Veterinarian's interview

インタビュー

生涯を背負い、飼い主さまに任せていただけるそんな町医者でありたい 生涯を背負い、飼い主さまに任せていただけるそんな町医者でありたい

生涯を背負い、飼い主さまに任せていただけるそんな町医者でありたい

おさむら動物病院

長村 徹院長

大阪府 寝屋川市

おさむら動物病院

長村 徹院長

大阪府東部大阪地域に位置する人口約23万人の寝屋川市。公園が多いのが特徴の一つで、一息つける安らぎの場所を様々なところに展開している。また駅周辺は賑わいを見せつつも、田んぼが残る地域でもあるため“都会過ぎず、また田舎過ぎないのんびりした住みやすい町“として、あらゆる世代が暮らしている。そんな寝屋川市で愛犬・愛猫の健康をサポートしてくれるのが、おさむら動物病院だ。 「物心ついた頃から常に犬や猫がいた」と話す院長の長村先生は、来院される多くの動物たちを家族のように想い、救いたいという熱い気持ちで現場に立っている獣医師の一人である。今回、動物たちのことなら時間を惜しまない長村先生に獣医師としての在り方、そして動物たちに対する思いを赤裸々に語ってもらった。

contents 目 次

獣医師を目指したきっかけを教えてください

物心ついた頃から自宅に愛犬・愛猫が傍にいたので、私にとって犬や猫は家族の一員でした。そのため、将来は自然と“獣医師になりたい”と思うようになっていましたね。

長村先生にとって理想とする医師の在り方があれば教えてください

医師として理想としているのは、小さい頃お世話になった小児科の先生ですね。祖父母、両親、私の三世代に亘りお世話になっている先生なのですが、行くと必ず「家族の調子はどうや?」と、家族一人一人について親身になって心配してくれるんですよ。

これが本来あるべき町のホームドクターなのだなと思うと、私も一人の医師として見習わなくてはいけないなと、身が引き締まる思いになります。

獣医師として一番大切にしていることはありますか

1857年に江戸幕府が招いた最初の外国人医学教官として長崎に来日し、医学を教えたポンペという医師がいました。彼が残した言葉の一つに「自分の人生を二の次にできないと、医師としての資格はない」という言葉が残されているのですが、私も獣医師は自己犠牲の上に成り立つ職業だと考えていますので、常にそれを意識して現場に立っています。そうでなければ命を助けたり、病気に向き合ったりすることはできません。

例え、手術が深夜遅くまで長引いたとしても自分の予定をできる限りキャンセルしてでも取り組みます。それが獣医師としての定めだと思っています。完全にはまだできていませんが、いつも大切にしている言葉です。

長村先生の獣医師としての熱い思いが凄く伝わってきます。長村先生にとって忘れられない思い出はありますか。

私が獣医師になりたての頃に、夜遅く椎間板ヘルニアの緊急手術が入ったとき「疲れたし、次の日は予定入っているのに…」と心の中が憂鬱な顔として表れてしまったのでしょう。先輩獣医師から「眠いのは今日だけやろ!犬は今手術せんかったら、ずっと歩くことはできないんやで!」と喝を入れられた時は、自分の愚かさに恥ずかしくなりました。

長い人生のほんの一部を辛抱すれば、多くの動物たちを救えるチャンスがありますし、獣医師としてプロ意識を持って仕事をすることがどんなに大切なのかを学ばされた出来事でしたね。

獣医師として気持ちの変化が起きた出来事だったのですね。長村先生は獣医師を長年務めていらっしゃるなかで嬉しかったことはありますか。

当院に通っていただいていた飼い主さまからお手紙をいただくことがあります。その中で「おかげさまで長い時間を一緒に過ごすことができました」「あの子も幸せな気持ちで天国へ旅経ったと思います」などの手紙をいただくことがあります。

その時は凄く嬉しいですし、とても元気づけられますね。なんだか「いつまでも頑張りなさいよ」とエールをいただいている気持ちになります。今は経営者としての立場ではありますが、こうしてお手紙をいただくと純粋な気持ちにさせてもらえますので、今も大事に手紙を保管して時々読み返しています。

