Veterinarian's interview

インタビュー

動物たちのさらなる「安心」を目指して、日本全国で、眼科の治療、教育に取り組んでいます 動物たちのさらなる「安心」を目指して、日本全国で、眼科の治療、教育に取り組んでいます

動物たちのさらなる「安心」を目指して、日本全国で、眼科の治療、教育に取り組んでいます

どうぶつ眼科Eye Vet

小林 一郎院長

どうぶつ眼科Eye Vet

小林 一郎院長

どうぶつ眼科Eye Vetは、日本にはまだ少ない、動物のための眼科専門の動物病院である。院長の小林一郎先生は、海外で専門医療を学んだ後、世田谷の地に専門病院を開業された。眼科の診療を行うだけでなく、広く教育や研修を行うなど、動物医療のため精力的に活動される、先生のこれまでの道のりや、眼科治療などへの想いを伺った。

contents 目 次

獣医師を目指したきっかけを教えてください

ありきたりですが、一番は動物が好きなことでした。小さい頃から犬を飼うなど、その他にも色々な動物を飼っていました。小学生、中学生のときから動物園の動物を見ながら、動物に関わる仕事をしたいと思っていて、そこから獣医師という職業があることを知ったのです。中学から高校に進学する時に、獣医師の大学に進める高校を調べて進学しました。そのまま大学へも進学し、獣医師になることができました。

しかし実は、獣医師になる以外にも、海外で仕事をしたいという夢があり、高校3年間と大学に通った6年間の間に、海外留学をしました。その経験が、獣医師になってから、再度留学するきっかけになりましたし、現在では海外の学会に行く時にも活かされています。

眼科を選んだきっかけを教えてください

実は、初めは特に眼科にこだわっていたわけではありませんでした。大学在学中は、海外に留学しながら色々な勉強をし、卒業後の4年間は一般の動物病院の現場で経験を積みました。多くの場合は代診ということを4、5年務めてから自分で開業することが多いのですが、私はそれよりも、もう少し海外で勉強がしたいと考え、また改めて海外から日本を見たいという思いもあり、留学をすることにしたのです。

当時、日本では動物の専門医療というのがほとんどなかったのですが、海外に行くと専門医療も、それを教える地域校もあり、大学にも専門医療の試験がありました。私は専門の医療施設の門を叩いたのですが、そこには、うさぎや亀を治療する分野や、眼科、皮膚科などがあり、研修があったので受けてみました。

そこに、ちょうど大学の専門の教育プログラムに入れるシステムがあり、それが眼科だったのです。その中で、最初に自分を雇ってくれたのが、フロリダ州マイアミにある病院の眼科の先生でした。次に行った時にも、その医療施設から教育機関を紹介してもらいました。オハイオ州立大学の眼科の先生が引っ張ってくれたため、結局5年間勉強させて貰える機会がありました。そして最初の先生と、二番目の先生との縁で眼科を選ぶことになりました。

眼科治療に関して、多い病気やご相談内容はどういったものですか

やはり一番多い病気は結膜炎ですね。また手術が一番多いのは白内障です。白内障は、人間の場合は高齢になった時に可能性が高い病気というイメージですが、犬の白内障というのは、人間の子どもの白内障と一緒で、1歳か2歳くらいで目が真っ白になってしまうのです。

当医院は二次診療施設なので、かかりつけの獣医師の先生から紹介があって、飼い主さまがご相談にいらっしゃいます。あとはセカンドオピニオンといって、大学病院に行ったけれど、他の意見を求めるために当医院に相談するということもあります。

眼科の病気には、どう付き合っていけば良いでしょうか

眼科の病気は遺伝的なものが多いので、犬を飼い始めたら、病気を持っていないのかどうか、動物病院での健康診断、アイチェックをすることがとても大事です。遺伝病は2歳までに発症することが多いので、最初の半年から1年のうちに診ておきましょう。意識を持って、健康な時に診て貰うということが大切なのです。病気になるまで何もケアをしないというのではなくて、症状が出る前から、これからどんな病気になる可能性があって、どういうケアをしていけば良いのかを、把握してください。

飼い主さまが明らかにおかしいと気がついた時には、かなり進行した状態になってしまっていることが多いのです。最初の半年から1年のうちに健康診断を受けられれば、病気を予防していくことは不可能ではありません。なぜかというと、例えば2歳までに目が見えなくなってしまう病気があるのですが、その症状は生後半年から始まっています。しかし、その時気づかないで過ごしてしまうと、いきなり2歳になったときに両目が見えなくなってしまう、ということになります。もっと早くから気がついておけば、対策を練ることができたかもしれません。動物は人の言葉が話せませんので、飼い主さまが気をつけて、飼い始めたときからケアをしていくことが、とても重要なのです。

