Veterinarian's interview

インタビュー

皮膚の痒み、脱毛など動物の皮膚についてお悩みの方はぜひご相談ください 皮膚の痒み、脱毛など動物の皮膚についてお悩みの方はぜひご相談ください

皮膚の痒み、脱毛など動物の皮膚についてお悩みの方はぜひご相談ください

泉南動物病院

横井 愼一院長

泉南動物病院

横井 愼一院長

痒さに煩わしさを感じるのはどんな生き物であっても同じであり、強い痒みを伴う疾患が動物とそのご家族の生活の質を著しく低下させてしまうことは間違いない。そして人間を対象とした医療と同様に、獣医療においても皮膚に悩みを抱える患者は後を絶たない。
大阪府泉南郡にある泉南動物病院で院長を務める横井愼一先生は、皮膚科認定医として深い知識と経験を持って治療に当たるだけでなく、日本獣医皮膚科学会の理事も務めるなど多忙な日々を送っている。
今回はそんな横井先生に、これまでの自身の獣医師としての歩み、皮膚科診療の現状や今後の展望についてのお話を聞かせていただいた。

contents 目 次

初めに、横井先生が獣医師を志したきっかけについてお話を聞かせてください

今思い出してみるときっかけは二つあったように思います。

一つは動物好きのタレントさんの密着取材の様子をテレビで観たことです。その方は北海道の牧場で牛や馬、犬や猫など多くの動物に囲まれてお仕事をしていたのですが、その姿に憧れて将来は動物に関わる仕事をしたいと思いました。

そして、二つめは子供の頃に飼っていた犬を亡くしたことです。生まれつき後ろ足が不自由な子だったのですが、身体の不調により連れて行った病院でそのまま亡くなってしまいました。愛犬を亡くしたことがきっかけで、私も動物の病気を治せるようになりたいと強く思うようになりました。

横井先生が獣医師としてやりがいを感じるのはどんな時でしょうか

やはり動物が元気になってご家族と一緒に帰っていくときでしょうか。

体調が悪かった動物が当病院の診療を受けることによって、徐々に元気になっていく姿をみるのはこの上ない喜びです。私自身も大好きな動物達を、自分の手で元気にできることが大きなやりがいになっていますね。

動物のご家族から労いのお言葉をいただくこともありますが、一日中大好きな犬や猫に囲まれながら過ごせる夢のような仕事だと思っています(笑)。

横井先生は皮膚科診療について深い見識をお持ちと伺っています。普段診察の機会が特に多い症状はどういったものでしょうか。

皮膚疾患の中ではアレルギー性皮膚炎、中でもアトピー性皮膚炎が多いです。特に当院ではフレンチ・ブルドック、柴犬のアトピー性皮膚炎でお困りの方に多く来院いただいております。 犬のアトピー性皮膚炎の原因は人と同様に、ハウスダストマイトと呼ばれる家の中で発生する埃の中に潜んでいるダニがバリア機能の低下した皮膚から体内に入り込むことにより、異常な免疫反応を発生させることで起こります。多くは6ヶ月から3歳以下で初めて発症し、強い痒みを伴うという特長があり、気温と湿度が高い梅雨から夏にかけて家の中のダニの数が増えることで症状が強く出ます。

また、痒みが良くならない原因に食事が関係しているとお考えのご家族も多いようですが、犬のアレルギー性皮膚炎の中で食べ物が原因となっているのは、全体の20%程度存在します。近年、犬アトピー性皮膚炎の治療薬として発売されたアポキルという薬剤が効かない理由に食事が関連しているケースにもよく遭遇します。

そういった皮膚疾患には犬種や猫種によっても症状の違いがあるのでしょうか

犬アトピー性皮膚炎は遺伝することがわかっていますので、日本犬では柴犬、そしてフレンチ・ブルドック、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、シー・ズーなどの純血種での発症率が高いです。一方、猫のアレルギー性皮膚炎は犬と同様、ノミ、蚊、食事などが原因になることは同じですが、いわゆるアトピー性皮膚炎の原因はわかっていません。またその皮膚症状も犬と違い多彩です。

アトピー性皮膚炎の治療は、具体的にどのような方法で行われるのでしょうか?

治療方法は多岐に亘ります。一般的には即効性の高いステロイドを使用しますが、長期の服用で皮膚が薄くなったり、筋肉量低下などの副作用が認められる場合もあり、定期検査が必要です。一方で、コストがかかりますが、人に先行して発売されたアポキルという薬は、ほぼ副作用がなく長期に渡り投薬が可能です。近年ではアレルギーの原因であるハウスダストマイトから抽出された液を注射することによって、抵抗力を身体につけ、体質を変える減感作療法も効果があります。これらの治療にはいずれもメリットとデメリットがあり、ご家族とよく相談した上で治療法を決定します。

それ以外に重要なのは外用療法とスキンケアです。薬用シャンプーを定期的に行うことで、皮膚の上のダニの数を少なくするだけではなく、マラセチアやスタフィロコッカスなど皮膚の上で増えすぎた菌を減らし、日々の投薬量を少なくすることも可能です。特に犬の皮膚も冬は人と同じように乾燥しますから、保湿剤による毎日の保湿も大切です。また、皮膚のコンディションを整えるサプリメントを提案する事もあります。こうして時間をかけて、ご家族と協力しながら、内と外から少しずつ症状を改善させる努力をします。

将来的に皮膚科診療がさらに変化・発展していく展望について、横井先生のお考えを聞かせてください

アトピー性皮膚炎を始めとした皮膚疾患の中には、完治が難しい病気が幾つかあります。現状ではそのような症状に対しては毎日薬を服用することによって症状をコントロールすることが多く、ご家族や動物には大きな負担になっていますが、近い将来には服用頻度を減らすことができる薬の開発など、ご家族と動物に対して、より一層手軽で優しくなることは間違いないと思います。

最後に、この記事をご覧になる動物のご家族へメッセージをお願いします

動物病院と聞くと、「ちょっとしたことで来院するのは敷居が高そう…」とお考えの方がまだまだ多いのではないかと思います。

当院では初めて病院を利用される方にも安心して頼っていただけるような場所となるよう、お気軽に来院いただき、些細なことでもご相談いただけるような診察を心がけております。ご来院いただいた際には、動物とその家族が一緒に健康で長生きできるように様々な面で最大限のサポートをいたします。また、診療は勿論ですが、仔犬のしつけ教室、普段の予防や健康診断にも力を入れております。