日々の診療において、飼い主さまに対する接し方で気をつけていることはありますか

飼い主さまの考え方は千差万別で中には「痛い思いはさせたくない」「麻酔をする際のリスクが怖い」など、積極的な治療を望まれない方もいらっしゃいます。それも飼い主さまにとって飼っている犬や猫に対して十分に考えられた愛情表現の一つですから、考え方に正解・不正解という文字はないと思っています。ただ、こちらの説明不足や飼い主さまのご理解が得られないまま最期を迎えてしまうのは、どちらにとっても後悔だけが残ってしまいますので、治療方針や手術をする際は、わかりやすい説明ができるように徹底して努めています。

その際、時には厳しいことを言うことがあるかもしれませんが、動物たちにとって獣医師という存在が最後の砦になる時もあります。何よりも一番は動物たちの命を救うこと。彼等の幸せのためなら例え飼い主さまにはお辛い判断になってしまうかもしれませんが、私自身が飼い主さまの一人になる思いで、一緒に悩み続け、日々真摯に飼い主さまと向き合っていきたいですね。

“命を救うこと”に対する情熱が長村先生を動かしているのですね。長村先生は『犬の名医さん100人データブック(小学館)』に掲載されている獣医師の1人であり、椎間板ヘルニアについても注力をいれていらっしゃいますよね。この病気はどんな動物に多いのでしょうか。

椎間板ヘルニアを患うので最も多い動物は『ダックスフント』ですね。理由としては、遺伝的に椎間板の髄核が石灰化を起こしやすい犬種であるためと言われています。発症年齢としては4~6才や10才ぐらいがピークですが、ダックスフントに関しては2才ぐらいから発症することもあります。

発症するとどのような症状が見受けられるのでしょうか

症状は大きくわけて二つあります。時間をかけて少しずつ進行するパターンと、腰が抜ける、後ろ足が動かない、引きずるといった症状が突然引き起こすパターンです。初期段階では、2~3日で痛みが収まるので、飼い主さまも「大丈夫だろう」と病院へ連れて行かないことが多いのですが、このとき無理に散歩へ連れて行ったり体を動かしてしまったりすると、脆くなっている椎間板が神経をさらに圧迫して足が動かず麻痺を起こしてしまいます。

一時的な障害であれば手術で良くなることもありますが、神経細胞が死んでしまうと車いす生活を余儀なくされてしまいます。

手遅れにならないようにするためには、どうしたら一番良いのでしょうか

何よりも早期発見・早期治療が一番大切です。重症になると1時間でも早く手術をすることが望ましいです。もし愛犬の後ろ足が「動かない」「引きずる」「ふらつく」「力が入らない」といった症状が見受けられましたら直ぐに受診していただきたいですね。

当院では、例え診察終了後の夜中でもなるべく対応できるように体制は整えていますので、少しでも愛犬に違和感を覚えたら当院までご連絡いただきたいと思います。

寝屋川市動物愛護推進協議会の代表を務めていらっしゃるとのことですが、どのような思いでこの活動を続けていらっしゃるのですか

全国では、毎年何万匹もの犬や猫が殺処分をされています。2016年度の大阪府では2,261匹もの犬や猫が殺処分されていると報告が上がっています。一匹でも多くの命を守りたい思いから、寝屋川市は譲渡会を開催して新しい飼い主さまを探せるよう活動を始めたばかりです。また当院でも、待合室のテレビモニターで里親さんを探している犬や猫たちの映像を流して呼びかけを行っています。

寝屋川市愛護推進協議会でも、学校やボランティア団体の方、行政担当者と会合を開き「寝屋川市でできること」を模索しながら殺処分ゼロ活動ができるよう頑張っております。近い将来、どの町へ行っても動物たちが幸せに暮らしている姿が見られる世の中にしていきたいですね。

EPARKペットライフをご覧の飼い主さまへメッセージをお願いします

犬や猫の寿命はヒトと比べると大変短いものです。その中で小さい頃から天寿を全うするまで、一生涯を背負い、飼い主さまに任せていただけるそんな町医者になることが私の責務だと考えています。

また、動物病院に通院される子たちももちろんですが、地域の犬や猫が安心して過ごせるそんな動物病院と町づくりを微力ながら目指していきたいと思っていますので、どんな些細なことでも気兼ねなくご相談ください。

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