Veterinarian's interview

インタビュー

飼い主さまのニーズに応えて進化していく地域に根差した1.5次診療の動物病院 飼い主さまのニーズに応えて進化していく地域に根差した1.5次診療の動物病院

飼い主さまのニーズに応えて進化していく地域に根差した1.5次診療の動物病院

浦安中央動物病院

周藤 行則院長

浦安中央動物病院

周藤 行則院長

千葉県浦安市の大通り沿いにある浦安中央動物病院は、この地で30年来の診療実績を持つ動物病院だ。1987年開院当時から、ホームドクターとして地域の飼い主さまに愛され続けている一方で、2015年には今まで積み重ねてきた知識、経験、実績を活かしながら、新たな高度獣医療の提供を行うことができる1.5次診療施設として生まれ変わった。現在では幅広い領域の疾病を診療するジェネラリスト(総合医)であると同時に、それぞれの分野に特化した獣医師がハイレベルな知識と高度な技術を提供している。勿論、常に飼い主さまとのコミュニケーションを忘れない診察スタイルは、昔と変わらない。
病院の屋台骨を支える周藤行則院長、周藤明美副院長、医療ディレクターの藤野泰人先生から、それぞれが標榜する獣医療について語っていただいた。

contents 目 次

早速ですが、まずは先生方が獣医師を志したきっかけを教えてください

周藤行則院長(以下院長):そうですね。元々動物が好きだったということは勿論ですが、亡くなった私の父が医療の道を勧めてくれたこともきっかけの一つです。私自身は、人の医者よりも動物が好きだから獣医師になると話していました。結局、獣医師になって困っている動物たちを助けるということが、父と交わした約束のようになってしまいました。

周藤明美副院長(以下副院長):学生の頃から生物学が一番好きで「ハムスター班」に入って飼育をするだけでなく、行動の実験などを行っていました。また、幼児期から犬や猫が身近にいた環境で育っていたことや、憧れていた先輩が獣医師になったという話を耳にしたことが、獣医師の道を志すきっかけとなりました。

藤野先生:私の場合は、小学生の頃に自宅で飼っていたキャバリアが心臓病と皮膚病を患った時に、愛犬が病気で苦しむ姿を見ていて胸に抱いた思いが直接のきっかけです。
また、将来について考えた時、社会に貢献できる仕事に就きたいと思いました。色々と自問自答を繰り返した結果、愛犬との悲しい経験のことを思い、獣医師になろうと決心しました。

こちらの病院(浦安中央動物病院)の成り立ちをお聞かせください

院長:当時、開業にあたって先輩方からアドバイスをいただいたり、自分で実際に街を歩き雰囲気を感じながら、ピッタリの場所を探していました。結果的に1987年3月に前身である、すとう動物病院を開業しました。ちょうど獣医学が黎明期にあり、主な臨床対象が大動物から小動物へ移行してくる頃でしたので、色々なことを勉強しながら、また、地域の人々に支えながら私たちも成長していきました。

副院長:近年では、小動物に対する飼い主さまの意識は当時と大きく異なり、自分のペットは家族の一員と捉えるようになっています。そのため、どういった病気でそれをどのように治療するのかを詳しく把握したい、治療に関してトータルに知っておきたいという飼い主さまが多くなってきました。

当医院では、飼い主さまのニーズにしっかりと対応でき、ホームドクターとしての役割と最新の治療技術による高度な獣医療を提供し、なるべく他医院に紹介しなくても、治療に専念できるよう、2015年に病院の形を変え、同時に病院名も浦安中央動物病院と改めました。

1.5次診療施設はどういった役割を担っていますか?

院長:最近の傾向では、その病院のキャパシティでカバーできない症例については、大学病院や二次病院へ紹介するのですが、中には、自分の診療に十分な責任を果たさず、全てを大学病院や二次病院の専門医に回してしまうというケースがあると耳にします。自分の実績などに傷をつくことを恐れ、難しい疾患に立ち向かっていく姿勢を回避してしまえば、獣医師の存在意義がなく使命を全うしていないことになります。また、頼ってくれた飼い主さまを結果的に裏切る形になります。

当院は、約30年続けてきた知識、経験、技術を活かし、診療の質の向上に日々努めています。私の姿勢としては、道なき道を進むことは、ある程度経験を積んだ獣医師の任務・義務だと思っています。そこで飼い主さまのニーズに合わせホームドクターとしての役割を持ちつつ、高度な獣医療の提供をトータル的に安心して受けていただけるよう、1.5次診療施設へと病院のかたちを変えました。これにより更に多くの命を救うと同時に、地域への貢献も行えると思います。また、当院獣医師もそれぞれが医療の最先端に立ち、技術などの習得を日々心掛けています。

