Veterinarian's interview

インタビュー

誰もが気軽に話せるアットホームな昔ながらの動物病院 誰もが気軽に話せるアットホームな昔ながらの動物病院

誰もが気軽に話せるアットホームな昔ながらの動物病院

小倉台どうぶつ病院

西村 壽院長

千葉県 千葉市

小倉台どうぶつ病院

西村 壽院長

1986年に開業した小倉台どうぶつ病院は、この地で約30年に亘って地域の皆さまに愛され続けているクリニックだ。犬猫だけではなく、エキゾチックアニマルの卓越した診療技術と豊富な知識、そして何よりも院長の温かい人柄が飼い主さま達から絶大な信頼を得ている。常に新しい獣医療の知識・技術を習得しながらも、飼い主さまとのコミュニケーションが一番大事だと語る西村院長。
診療する上ではインフォームドコンセントを特に大切にし、飼い主さまが希望される範囲内で実現可能な治療法を幾つか提案し、安心して治療に専念できるよう細かいフォローも忘れない。小倉台商店会の会長を務めながら地元の人々との繋がりも忘れず、また、専門学校では未来の動物看護士の指導も行っている。今回は予防医療から今後の展望まで、様々なことを存分に語っていただいた。

contents 目 次

まずは、西村先生が獣医師を志したきっかけを教えてください

小学校の2年生までは獣医師ではなく、人間のお医者さんを目指していました。当時は大人の話を聞いてあまり深くは考えずに、「じゃあお医者さんになろうかな」って感じだったんです。テレビのニュースで日本初の心臓移植手術を執刀したことで話題となった教授を見て、さらに医師に憧れましたね。ところが、その教授が訴えられたことを知り、なんて医者って理不尽なんだと悟ってしまい、そこで諦めました(笑)。

そんな中、親から「獣医師という動物のお医者さんもあるよ」と言われて、獣医師になろうと決断したんです。決断してからはブレることなく、ひたすら目標に向かって走り続けてきました。小学校を卒業する前には、獣医師になる方法を担任の先生に聞いていましたし、卒業アルバムには「西村動物病院という3階建ての動物病院を創って院長になる」と書いてあります(笑)。

少年期で思い出に残っていることはありますか?

幼い頃から動物と触れ合う機会が多い環境でしたので、飼い犬の他に海で釣った魚、田んぼで見つけたカエル、羽が折れて動けない鳥などを見つけると自宅で飼育していました。しかし当時は、住んでいた地域に動物病院がなかったので、動物が怪我をしたり具合が悪くなったりすると自分で、百科事典などで必死に調べて診ていましたね。昔でしたので鳥同士が喧嘩して傷ができたら局所殺菌剤(殺菌・消毒)を塗ってみたり、秋田犬が皮膚病になった時は毛を刈って軟膏を塗ってみたりとか、色々と試行錯誤しながらやっていたのですが、きちんと治っていました。

その時に気づいたのが、何もしなければどんどん症状が悪化していくけれども、ちょっと手をかけてあげれば動物の怪我や病気は治っていくものなんだ、ということでした。また、様々な動物の飼育体験の中から命の尊さや重さを学びましたし、他人よりも探求心が強い性格でしたので、自分が疑問に思っていたことは徹底的に調べて解決するという行動力が、もしかしたら今の獣医師という仕事に繋がっているのかもしれませんね。

獣医師になるにあたって何が一番大事だとお考えですか?

獣医学科のある大学に入るために勉強することはもちろん大事ですが、獣医師になるということは動物の命を預かるということですから、そう簡単なことではありません。動物病院では日々色々なペット達が、様々な病気や症状を抱えてやってきます。同じ治療法で全て完治できるということはありません。機械の部品を取り替えるのとは違いますからね。獣医師になっても常に勉強ですよ(笑)。あとは、まずは漠然で良いですので、動物の何を勉強したいのかということを考えてみてください。

例えば、脳の病気を知りたい、犬猫の心臓病を治したい、医学的なヘビの研究をしたいとか、動物の病気にまずは関心を持っていただくことが大事ですね。基本的に獣医師になっている人は、動物に携わることが好きな人、動物の病気に関心がある人、動物の飼育経験がある人、自分のペットを亡くしてしまった経験がある人が大半だと思います。

動物看護士のやりがいとは?

私は、ちば愛犬動物フラワー学園設立当初から講師を務めており、即戦力として働ける動物看護士になっていただけるように現場での臨床検査を活かした授業を行っています。実際に動物病院で働くことになれば犬・猫に引っかかれたり、噛まれたり、汚物の処理をしたりとか、動物が可愛いという気持ちだけではやっていけない部分が出てきます。動物看護士のやりがいは、獣医師と共通していると思いますよ。理屈ではなく、動物を助けてあげたいという気持ちと、ペットたちが元気になって、家に帰って行く姿を見た時に喜びを感じると思います。

ここ最近、獣医学の進歩を感じることはありますか?

