contents 目 次
- 獣医師を志したきっかけ
- やりがいを感じる瞬間
- 印象に残っている出来事
- 腫瘍科の診療内容について
- 悪性の腫瘍が見つかった場合の治療方法
- 目的や飼い主さまの意向によって変化する、オーダーメイドのような治療方法
- 人と動物の腫瘍の性質の違い
- 飼い主さまへのメッセージ
初めに、中西先生が獣医師を志したきっかけについて教えてください
子どもの頃から生き物が好きで、動物に携わる仕事をしたいと思っていました。中学校の卒業論文にも、将来は獣医師に…と書いてあります。
しかし、実は実家では犬を飼うことができなかったため実際に獣医療に関わることはなく、獣医師の仕事がどんなものなのかはわかっていなかったように思います。当時は、ただ漠然と憧れていたのかもしれませんね。
実際に獣医師の立場になってみて、やりがいを感じる瞬間はどんな時でしょうか?
病気の中には完全に治すのがどうしても難しいケースがあります。だからこそ、治せるものをきちんと治してあげられた時や、弱っていた子が元気な姿を見せてくれること、自分の手で改善の方向に持っていくことができたことで、飼い主さまに喜んでいただけた時ですね。
これまでのご経験の中で印象に残っている出来事はありますか?
現在では動物達も本当に長生きをしてくれる時代となりました。以前、20年近く一緒に暮らしたワンちゃんが腫瘍性の病気を患い、長く苦しい闘病生活を支えた飼い主さまが、暫く経ってから新しい家族を迎えてまた当院に来てくれた時のことは強く印象に残っています。
辛い別れを経験された後ということもあり、次に迎えた動物と楽しく過ごしている姿を見て、ホッと嬉しい気持ちになりました。
中西先生が注力しておられる腫瘍科の診療についてお話を聞かせてください
腫瘍はどんな動物も罹る可能性がある病気の一つであり、一般診療のクリニックから腫瘍科のある専門病院まで多くの病院で治療が行われています。
ヒトが患うそれと同様に良性のものと悪性のものがあり、悪性の腫瘍はいわゆる「がん」と呼ばれ、見た目がゴツゴツしている・触っても動かない・次第に大きくなってくるといった特徴があります。診察の際はこのような指標を参考にしながら、血液検査、レントゲン、超音波、場合によっては細胞の採取を行うなどして、総合的に判断する目線が必要になります。
悪性の腫瘍が見つかった場合、具体的にはどのような治療を行うのでしょうか
一般的な治療法は大きく分けて三種類あります。それは腫瘍そのものを取り除く外科的手術、抗がん剤を用いる化学療法、そして放射線療法です。
これら三つの治療法を、腫瘍の性質や動物の年齢・体力、病状、そして飼い主さまのご希望などに合わせて、組み合わせながら治療を進めていきます。当クリニックでは、手術と抗がん剤による化学療法を中心に行っていますが、放射線治療が有効であると判断した場合には、近隣の専門病院へのご紹介を行う等、ご家族にとって適切な治療を受けてもらえるように、連携体制も万全に整えています。
すると、治療方法はほとんどオーダーメイドのような感覚ですね
そうかもしれません。例えば、目的が「完治」と「緩和」では治療法が大きく異なることもあります。腫瘍に限らず、治療に関しての考え方は飼い主さま毎に様々ですので、動物の病状は勿論、飼い主さまが「どこまでの治療を希望されるのか」を、お気持ちを考慮しながら進めていくことが大切だと考えています。
獣医師として、飼い主さまの気持ちに寄り添い、相談を欠かすことなく、納得できる選択を行うためのサポートを行うよう心がけています。
腫瘍は人間にもある病気ですが、動物のそれとで性質の違いなどはありますか?
ヒトと動物の腫瘍の違いでまず挙げられるのが、その進行の早さです。人よりも寿命の短い動物たちは病気の進行も早くなります。
例えば人の場合、腫瘍が肉眼でわかる大きさになるまで5年ほどかかるとすると、犬では1年ほどしかかかりません。しかし、動物たちは自分の自覚症状を誰かに伝えることもなく、さらに初期の状態では明確な症状が無いため、一緒に暮らす飼い主さまにも見つけることが難しいのです。
そのため、飼い主さまが異変に気付き病院に来院された時には、既に症状が進行してしまっていることも少なくないのが現状なのです。腫瘍は適切な治療によって完治可能な病気であり、不治の病ではありません。それぞれに合った適切な治療を行うためにも、普段の暮らしの中でしっかり動物たちに目を配っていていただきたいですね。
最後に、このページをご覧になる飼い主さまへのメッセージをお願いいたします
動物たちにとって一番近い存在は飼い主さまです。何となく元気が無い、いつもと様子が違うなど、何か気になることがあれば、いつでもご相談ください。
「こんなことで病院に行っていいのかな…」と迷われる飼い主さまもおられますが、不安に思うことがある時こそ、ご相談ください。また、腫瘍を始めとした全ての治療において、何より大切なのは「飼い主さまがどうしたいか」です。どんなことでもご希望をお話してください。