Veterinarian's interview

インタビュー

猫ちゃんと飼い主さまとの穏やかで健やかな生活のために 猫ちゃんと飼い主さまとの穏やかで健やかな生活のために

猫ちゃんと飼い主さまとの穏やかで健やかな生活のために

猫の診療室

横山 幸絵院長

猫の診療室

横山 幸絵院長

犬と並んで日本国内で多くの飼育頭数を誇る猫は、その愛らしさゆえ文字通り「猫可愛がり」をする飼い主も多く、コンパニオンアニマルとして人々の生活の中に溶け込んでいる動物だ。
人々から愛されてやまない猫に対象を絞って診察を行う「猫の診療室」で院長を務める横山幸絵先生は、少し怖がりな猫たちが落ち着いて診察を受けられるよう、細かな配慮を忘れることなく日々の診察に取り組んでいる。そんな横山先生が日々啓蒙する猫との生活の中で注意しておく点や、自身の考える獣医療について、お話を伺った。

contents 目 次

まず、横山先生が獣医師を志したきっかけや、普段の診察の中でやりがいを感じることについてお聞かせください

動物に関心を持ようになったきっかけは、幼少の頃に連れられて行った動物園だと思います。その後、犬やウサギと暮らす中で動物と触れ合う温かさも知り、やがて身体の仕組みや医療にも興味を感じ、獣医師の職に就くことを決めました。

やりがいを感じる瞬間は多くあるのですが、一つ挙げるとすると…。

実際に獣医療の現場に身を置いていると、悲しいお別れをしなければいけないこともありますが、そういったお別れのあと、飼い主さまが再び新しい動物を迎え入れて来院されたときは、最期の時を穏やかに受け入れていただくお手伝いができたと実感でき嬉しく思います。

横山先生が院長を務める「猫の診療室」で、猫ちゃんに対象を絞って診察されているのはどういった理由からでしょうか

私は関東と関西の一般的な動物病院でそれぞれ長く診療していましたが、猫ちゃんを連れてこられる飼い主さまの中には、おそらく猫ちゃんが抱く恐怖心が少ないという理由で女性獣医師を指名する方が多く見受けられました。猫専門の病院にすれば、より安心して受診していただけると思い、猫ちゃんに対象を絞った病院を開業しました。当院ではワンちゃんが鳴いていない静かな環境により、落ち着いて診察を受けてくれる猫ちゃんが多いと感じています。

猫ちゃんはお散歩する習慣が無い分、動物病院に足を運ぶこと自体のハードルが高いと考えていますので、飼い主さまが来院しやすくなるよう、日頃からキャリーを寝床にしたり、キャリーを「ご褒美をもらえる部屋」にするなどのアドバイスをしています。また、定期的に来院していただくことも病院に慣れるためのトレーニングになるので、お勧めしています。しかし、それでも知らない場所・環境、病院までの道中を怖がる猫ちゃんはいますので、そういった場合にはスプレー式フェロモン剤の利用をお勧めしています。また、猫ちゃんは、一度パニックになってしまうと対処が非常に難しくなります。通院経験の少ない猫ちゃんは、万が一に備えて洗濯ネットに入れてからキャリーで来院いただくことをお勧めしています。

ワンちゃんは心臓、猫ちゃんは腎臓に注意するということは、多くの飼い主さまが認識していると思いますが、猫ちゃんについて他に罹りやすい、実際に診療することが多い病気はありますか?

通常であれば若いうちに大病を患うというケースは少ないものですが、むしろまだ腎臓機能が悪くない若い猫ちゃんは、尿が濃いため泌尿器結石の発症が多く見受けられます。流行りのためか、スコティッシュフォールドなど純血種の猫ちゃんが増え、それぞれの品種に好発する疾患を診る機会が増えているのが現状です。

また、当院では特に日頃の歯磨きの習慣化を啓蒙すると共に、歯科治療が必要な状態の猫ちゃんへの治療を積極的にお勧めしています。

今と昔とでは、多少飼育環境にも変化はあるのでしょうか

昔と比べて大きく変化したのは飼育環境と食事だと思います。近年、特に都心部においては完全に室内で暮らしている猫ちゃんがほとんどであると思います。室内飼育は猫ちゃんにとって運動不足・刺激不足となるデメリットがありますが、屋外飼育による事故・感染等の健康被害と比較すれば、優先されることと思います。

食餌については天然の素材で猫ちゃんに必要な栄養を満たしたものをハンドメイドするのが理想ですが、嗜好性、手間を考えると、キャットフードに頼らざるを得ないのが多くの飼い主さまの現状だと思います。今では各メーカーから質の良いフードが多く販売されていると思いますが、人間と同様、動物にとっても食事は健康の源です。品質に信用をおけるものを選んでいただきたいですね。

猫ちゃんが暮らしているご家庭で、飼い主さまがご家庭で気をつけておくポイントなどはありますか

特に幼い猫ちゃんと暮らしている飼い主さまにお伝えしていることですが、仔猫は目に入る様々なものに関心を持ち、ヒモやビニールなどは遊んでいるうちに舌に引っかかり誤飲することがあります。遊ぶ時には注意していただければと思います。

また、口腔内のケアについて、幼少の頃からお口に周りに触れられることに慣れている子はいざ治療が必要になった際に負担をかけることなくスムーズに治療を行うことができます。キャットフードを口へ入れるなどのトレーニングから、ハミガキや錠剤の内服へ発展させると十分なケアを受けることのできる猫ちゃんになります。

病気の早期発見のためにはスキンシップが基本であり、何より重要だと考えています。飼い主さまであれば触れ合いの中で変化に気づくことはごく自然なことだと思いますので、耳・眼・鼻・口、手足や背中まで見たり触ったりしてあげてください。

最後に、この記事をご覧になる飼い主さまへメッセージをお願いいたします

今後も獣医療は止まることなく進化を続けていくことと思いますが、特に猫ちゃんの獣医療については、動物病院を受診する件数の増加に伴い、おのずとエピデンスも充実し、効果的な医療へ進化していくと考えています。もちろん、当院で行う治療でその発展を幾らかでも手助けできればと思います。

当院では、猫ちゃんとの暮らしが、癒しとなり、楽しいものでありますよう、飼い主さまそれぞれのご要望の理解に努め、期待に添えるよう心がけて日々の診療にあたってまいります。