Veterinarian's interview

インタビュー

ペットの身体への負担を考慮し、できるだけお薬に頼らない治療やスキンケア治療を心がけています ペットの身体への負担を考慮し、できるだけお薬に頼らない治療やスキンケア治療を心がけています

ペットの身体への負担を考慮し、できるだけお薬に頼らない治療やスキンケア治療を心がけています

クッキー動物病院

小細 浩身院長

クッキー動物病院

小細 浩身院長

慢性的な症状として治療に時間を要すると言われる病気の一つに、皮膚疾患がある。アレルギーを初めとした多くの原因が存在し、根治への道のりが険しい病気として多くの動物と飼い主を悩ませている疾患だ。
大阪府堺市北区にあるクッキー動物病院では、獣医皮膚科学会認定医としての正確な診断及び皮膚治療をベースとして、その上で可能な限り薬を減薬する独特のアプローチを実践することで、皮膚疾患に対して素晴らしい成果を出している。院長を務める小細浩身先生が標榜する治療の幅の広さ、皮膚疾患に対するアプロ―チの手法、他の医院と一線を画す治療への考えについてご紹介する。

contents 目 次

小細先生は皮膚科診療に注力されていると伺っています。近年で増加傾向にある皮膚疾患の症状はどんなものがありますか?

以前に比べて飼育環境や食事環境が変化していることが関係していると思いますが、当医院にやってくるペットの3匹に1匹は皮膚症状を呈し、その多くがアレルギーやアトピーなどを基礎疾患として持っています。

アレルギーと一括りでよく表現されますが、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、ノミアレルギーなど幾つもあり、様々な種類のアレルギーについて悩んでいるペットが一定数いるという訳です。割合で言うと、やはりいわゆるアトピー性皮膚炎で困っているペットが多いように感じています。

ペットの皮膚疾患に関して、どのような治療を提供されていますか?

当医院ではペットの皮膚疾患の治療に関して、本院であるクッキー動物病院では薬物療法を始めとした医学的治療を行い、院内施設のドルチェでシャンプー療法やサプリメント療法などのメディカルスキンケアを実施しています。

当医院の皮膚疾患の治療に対する考え方は、ペットの状態や症状に合わせて医学的治療とメディカルスキンケアを適切に組み合わせた治療を提供するということです。大まかにいえば、薬物治療はどうしてもその必要があるペットに対してのみ、適度な分量で処方しつつ、メディカルスキンケアの併用によって徐々に使用する薬物の量を減らしていくイメージで捉えていただくとわかりやすいのではないかと思います。ちなみに、本院とドルチェは同じ建物の2階と3階にありますので、ペットや飼い主さまにも気軽に行き来していただくことができます。

2種類の治療を適切に組み合わせるということですが、もう少し詳しくお話を聞かせてください

それでは、まずは本院で行っている医学的治療からお話ししますね。医学的治療は大きく分けると、「西洋医学的治療」と「統合治療」の2種類に分類されています。内科的治療では抗アレルギー剤やステロイド剤、抗菌剤などの飲み薬や塗り薬などを基本とした治療を実施しています。

いわゆる西洋医学に基づく治療と考えていただければ良いと思います。それに加えサプリメントや、ペットの自己治癒能力を最大限に引き出すことができるように、オゾン療法やプラセンタ療法などを実施しています。さらに、アレルギーで困っているペットには東洋医学の考え方を取り入れて、中医学による治療も実施しています。

小細先生の、お薬の使用に対する考え方を教えていただけますか?

例えば、人間の皮膚疾患に対して薬物治療を実施する際には塗り薬などの外用薬を使用することが多いと思いますが、体毛があるペットには基本的に外用薬を使用できませんので、どうしても飲み薬を中心とした処方になります。勿論、飲み薬が駄目だというつもりは毛頭ありませんが、身体に取り込む際の副作用を気にされる飼い主さまが多くおられるのも事実です。

そこで当医院では治療の初期段階において、どうしても必要なペットに関して飼い主さまとのご相談の上で必要なお薬を躊躇わずに使用することをお勧めしています。その後、症状のコントロールが安定した段階で統合治療やスキンケアなどを併用することによって、段階的にお薬の使用量を減らしていくことを目指しています。

内科治療と並行して行うメディカルスキンケアは、具体的にはどのような方法で行われるのでしょうか?