院長の得意とする診療領域を教えてください

院長:診療スタイルとしては、幅広い領域の疾病を診療するジェネラリスト(総合医)を標榜しています。ジェネラリストとは、複数の分野においてある一定以上の高い知識と技術を持ち、自分の責任で適切に患者さまをマネージメントする診療を行うことができる獣医師のことを指します。実はジェネラリストという言葉は、私が研究生の頃に東京大学の外科の教授の口癖だったんです。当時はその先生の外科系診療科で内科系の勉強をやっていたのです。外科の医療を行うにしても、内科的な知識をある程度備えておかなければいけないという考えです。その先生の薫陶を受けたという面は大きいです。

加えて、私が診断を行う際に心掛けていることは、鑑別診断をどれだけ正確に行うかという点です。例えば、複数の病気を比較しながら特定する鑑別診断は間違いを犯すと治る病気も治らなくなってしまうのです。正確無比な「診断」は獣医師の命ですので、特に力を入れています。

副院長先生は皮膚科診療に注力されていると伺っています

副院長:一昔前は、皮膚科は広い意味での内科の一部と認識され、現代のように専門医はいませんでした。自分が大学の研究室にいたときに、ミエローマ(骨髄腫)という病気を持った子たちがいたことで免疫異常に興味を持ったことと、ステロイドの働きに興味があったことが、皮膚科に注力するようになった理由の一つです。

また、皮膚科は症状の回復の過程が目視で確認が出来ます。それにより飼い主さまにも安心していただけますし、自分も治療の成果が目に見えて現れると嬉しくなります。また、皮膚病は、アレルギー、アトピー、寄生虫、感染症、内分泌の異常から起きてくるものなど、様々な原因があり、それについて学ぶことは学問としてとても興味深いと感じています。

この度、犬アトピー・アレルギー免疫学会が設立され、第一回技能講習を受け合格した4名の中の1人として「犬アトピー・アレルギー免疫学会 技能講習履修獣医師」の資格を取得しました。

藤野先生にお聞きします。内科を専門として力を注ごうと考えたきっかけは何ですか?

藤野先生:例えば、吐き気、下痢、元気が無いといった異常の症状には、必ず原因があるわけです。その原因をはっきりさせることで、適切な治療に結びつくわけです。では、原因をはっきりさせるためには何をすれば良いかを考えたとき、臨床病理学を学ぶことがその近道になると思い至ったことが大きなきっかけです。

臨床病理学の研究室におられた先生と、多くの病院を廻る中で気がついたのが、対処療法を行っていても、原因療法をやっているケースが少ないということです。例えば、腹痛という症状が出た場合、その腹痛には必ず原因がありますが、その原因を追究することなく、治療を行っているケースが多かったのです。病気の根本となる原因の詳細を把握していないにも関わらず治療をするということは、小さな命を預かる獣医師として、好ましいものではありません。臨床病理学に基づいた専門診療は絶対的に必要だと考えています。

臨床病理学に基づいた専門診療の必要性とは?

藤野先生:根本的な病気の原因を解明することで、それぞれの患者さまに、より一層合った診断法を確立でき、適切な治療を提供していくことができますので、病気が治る近道に繋がっていきます。
当たり前のことですが、私たちは動物たちの病気を治すことを常に考えています。

臨床病理学は、病気に対してどう診断していくのかという学問です。診断は飼い主さまと動物の状況によって同一のケースは存在しません。常に私たちが向上心を持ち、新しい獣医療を日々学び、実践していかなくてはいけないものだと思っています。

皆さまの今後の目標についてお聞かせください

院長:今後の目標は、今と変わりません。動物を少しでも多く救うこと、そして社会貢献、どんな症例を持つ子が来院しても的確に診断すること、他の病院に紹介をしなくても当院で病気を治せるようにしたいということです。目標に向かって努力し続けていれば、自分の知識や技術等がレベルアップしていきますので、これからも地域のホームドクターとして、また、より進んだ専門診療が提供できるジェネラリスト(総合医)として、しっかりと努めていきます。
あとは…ゴルフで、スコア100を切ることです(笑)。

副院長:これからも、最適な医療を提供していくことを常に考えていきたいと思います。また、私たちが得てきた知識、症例、診断法や治療法などを活かせるように、例えば、執筆者の一人で参加させていただいた『獣医臨床のための免疫学』(学窓社)の本のように、何か一つにまとめて、若い獣医師たちに伝えていければと思っています。獣医学にはまだ解明されていないことも多いので、これからも様々な病気について学び、皆さまにフィードバックしていきたいと思います。

藤野先生:迅速かつ的確に病気の原因を判断し、適切な治療の提案を行えるよう、自らの技術と知識をフルに使い、求めている飼い主さまに提供することです。また、自分の技術や知識を求めている他の獣医師にも提供することです。獣医療の発展に幾らかでも貢献できる獣医師でいられるよう、日々努めていきます。