院長/吉内 龍策 へのインタビュー (1/3)

院長/吉内 龍策 へのインタビュー (1/3)

吉内 龍策YOSHIUCHI RYUSAKU

「人と動物の絆」を何よりも大切にし、様々なサポートを実施しています。

人と動物の関係は時代の流れとともにその姿を変えてきた。両者を繋ぐ絆がさらに色濃くなるに伴い、動物医療に求められるレベルも向上の一途をたどってきた。1980年に大阪市平野区に開設された南大阪動物医療センター(旧名:吉内動物病院)はその時代の過渡期の中で、飼い主と動物たちの生活を支え続けてきた動物病院だ。
この病院の院長を務める吉内龍策先生に、自身が胸に抱く動物医療への思い、高度医療の在り方、今後の展望などのお話を聞かせていただいた。

プロフィール

所属 / 役職
  • 南大阪動物医療センター / 院長
所属学会
  • 獣医麻酔学科学会、獣医循環器学会、獣医画像診断学会、獣医がん学会
経歴
  • 山口大学卒業後、大阪府立大学附属病院の研究生となる。修了後すぐに開業。開業後30年で社会人大学院生となり博士号取得。
    現在は診療に携わるかたわら、公益社団法人大阪市獣医師会の会長を務める

インタビュー

  • まず初めに吉内先生が獣医師を志したきっかけを教えてください

    もともと自宅が農家で犬や猫、耕作用の牛などを飼っていたこともあり、幼い頃から動物は身近な存在でした。ある日、自宅で飼っていた犬が事故に遭ってしまったのですが、そのときに連れて行く動物病院が自宅周辺になくて困ったという経験があります。そのことが獣医師を目指す大きなきっかけだったと思います。
    この地域で飼われている動物に何らかのアクシデントが起こった際には、すぐに診療してあげられるような獣医師になりたいと中学生の頃には思っていました。その後、幸いにも獣医師になることができましたので、自宅を改装しこの地域の動物たちとそのご家族のために動物病院を開設しました。

  • 獣医師になってやりがいを感じるのはどのようなときですか

    それはもちろん、ご家族の皆さまに喜んでもらえたときですね。人と動物の寿命を考えると、基本的には動物が先に天寿を全うします。つまり、獣医師は動物を一生涯にわたって診させていただくことになるのです。初診時には子犬だった子が成長して成犬になり、やがて老いていきます。その過程において様々な病気やケガを治療し、感謝もされ、その動物に対する深い思い入れが生まれます。そして最終的には最期を看取ることになるのです。ご家族の皆さま同様悲しみに沈みつつも、「ありがとう」の言葉をいただいたとき、獣医師の使命を果たすことができたという安堵感に浸ることができるのです。

  • これまでのご経験の中で特に印象に残っている出来事はありますか?

    昔の話ですが、当病院に慢性腎不全の猫が来院しました。食欲が全くない状態で、ご近所の病院で点滴を長期間受けておられ、根本的な治療法がないこともご存じで、もう先が長くないと諦めかけておられました。腎不全の終末期を迎え、施すべき治療もそう多くはありません。
    この子にどんなことを望んでおられるのですかとお尋ねすると、もう一度だけご飯を食べさせてあげたいと仰ったのです。注射器に高栄養の缶詰のパテを詰めて食べさせてあげても良いですかとお聞きして試してみました(専門的には強制給餌といいます)。
    するとどうでしょう、全く食欲がなさそうに見えた子が、口を動かし缶詰を美味しそうに食べてくれたのです。それから幾日もご飯を食べさせてくださいと猫ちゃんを連れてこられたのでした。
    腎不全に対し水分と電解質を補給する点滴も大切な治療ですが、動くためのエネルギーや体蛋白の維持のために食物を給与することも同じくらいに大切です。最近では消化管を動かすことが免疫力を維持する上で大きな役割を果たしているともいわれています。何よりチューブを胃に入れて栄養を流し込むのではなく、口を動かして物を食べるという自然な行為は、その後の舌でペロリと唇をなめる「美味しい口」と称される満足気な仕草につながります。この経験がきっかけでもうひと汗かくプラスアルファの治療を心掛けるようになり、強制給餌を希望される方もずいぶんと増えました。そのときの猫ちゃんとお母さんの嬉しそうな表情は生涯忘れることができません。