クッキー動物病院の分院(ドルチェ)で行うのは、独自に開発したメディカルスキンケアで、具体的には「ジャンプー療法」「サプリメント療法」「食事療法」の3つを組み合わせた治療法です。基本的な考え方としては、お薬にできるだけ頼ることなく、身体の外側と内側の両方からのアプローチによって皮膚疾患やアレルギーを治療することを目的としています。メディカルスキンケアに関してはお薬を一切使用せず行うため、副作用が心配な飼い主さまでも安心してお試しいただくことができるのが大きな特徴です。

2つの全く違う方法でのアプローチということですが、特に先生が注力して取り組んでおられるのはどちらの治療でしょうか?

そうですね~…。当医院ではお薬を使用しない治療方法の選択肢が多いことが特色の一つですので、後者のメディカルスキンケアについては他病院よりも力を注いでいると思います。事実、皮膚疾患に対する治療にはステロイド剤が必須だと考えている方が多いのではないかと思います。ステロイド剤はよい薬だと思いますし、当医院でも治療に登場するお薬です。

しかし、副作用の問題が取沙汰されていることもあり、使用に不安を覚える飼い主さまもおられると思います。そのため、当医院ではお薬の使用量を最小限にするために、様々な治療方法をご提案するための態勢を整えていて、その一つがメディカルスキンケアです。シャンプー、サプリメントなどを独自開発することによって、ペットの身体に負担をかけない治療を目指しています。

他にも、腹腔鏡による避妊手術も実施されているそうですね

腹腔鏡を使った避妊手術も当医院の特色の一つです。避妊手術は多くの方が認識されている通り、子宮や卵巣を摘出する手術なので、一般的には開腹した状態で手術を実施するケースが殆どだと思います。しかし、近年では開腹手術によりペットの身体にかかる負担を不安視する飼い主さまは増加の傾向にあり、そのような飼い主さまのご希望にお応えするため、当医院では避妊手術に腹腔鏡を導入しています。

身体の数カ所に5mmほどの穴を開け、その穴からカメラや手術器具を挿入してモニターを見ながら実施する方法で、小さな穴を開けるだけですので痛みが少なく、臓器が空気に触れないことにより術後の癒着や胃腸への負担を避けるといったメリットがあります。

クッキー動物病院で行われている特徴的な施術は、動物への負担の排除が根本的なお考えなのですね

そう思っていただけると嬉しいですね。これは私個人の考えですが、例え医学的に正しい治療があったとしても、ペットや飼い主さまが望んでいない治療を無理やり実施するのは正しい獣医療ではないと思っています。したがって、当医院では飼い主さまの治療に対する希望や不安などを、しっかりと汲み取るためにコミュニケーションは非常に重要であると考えています。

特に皮膚疾患は治療に時間がかかることもあり、飼い主さまが治療に対するモチベーションを維持することが困難になる期間もあります。飼い主さまを心理的な面でもサポートできるよう、治療面や環境面においても様々な取り組みを実施しています。

今後、獣医療がどう進化していくと考えておられますか?

難しい質問ですね(笑)。

これからの動物病院は、ペットの身体に関する日常的なお悩みに対して飼い主さまの身近な立場で対応する「一次診療」と、専門的で高度な治療を担当する「二次診療」とがはっきりと別れていくのではないでしょうか。まさに人間相手の医療機関のように「ペットに関する地域のかかりつけ医」のような立ち位置の病院が増えていくと思います。言うまでもなく、その際には一次診療と二次診療の連携が重要になってきますよね。

この記事をご覧になる飼い主さまに対してお伝えしたいことがあればお願いします

当医院では飼い主さまの大切なペットの身体的負担を考慮した「身体に優しい治療」に取り組んでいます。残念ながら皮膚疾患は短期間に完治するような病気ではなく、根気よく上手にコントロールしながら付き合っていただくことが必要です。

だからこそ当医院ではお薬を使った治療だけに頼るのではなく、様々な方面からアプローチする治療を実施しています。適切な治療を施すことによって、皮膚疾患は概ねコントロールできることは間違いありません。皮膚疾患でお悩みの飼い主さまは、ぜひ私たちにご相談ください。