない状態であるため、エキゾチックアニマルの治療は症状ごとのいわゆるゴールドスタンダードと言える治療が存在しないことが多いのです。勿論、だからと言って諦めるのではなく、日本のエキゾチックの第一人者の先生たちが集まる勉強会やセミナーに積極的に参加しさらに勉強を続けていますので、治療のレベルは日々向上しています。
そういった医療レベルの向上は平均寿命にも関係してきそうですね
その通りです。犬猫の平均寿命が飛躍的に上昇したように、例えばウサギに関しては医療の発展により寿命は大きく延びています。昔は8歳~10歳であったところが、4、5年前の調査では13歳と言われています。高度医療が進んだこともそうですが、それに併せて食事などの生活環境が改善されていったことが大きな要因です。今では室内で環境を保ち、大切に飼われている方が殆どであると思います。
あとは、ウサギは子宮や精巣のガンを患う確率が非常に高い動物なのですが、犬猫と同様に避妊手術を行う認識が浸透したことで、それを予防できているということも一因かもしれません。
エキゾチックアニマルに対して、効果的な病気の予防はどんな方法でしょうか
先程話に出たウサギは勿論、次いでハリネズミやモルモットも子宮の病気が多いのですが、これらは避妊去勢などの予防的な外科手術を行うことは学術的なデータも見ても少なく、普及しているとは言えない状態です。ウサギの場合は推奨していますが、それ以外の動物たちに関してはエコー検査などで調べてからの方が良いかと思います。
全ての動物に対して言えることですが、病気は早い段階で発見するに越したことはなく、食欲の減衰などちょっとしたことでマメに相談に来ていただけるのが一番です。小さな動物は犬猫に比べると症状の悪化が早く、回復には時間がかかるケースが多いので、身体が弱る前に治療してあげることが肝要です。
飼い主さまが日頃から気をつけておくことで防げる病気などもあるのでしょうか
ウサギは自分の毛を食べてしまい便が硬くなり、さらにその便を食べてしまうことにより腸が詰まり、腸閉塞を引き起こすことがあります。そのため自宅での予防としては無駄な毛をとるグルーミングなど、定期的なお手入れをしていただければと思います。スキンシップを取り、動物との暮らしの楽しさを実感していただくという意味でも、こういったお手入れはお勧めしていますよ。
また健康診断もご案内しています。ウサギであれば5歳までは1年に1回、それ以降は年に2回のペースで行っていただくのが理想です。ウサギは爪切りも必要なので、来院のタイミングで併せてご案内しています。
実際に治療を行う機会が多いのはどのような症例でしょうか
ウサギの来院の場合、その半分は歯のトラブルによるものです。歯が不適切な方向に生えてしまい口の中を傷つけてしまう「不正咬合」と言うパターンと、歯の根元が悪くなってしまう「根尖疾患」と言うパターンがあります。根尖疾患の場合にはCT検査を実施することで歯の根元の状態を詳しく検査し、状態によっては抜いてしまうという選択肢も含めて飼い主さまの治療の選択肢をご提示するわけです。CTの導入によって、ウサギの歯に関しては良い治療ができていると思います。
根尖疾患は食べ物の硬度が原因となっていると言われていますが、原因についてはまだはっきりとしたことはわかっていません。しかし放っておくと膿が溜まり、頬やアゴが腫れたりする根治が困難な病気に発展してしまう確率が上がるため注意が必要です。食べ物の好みが変わった、食事に時間がかかる、よだれが出てしまうといった症状を発見した際は、ご来院いただきたいですね。
今西先生が獣医師になったきっかけを教えてください
小さい頃から動物を見たり触ったり、子供なりに勉強することが好きだったんです。最初に飼育した動物はモルモットで、その後犬や猫も飼っていくうちに、動物関係の仕事や研究に携わりたいと考えるようになり、獣医師の道を志すようになりました。学校の理科や生物学の先生もちょっと考えたのですが。
実際に小動物の臨床の現場に身を置いていると日々様々なことが起こるのですが、治療を完遂出来て感謝していただける際はもちろん、力が及ばず動物を亡くしてしまった後でも飼い主さまからお礼の言葉をいただくこともあります。本当にやりがいを感じますし、同時に自分の責任の重さを認識しています。
また、一度動物を亡くされた方が、次の動物を飼われた時にその子を連れてまた来てもらえると本当に嬉しいです。私たち獣医師の役割は飼い主さまが動物と楽しく仲良く暮らせるようにサポートすることなので、動物と一緒にいる暮らしが好きな方々の毎日を支えていけるよう、今後も獣医療に取り組んでいきます。
最後に、飼い主の皆さまへのメッセージをお願いいたします
小動物は自然界では狙われる側の動物ということもあり、ちょっとした空気感の変化にも敏感で、怯えが大きなストレスとなることも多々あります。飼い主さまの気を引きたくてちょっとイタズラをしてしまうこともあるかもしれませんが、怒ったりせずに優しく接してあげてください。
ただ、最近では少しポッチャリした体系の子が増えているように感じています。大切に育てていただいているのだと思いますが、甘やかしすぎるのも健康管理の上で適切とは言えません。体型をチェックしながらご飯の量を調節してもらえたらと思います。健康に関して、飼育に関して、わからないことがあればお気軽にご相談ください。