Veterinarian's interview

インタビュー

動物の小さな生命を守ること、飼い主の気持ちに添う、それが私たちの使命です 動物の小さな生命を守ること、飼い主の気持ちに添う、それが私たちの使命です

動物の小さな生命を守ること、飼い主の気持ちに添う、それが私たちの使命です

中山獣医科病院

中山 正成会長

奈良県 奈良市

中山獣医科病院

中山 正成会長

1974年の開業以来、地域の動物たちの健康な暮らしを支えてきた中山獣医科病院。この病院で会長を務める中山正成先生は、椎間板ヘルニアに関する研究・治療の第一人者としてその発展に携わり、現在ではさらなる治療を求め再生医療の実施・研究も積極的に行っている。
技術・知識の研鑽と共にあったこれまでの歩みとこれからの展望を話す中山先生の言葉は、その端々に一人の獣医師としての誇りを感じることができた。

contents 目 次

初めに、中山先生が獣医師を志したきっかけについてお話を聞かせてください

昆虫採集が趣味で生物全般が好きだったこともあり、子供の頃から「動物に関わる仕事がしたい」となんとなく思っていたように思います。当時は動物園の飼育員や昆虫学者などに憧れていたのですが、獣医師という仕事に興味を持ち始めたのは自宅で飼っていた犬がきっかけです。

飼い犬の体調が芳しくない時などは動物病院のお世話になっていたのですが、その動物病院で診察を担当していた獣医師の先生の姿がとても印象的で、私もあのような格好良い獣医師になりたいといつしか思うようになっていました。もしこの先生がいなければ、私は獣医師になっていなかったかもしれません。今考えてみても本当に強い影響を受けましたね。

獣医師としての日々の中で、やりがいを感じるのはどんな時でしょうか

命に関わる病気や症状で困っている動物を救えた時は安堵する共に充実感を得ることができます。また、当院は椎間板ヘルニアを発症した動物への治療を得意としていますが、来院当初、自力歩行が困難だった動物が徐々に歩けるようになっていく過程を見ていると「この仕事をやっていて良かった」と感じます。

開業当初は動物の椎間板ヘルニアに対応できる獣医師が少なく、治療できない病気だと言われていましたが、様々な研究や治療法が開発して治療できる病気になりました。私はその研究に携わっていましたので、椎間板ヘルニアには並々ならぬ思い入れがあります。

犬や猫の椎間板ヘルニアはどんな病気なのでしょうか

まず基本的に猫は体が柔軟な動物ということもあり、椎間板ヘルニアになる症例は非常に少ないと考えています。逆に犬の椎間板ヘルニアはミニチュアダックスフントやトイプードルなどの小型犬に発症するケースが多いとされていますが、シェパードなどの大型犬でも発症するケースが見受けられますので油断をすることは禁物です。

椎間板ヘルニアに対する効果的な予防方法は現状発見されておらず、特にフローリングのお部屋で暮らす場合に発症する可能性が高いと言われています。

椎間板ヘルニアの治療は、具体的にはどのようにして行われるのでしょうか

椎間板ヘルニアの治療として、飛び出しているヘルニアを取り除く外科的手術を実施するケースが一般的です。しばしば投薬で痛みを和らげる治療が実施されるケースもありますが、あくまで対症療法ですので根本的治療を目指すためには外科的手術が必要です。

また椎間板ヘルニアを効率的に治療するためにはヘルニアの部位特定が非常に重要であり、当院では部位特定をするために脊髄造影やCTなどを積極的に活用しています。

治療内容には術後ケアやリハビリテーションもあると耳にしたことがありますが…

ここでいう「動物リハビリテーション」とは椎間板ヘルニアなどで後肢まひや関節障害が残ってしまった動物に対して、元気な時と同じような生活を過ごせるように私たちがサポートすることです。

当院では、手術後すぐにリハビリテーションを開始し、約1週間の入院期間中に毎日実施することによって運動機能の早期改善を目指しています。動物は人と違ってリハビリテーションの意味や必要性が理解できませんので、リハビリテーション方法にも工夫が必要です。当院ではこれまでの豊富な経験を生かし、それぞれの動物に対して適切なリハビリテーションを実施することを心掛けています。

再生医療にも取り組まれていると伺っています。あまり聞きなれない言葉ですが、これはどのような治療でしょうか。

人の医療の中でも再生医療は21世紀の新しい医療として注目されています。当院では獣医療の世界にも再生医療を積極的に取り入れるべく、2002年に専用の細胞培養室を設置して京都大学との共同研究をスタートさせました。

数ある再生医療の中でも特に当院が注目しているのが、重度の脊髄損傷に対する脊髄再生治療です。脊髄損傷とは椎間板ヘルニアなどによって発症する症状で、症状が軽度であれば運動機能の早期改善も期待できます。重度の症状の動物には運動機能の改善を図るために、自身の骨髄から採取した細胞を培養して脊髄に注入する方法による脊髄再生を実施しています。

獣医療の今後の展望について、中山先生のお考えを聞かせてください

私は今後の獣医療に関してポジティブに捉えており、人の医療と並行するように獣医療もどんどん進歩していくのではないかと思っています。例え現時点では「治療できない」と言われている病気であっても、後進の先生方の研究によって治療できるようになるはずです。

一つの例を挙げるならば、これまで治療できなかった病気の一つにフィラリアがあります。しかし、現在では偉大な先生方の研究と努力によって予防法、治療法が確立されています。フィラリアの予防法が確立されたことによって犬の平均寿命を倍に延ばすことができました。本来ならニュースになっても良い大発見であるはずなのですが、世間ではあまり知られていないことが非常に残念です。

このページをご覧になる飼い主さまに向けて、初めて動物病院を訪れる際にしておくとよい準備などがあれば教えてください

できれば普段からその動物のお世話をしている飼い主さまに一緒に来院していただきたいですね。飼い主さまではなく、たまたま時間の都合が合ったご家族の方が一緒に来院されることが多いのですが、お話を聞いてみると動物の具体的な症状や飼育環境に関して詳しくわからないということがしばしばあります。

このような状況ですと適切な判断、治療をすることが難しくなりますので、動物を病院に連れてくる際には普段の状態と違う部分を説明できる飼い主さまに来ていただきたいと思います。そして、来院される際には大切なことを言い忘れることがないように、普段の飼育環境や質問事項などをメモにまとめて来院されることをお勧めします。

最後に、こちらの病院(中山獣医科病院)の今後についてお話を聞かせてください

当院は院長が田中宏先生に代わることも含めて、今後は大きな変化を迎えることになりそうです。新院長の田中先生は、獣医学博士、日本小動物外科設立専門医ですので知識も経験も豊富な獣医師であるだけではなく、当院に28年在籍して、飼い主、動物のこと、院内の全てのことを十分把握していますので、安心して後を任せることができます。

そして私自身は一歩引いた立場で、当院がより一層発展していくための様々なサポートをしていこうと考えています。当院は新院長の下でこれまで以上に一匹一匹の動物に対して真摯に向き合い適切な治療を提供していきますので、動物の健康に関するお悩みはお気軽にご相談いただきたいと思います。

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