Veterinarian's interview

インタビュー

動物好きな人も動物が苦手な人も、全ての人が楽しく過ごせる環境があってこその「幸せな社会」です 動物好きな人も動物が苦手な人も、全ての人が楽しく過ごせる環境があってこその「幸せな社会」です

動物好きな人も動物が苦手な人も、全ての人が楽しく過ごせる環境があってこその「幸せな社会」です

みなとおおほり動物病院

佐藤 祐院長

みなとおおほり動物病院

佐藤 祐院長

活気の溢れる福岡市中央区大手門に2015年に開業したみなとおおほり動物病院。この地域に根を下ろし、人と動物が寄り添える地域社会を作ることを目指していると話すのは、院長を務める佐藤祐先生だ。
獣医師の役割、医療の在り方、そして自らが生まれ育ったこの街への地域愛を語る横顔は明るく、言葉の端々からは一人の獣医師、一つの病院が持つ大きな可能性を感じることができた。

contents 目 次

初めに、佐藤先生が獣医師を志したきっかけについてのお話を聞かせてください

よくある話ですが、一言でいえば「動物好きが高じて」ですかね。

大学から仕事を選ぶ段階では公衆衛生の分野や製薬会社、公務員、あるいはそのまま大学に残って、研究を続けなど様々な選択肢がありましたが、迷っていた時期に研修で動物病院へ伺ったことが、小動物の臨床の道に進む転機となりました。

短期間ではありましたが、様々な動物と飼い主さまと向き合って貴重な体験をしたと思います。研修先の動物病院では、動物と共に生活することの喜びや悲しみなど本当に色々な感情に触れた気がします。それを目の当たりにして、幸せな生活とは何かを考えるようになりました。

今でもそれは私自身の根底にあって、人も動物も皆が幸せになれるよう、サポートできる獣医師になりたいと思っています。

ご開業にこの地域を選ばれたのには何か理由があったのでしょうか?

理由は色々ありますが、私自身がこの街で育ったことが大きいと思います。小学生から高校生の時期までこの街で暮らして、北海道の大学を卒業した後にまた戻ってきました。知り合いも多いですしね。

どこへ行くにも便利が良くて、中心街にも近い。住宅街もあって、温かみがある、本当に住みやすい街なんです。病院の目の前が公園だというロケーションも、とても気に入っています。子供が遊んでいる風景はもちろん、犬の散歩風景なんかもよく見ることができますよ。

これまでのご経験の中で、特に印象に残っていることはありますか?

こんなエピソードがありました!
…と、言えるほどのこともなくて申し訳ないのですが特別なことは何もありません(笑)。

それは何も印象に残らなかったという意味ではなく、どれもが大切な出会いだと思っているからです.別々の動物が同じ病気で来院したとしても、状態は一人一人異なりますので同じではないのです。

私は日々の診療の中で、一人一人と真摯に向き合うことが重要だと考えています。だから、どれが特別でどれが特別でないという意識はあまり持っていません。これまでもこれからも、毎日の一つ一つを大切にしていきたいと思っています。

こちらの病院(みなとおおほり動物病院)ではどのような治療を実施していますか?

当院は、あらゆる病気やケガのケースに対応できることをコンセプトとして、よくある皮膚のトラブルから、目や鼻の症状、下痢や嘔吐、骨折やケガなど、幅広く対応できるように努めています。
まずは異常に気がついたら、できる限り早めに受診を受けていただければと思います。どのタイミングでどのような検査をするか、動物への負担を抑えた治療などそれぞれの見極めには長けていると自負しています。

特に麻酔にはこだわっていて、専門の顧問の先生を招いてスタッフへの指導や教育も行っています。より安全な麻酔を行えるように、そして動物への負担が少ない麻酔計画を立てられるように環境を整えていますのでご安心ください。年を取った老犬や体力面で不安のある動物へ処置もご相談いただければと思います。

佐藤先生は高度医療施設での診察経験もおありだと伺っています

高度医療センターの在籍していた頃は腫瘍科について専門性を持って治療に取り組んでいました。悪性腫瘍やがんなどの場合には、臨床施設で行ってきたことと同じケアができるように努めています。

治療の内容は、飼い主さまのご希望を優先して考えることがもちろんですが、私たち獣医師だけでなく飼い主さまにも、「もっと早くに気がついてあげられたら…」という思いがいつもあるように思います。

もっと早期に治療ができていれば…
病気のサインに気がついていたら…

そのように悔しい思いをしないためにも、定期的な健康診断をおすすめしていきたいと思っています。予防接種や相談に来院された際などをきっかけに、定期健診を始めていただければ幸いです。

日常生活における動物との関わり方について、飼い主さまへアドバイスをお願いいたします

動物たちとの生活において、重要なことは「よく観察すること」だと思います。動物たちの小さな変化は、一緒に暮らしている皆さまが一番気づきやすいからです。

例えば食事を与える時に、いつもだったら喜ぶはずなのに元気が無いように見えるのは何かの異常のサインかもしれません。そういった小さな変化を見逃さないためにも、普段からよく観察してあげてください。

動物たちは言葉を話すことができません。病気を抱えていても訴えることができません。何気ない仕草や鳴き方に病気のサインが表れていることもありますので、「いつもと違うな」と感じたらすぐに獣医師へ相談をすることが大切です。

今後の獣医療はどのように変化していくと思いますか

昔であれば、犬は番犬として家の外で飼うのが普通でした。それが近年では家族の一員として迎えられているケースがほとんどであると思います。マンションなどでも犬を飼えるところは多くなっていますので、室内犬として飼われている方も増加の傾向にあります。

そうすると、犬達にとっての社会は、家の中だけになってしまいがちです。しかし、子犬の頃から社会性を身に付けてあげるのも、大切なことなのです。他の犬や人の存在を知り、社会を知ること。そういった適切な環境を与えてあげることが、人と犬が幸せに暮らしていける環境であると言えます。

そしてそれをサポートしていく役割を、私たちが担うのではないでしょうか。獣医療は動物好きな人のためにあると思われがちですが、そうではないと思います。動物好きな人も、動物が苦手な人も、全ての人が楽しく過ごせる環境があってこその「幸せな社会」です。

社会性を身に付けていない犬や、放置犬や嚙みつき癖のある犬が増えると、動物嫌いな人は凄く困りますよね。そんな環境にならないように、動物たちの生活の在り方やしつけの部分において相談できる場所が必要だと思います。

病気やケガだけではなく、今後はそういった部分もサポートしていくことが必要になるのではないかと思います。そのために、私たちは小学校での動物ふれあい教室や、中学生の職業体験などにも積極的に取り組んでいます。

今後の目標について、教えてください

今後の目標としては大きく分けて二つあります。

一つ目は、地域に住んでいる動物たちの健康状態を良好に維持していくことです。そのためには、私たち獣医療従事者の知識や技術を磨くことも必要です。医療の世界は日々進歩していますので、10年前にはできなかった治療であっても、現在では可能なケースも多々あります。そういった新しい知識をアップデートしていくために、セミナーや勉強会に積極的に参加し、知識を吸収する努力を怠りません。

二つ目は、地域社会に貢献することです。医療に従事している自分たちの立場から地域に発信していくことで社会貢献できるように努めます。動物に関することだけではなく、地域の人々が幸せに生活できる社会を考えることによって皆さまと繋がっていきたいと思っています。