病院の診療方針と二次診療施設の役割について教えてください

ここは専門病院なので、通うには主治医の獣医師の先生からの紹介が必要です。つまり二次診療として、いらっしゃる方がほとんどです。専門病院というと敷居が高いと感じてしまい、入りづらいということもあると思いますが、こちらは動物の眼科専門の医者として診療するほか、看護師は飼い主さまの気持ちに寄り添って、獣医師には直接話しづらいご不安などをお聞きしたりするという姿勢を重要に考えています。

飼い主さまも安心、紹介してくれた主治医の獣医師も安心、そしてもちろん、動物たちも安心という、安心を与えられるような病院でありたいというのが一番の目標です。

眼科のような専門の分野を、さらに広げていくために取り組まれていることはありますか

専門病院なので、通常1日に1人か2人、看護師と獣医師の研修生がいます。他の病院に所属している人たちが、ここに週1、2回勉強に来るのです。ここには私は週に4日いて、あとは埼玉、宇都宮、新潟、岩手、長野それぞれ全部で7施設に行っています。そこにそれぞれの地域の先生方が来て、研修生の教育をしています。診察以外にもそういう教育をしていかなくてはなりません。

もう一つは情報を公開するということです。眼科の専門の獣医師は少ないので、当医院で行った様々な診療のデータを国内外の学会などで広めていくというリサーチも行う必要があります。診察がメインですが、教育とリサーチを常に行っています。

専門診療の必要性について教えてください

獣医師になった頃、代診ということで、普通の一般病院に4年間いました。その時に自分だけでは抱えきれなくなる症状が多かったのです。歯医者さんもやらなくてはいけない、内科の先生もやらなくてはいけない、手術もしなくてはいけない、というように、複数の分野のことをやる必要があるのですが、自分の不得意な分野や、これ以上はできないという状態になった時に、任せられる病院が以前は少なかったです。

獣医師の大学は、全国にも少なく、眼科教育を受けることのできる大学も多くはありません。犬が白内障になってしまった時、任せられる病院がなくて諦めるしかないという状態だったので、専門の獣医師の必要性、重要性が出てきたのです。

専門獣医師の必要性が増したのはなぜでしょうか

家族の一員として一緒に生活している犬やペットというものの医療を考えるようになったため、必然的に、専門の医療を行う施設が増えてきたのです。

しかし今でも専門の医療を行う病院は少ないですし、東京に集中しています。全く専門病院がない地域もあります。1回で治る病気は少ないので、通院が必要になるのですが、遠方の飼い主さまの場合、なかなかそれができないので、上手く治療ができず、治らないというケースも多いです。そう考えるとやはりこちらからできるだけ地方へ出向いて、眼科診療を受けられるようにするのが一番良いと考えています。

専門機関での検査・治療を検討中の飼い主さまへお伝えしたいことはありますか

飼い主さまへのアドバイスとしては、動物を新しい家族として迎えたら、まず健康な状態であるのかをチェックして欲しいです。なぜかというと、生まれながらの先天的な病気があるからです。その上で動物と共にに日常生活を始めて、もし、そこで不安なことがあるようなら、当医院のような専門病院にお越しください。当医院は担当医の紹介が必要ですので、まずかかりつけの病院で健康チェック、健康診断をすることが大切です。

飼い主さまや獣医師の先生向けに行っているセミナーやご著書があれば教えてください

セミナーは、月に8~12回程度開催しています。眼科に関するセミナーで、獣医師の先生に向けて行っています。内容としては、白内障を始め色々な病気に関して、大体2時間ぐらいレクチャーします。自分の話のレパートリーは約140あり、その内のどれかについて話しています。

今後の目標について教えてください

眼科をやっている獣医師は、眼科学会に所属しています。皮膚科などの学会に比べたら小さいのですが、やはり専門の獣医師はまだ少なく、全くいない地域もあるので、日本中どこに行っても、専門の医療が受けられるような体制作りをしていきたいです。学会の役員としても、自分個人としても、地方にできるだけ教育を普及していきたいと思っています。

病院としては、飼い主さまのかかりつけの獣医師の先生から紹介していただくうえで、「安心」という二文字を常に意識してやり続けていくことが目標です。