Veterinarian's interview

インタビュー

ホームドクターと共に歩む二次診療施設 ホームドクターと共に歩む二次診療施設

ホームドクターと共に歩む二次診療施設

JASMINE どうぶつ循環器病センター

上地 正実センター長

JASMINE どうぶつ循環器病センター

上地 正実センター長

国内でも有数の、循環器系の二次診療施設である JASMINEどうぶつ循環器病センター。
横浜市営地下鉄ブルーライン中川駅から徒歩数分の位置にあるこの病院には、心臓、腎臓や呼吸器の病気を抱えた多くの患者さまが全国各地から訪れる。
今回はここ、JASMINEどうぶつ循環器病センターのセンター長、上地 正実先生に循環器系の病気を治療するにあたっての取り組みや二次診療施設に対する思いを伺った。

contents 目 次

診療時に、飼い主さまとの対話の中で心がけていることはありますか?

当院に来られる患者さまの殆どが、かかりつけの先生のところである程度問題点を把握されていると思いますが、現状の問題点に関してのお話を再度お伺いし、今後はどういった方向で治療していきたいのか、診察していきたいのかを聞くようにしています。

やはり高度な治療を行おうとすると、それには高価な機械や材料を使う必要が伴ってくるんですね。当然、一次診療の時に比べて治療費もかかってしまいます。そういった点も考えながら、飼い主さまのご要望を汲み取り、幾つかの選択肢を提示した上で、飼い主さまにとって最良の治療法を決めていただくようにしています。

心臓を患っている子は短期間で症状がどんどん悪化していってしまう恐れがありますので、短い期間の間でなるべく早く決断してもらって、やるならどういうことをするか、やらないなら今後どのように管理していき、どういう点に注意していくべきかをしっかりお伝えするようにしています。

より専門的な治療をご提案する際に配慮している点はありますか?

治療方法を説明する時には、より内容が伝わるよう専用のフォームをご用意していますので、そこで内容を丁寧に確認していただきながら、項目を一つずつご説明します。そのフォームには書いていない部分についても、飼い主さまのご要望に合わせて、内容を付け加えてご説明しています。

上地先生にとって二次診療とはどういったものだとお考えですか?

近年、動物医療も大きく進歩し、それに伴って獣医師が全ての治療を担当することが難しくなってきました。各診療科でそれぞれの進歩があるので、そういった状況の中で専門的に機材とスタッフを揃えて、一般の動物病院では手が出せないような病気の治療に関してしっかりと受け入れ態勢を作り、支えていくことが二次診療では大事だと考えています。

それと同時に、ホームドクターとの連携が動物と飼い主さまにとって最善の診療に繋がると思いますので、常に情報交換を行って動物の状況を把握しベストな治療法を提供していくことこそが二次診療のあるべき姿だと思います。

犬や猫ではどういった循環器の病気が多く見られますか?

犬の場合は心臓弁膜の病気が多く、これに関しては北海道から沖縄まで、治療を希望される飼い主さまが全国からいらっしゃいます。特にチワワの割合は半分を占めていて、犬種によっても発症率に違いが見られるんです。

お薬でも治療が可能で、それであればかかりつけの先生の元でも治療が受けられますので、当院でどういう薬が必要なのかを判断して処方し、かかりつけの先生と上手く連携を取りつつ治療経過を見ながら、その時の様子に合わせてお薬の種類を変えていきます。勿論、それだけでは治療が不十分な子もいますので、そういった子に関しては手術で対応し、できるだけ状態を良く保ち、長生きして貰うようにしています。ネコの場合は先天性の病気が多いのですが、実は一般の動物病院では年に一回目にするかどうかの珍しい病気なんです。

やはり、一番注力しているのは外科の部分でしょうか?

当院の心臓外科には人の病院で使用している物と同レベルの治療機器を導入し、高いレベルの手術を行える環境を整えています。ですが、それ以上に大事なのは手術前もそうですが、手術後もきちんと管理することなんです。手術後に、どれくらい回復させてあげるかが一番肝心なところになってきます。

それに対しては、手術後は我々病院スタッフが24時間体制で動物たちの様子を見て、退院した後もかかりつけの先生としっかり連携を取って、手厚いケアができるようになっています。入院している動物たちの様子は、午前中どういう状態だったか、バイタルは、ご飯は、便の様子は、投薬は誰がいつ行ったかが一つのシートでチェックできるようになっていて、携帯端末で各スタッフがいつでも、どこでも確認できるようになっているんです。手術の技術としてはかなり成熟したところまできていると思うのですが、術後にできるだけ元気にしてあげるところにも、より注力していきたいですね。

退院後のケアに関して教えてください

特に食事の管理に関しては注意を促しています。心臓の手術前は痩せて悪液質になっている子もいますが、手術後には元気になって食欲が出てきます。食欲が上がると、今まで以上に食べ過ぎて、太ってしまうことがあるんです。ある程度回復するまでは栄養、カロリーが必要ですが、充分回復した後は通常のカロリーに戻す必要があります。ですので、退院した後は食事管理に気をつけて欲しいですね。

また、必要な場合は、糖尿病のインシュリン治療と同じように、抗血栓薬をご自宅で飼い主さまに注射をしていただくこともあります。初めての方が殆どですので、病院内でレクチャーしていますが、実際にお家でやるとなると不安で、もう一度確認したいという方もいらっしゃいますので、いつでも注射の仕方が確認できるようにHP上に動画をアップしています。

心臓病の早期発見のためには、普段どういったところに注意して見ればいいでしょうか?

一番気づきやすいのは、お散歩に行った際に前よりも疲れやすくなった、歩かなくなったという様子が見られたときで、そういった場合はすでに心臓病の進行がスタートしている可能性があります。

もう一つ、病気だとわかっていないとなかなか意識して見ないかもしれませんが、寝ているときの呼吸にも注目してもらいたいですね。寝ているときの呼吸は通常ゆっくりなのですが、呼吸数が多い場合は心臓の病気にかかっているかもしれません。お散歩や就寝時にそういった様子が見られた場合は、早めに近くの動物病院で、聴診だけでも受けていただくことをおすすめします。

獣医師を目指したきっかけはどんなことでしたか?

小さい頃から動物が好きで、犬や猫に始まり、ハト、ジュウシマツ、文鳥、セキセイインコ、熱帯魚など今まで色々と飼ってきました。

高校生のときの進路相談で、動物関係のお仕事か、医者になりたいと担任の先生に伝えたところ「その中間で獣医師なんかはどうだ」と言ってくださったんです。それが獣医師を目指したきっかけですね。

実は、大学時代の卒業論文や大学院時代の研究テーマは、心臓病ではなく腎臓病に関してで、心臓病は殆どノータッチでした。大学院を卒業後、留学してアメリカに渡ったのですが、留学先の研究所が心臓病を研究している所で、そこから私の心臓病の研究が始まったんです。

今後の目標についてお聞かせください

現在は循環器病センターということで、心臓、腎臓、呼吸器と心臓周りの臓器を全部見られる体制を整えていますが、今後は腫瘍センター、眼科センターなど、他の診療科についても同じように二次診療が行えるような体制を整え、総合的にケアを行える病院にしていきたいと考えています。