私が大学に在籍している時は、小動物に関する日本の知識はアメリカと比べて100年遅れていると言われていました。当時はフィラリア予防も知らないくらいでしたからね。現代の知識や技術があるのは、当時の日本の獣医師たちがアメリカに渡り、帰国した際にその技術と知識を普及させていったという歴史があります。今では逆にアメリカの先生が教わりに来ていますので、日本のレベルは高くなったと感じます。

獣医療は日進月歩ですから、病気一つにしても考え方や治療方法がどんどん変わっていきますので、その変化についていけるよう、日々勉強です(笑)。最近の傾向としては、CT、MRI、PET検査など、高度な機器を使った検査や治療が行える高度医療へと変わりつつありますね。また、獣医師の将来の見通しとしましては、これから何十年後、このまま人口が減少していくと犬猫など家庭で飼う動物が少なくなってきますから、町の動物病院が少なくなってくると思われます。将来的には牛、馬、豚などの産業動物獣医師の役割が増えていくものだと考えられますね。

蚊が媒介する感染症“フィラリア予防”の必要性とは何でしょうか?

千葉県には田んぼや水辺などの自然が多く残っていて、蚊が発生しやすい濃厚感染地帯と言われていますので、フィラリア(犬糸状虫)予防は大切です。フィラリア症は蚊の媒介によって感染しますので、子犬だから、老犬だからということは関係ありません。フィラリアの成虫が心臓に寄生すると血液循環が悪化し、咳・息切れや肝臓・腎臓・肺の障害など、様々な症状を引き起こしてしまうんです。また、フィラリア症は犬だけではなく、稀ですが猫にも感染します。

フィラリアの予防期間は地域により異なりますが、だいたい通年5月~11月だと言われていました。ですが、近年では地球の温暖化によってその予防期間が延長されつつあり、フィラリア症の専門学会では1年間(12カ月)通年投与が推奨されています。1回の注射で12カ月予防できる薬が既にありますので、薬の飲ませ忘れを防ぐためにも当院では推奨しています。

それから、ノミ・ダニ予防も大切ですね。今では、フィラリア(犬糸状虫)、ノミ・ダニ、お腹の寄生虫の予防・駆除が一つにまとめてできる飲み薬がありますので、昔と比べて手軽に病気予防ができるようになってきています。

犬・猫の避妊・去勢手術のメリットを教えてください

避妊・去勢手術を行う大きな理由としては無駄な命を増やさない、望まない繁殖を防ぐということです。去勢手術をすることで前立腺肥大、精巣腫瘍などの病気の予防ができ、避妊手術をすることで、乳腺腫瘍や子宮・卵巣などの病気の予防ができます。

学校でも教えているのですが、犬の場合は1回目の発情が来る前に避妊手術をすると約95%~98%の乳腺腫瘍を防げ、3回発情した時点で行うと約68%まで下がります。それを考えたら1回目の発情が来るか来ないぐらいで手術した方が、乳腺腫瘍を予防できる確率が高いというわけです。また、子猫・子犬を増やしたいとご希望されている方は別ですが、望まない繁殖によって子猫・子犬たちが捨てられてしまう原因になってしまうのも、やはり悲しいことですからね。

近年は情報が氾濫している世の中ですが、中には避妊・去勢に関して誤った情報も見受けられます。例えば、「避妊・去勢手術をすると寿命が短くなるのでやらないほうが良い」という話題がありますが、獣医学からみたらそれは全く根拠の無い話なんです。

このように予防に関しての誤った情報も多く、何が正しい情報なのかわからなくなってきている飼い主さまもいらっしゃると思いますので、避妊・去勢に限らず、予防に関して何かわからないことがあれば信頼できるホームドクターに相談されることが一番だと思いますよ。

ホームドクターとして大切にしていることは何でしょうか?

信頼関係を築くためにも飼い主さまと仲良くなることと、よく話を聞いてあげることですね。インフォームドコンセントを大切にしていますので、なるべく専門用語を使わずに噛み砕いてわかりやすい説明をするよう心がけています。また、私自身は人と話をするのが好きなので、飼い主さまと会話を楽しみながら、ペットへの想いや飼い主さまの希望を聞き出して、幾つかの選択肢を提案します。

もし飼い主さまが何か聞きにくそうにしていたら、こちらから話しかけて聞きだすようにして、悩みや不安をその場で解消できるように心がけています。治療に関してわからないことがあったら、お電話で質問していただいても構いませんよ。

最後に、今後の目標をお聞かせください

地域の小倉台商店会の会長も務めていますので、色々な方とこれからも交流していきたいですね。とにかく、皆さまと和気あいあいと話をするのが好きなので、アットホームな雰囲気を大切に、ニコニコ笑いながら話ができる身近な獣医師でありたいと思います。

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