Veterinarian's interview

インタビュー

もの言わぬ小さな命のために尽くし、大切な家族の健康を守るサポーターであり続けます もの言わぬ小さな命のために尽くし、大切な家族の健康を守るサポーターであり続けます

もの言わぬ小さな命のために尽くし、大切な家族の健康を守るサポーターであり続けます

渡邊動物病院

渡邊 正俊院長

渡邊動物病院

渡邊 正俊院長

東京都立川市の五日市街道沿いに佇む渡邊動物病院は、この地で約40年に亘って親しまれているクリニックだ。エントランスには「もの言わぬ小さな命のために」という同院のコンセプトが掲げられ、院長を務める渡邊正俊先生の動物に対する思いが伺える。症状に合わせて複数のレーザーを使った先進医療を積極的に取り入れることで、動物たちの身体に負担の少ない手術や処置を実現。その卓越した技術・豊富な知識により、飼い主の方々からの信頼も厚い。
常に最先技術に意識を向けながらも、獣医療の根本は飼い主さまとのコミュニケーションであると語る渡邊院長の言葉は、動物たちへの優しさが溢れていた。

contents 目 次

本日はよろしくお願いいたします。まずは、渡邊先生が獣医師を志したきっかけをお聞かせください。

子どもの頃から動物が好きで、自分でも犬を飼いたいなと思っていたのですが、親からの許しがもらえず、もどかしい思いをしていました。元々理系科目が得意で、生物学に興味を持っていたため、得意分野を活かし、その上で動物に接することができるのは…と考えたときに、獣医師という選択肢があることに気づきました。その流れから、獣医師への道を志すようになったのです。

ご開院にあたり、この地域を選ばれたのはなぜですか?

私は江東区亀戸の出身なのですが、高校生の頃に国分寺に引っ越して以来、ずっとこの周辺で暮らしていたのです。開業するなら、自分が慣れ親しんだ地域がいいなと考えていました。

ただ、様々な動物や飼い主さまが出入りしますし、鳴き声や匂いなどを考慮して住宅街の真ん中は避けたいと考えており、近隣の迷惑にならずに、しかも来院しやすい場所を探していたら、たまたまこの場所が見つかり、開院に至りました。地域に根差した獣医療を行っていきたいという思いが念頭にあったので、この場所で良かったと思っています。

これまでのご経験の中で印象に残っていることはありますか?

そうですね。市役所からの依頼で地域の小学生たちが見学に来た際に、私が仕事の体験談などをお話したのですが、その時に「将来獣医師になりたいんです」と相談に来た子が、何年か経って獣医学部に入学しましたと報告をくれたのです。やっぱり嬉しかったですね。

腫瘍治療についてはどのような手順で行いますか?

まずは細胞検査です。どういう種類の腫瘍かを調べ、その大きさや場所によってどのような治療の選択肢があるかを多角的な目線で判断していきます。できるだけ副作用の多い抗ガン剤を使わずに治療してあげたいという気持ちが根本にありますので、レーザーを用いた治療方法も含めて、治療の選択肢を飼い主さまには細かく説明します。

また、手術を行った場合も、術後のケアや痛みの緩和について、飼い主さまに気をつけて見ていただきたい点をきちんとお話します。治療と同様に、疼痛緩和ケアにもついても様々な選択肢があるので、その都度飼い主さまと相談しながら選んでいくようにしています。

渡邊先生はレーザー治療のエキスパートであると伺っています

当院は30年以上前からレーザー治療を導入していますが、レーザーによって治療が上手くいく例は本当に多いです。例えば、他の方法では手術が不可能な症例の場合もレーザー治療でうまく処置を行えたり、通常の開腹手術でもレーザーを用いることで止血が素早く行えたりすることです。処置が早く、動物の負担も軽ければ飼い主さまにも喜んでいただけますね。最先端の技術や、一般的にまだ普及してないことも積極的に治療に取り入れ、飼い主さまに還元していきたいという気持ちを常に持っています。

レーザーは使い方によって、様々な治療が可能という強みがあり、炭酸ガスレーザーや半導体レーザー、ヤグレーザーといったレーザーの種類を使い分けることで、症状に合わせた効率的な治療を行えますので、当院では眼科、歯科、腫瘍科、外科など、目的に応じたレーザー機器を症状に合わせて使い分けています。メスのように切ることが目的のもの、すり傷など、表層のケアから骨の近くまで光の効果を浸透させるもの、腫瘍に直接作用するものなど、現在トータルで11台のレーザー機器を導入しています。

発見時にすでに症状が進んでしまっている場合には、どういった処置が行えるのでしょうか?

腫瘍が転移してしまっている、もう手術はできないといった場合も打つ手が無いわけではなく、レーザー温熱療法などを使って少しでも症状を楽にしていくことを勧めています。無理に手術するのではなく、できるだけ長い時間を飼い主さまと一緒に苦痛なく過ごせるような処置を行っていきたいと思っていますので、痛み止めを主体とした治療などはお勧めしていますね。

完治が難しい病気は腫瘍だけではありませんが、そんな場合も、病気と上手に付き合っていく方法をお話します。当院では西洋医学の薬だけではなく、漢方と組み合わせた処方や、食事の改善などの指導も含めて「統合的な医療」を提供しています。様々な治療の作用や利点、欠点を補いながら、少しでも良い状態を維持しようという考え方の治療です。転移してしまった腫瘍や、慢性疾患の動物の場合も、飼い主さまが後悔しないように私たちもできる限りのお手伝いをしたいと思っています。

飼い主さまが普段の生活の中で気をつけるべきポイントはありますか?

飼い主さまにお伝えしているのは、人間と同じでまずは栄養管理です。ご飯をちゃんと食べてもらうことを基本に、サプリメントなど栄養補助に利用できるものがあればこちらからも幾つか提案をしています。同時に、皮膚を清潔に保つこと、適度な運動や散歩をすること。動物も体を動かしたり遊んだりすることで気分転換になって、ストレスが解消されるのです。本当に人間と同じ気持ちでケアしてあげてほしいですね。

術後で体力が落ちている子の場合も、回復を助けるための栄養価が高い食べ物は多く、その子に合ったフードを選ぶことも大切ですね。食生活や運動など普段の生活についてのアドバイスも行っていますので、普段の生活についての相談も気軽に聞いていただければと思います。

検査・治療を検討中の飼い主さまへメッセージをお願いします

どこまで行っても、やはり健康の維持に大切なのは健康診断や検査であると思います。元気な時にこそ受けていただきたいですね。

当院では一般的な各種検査も行っていますが、まずは、飼い主さまのお話をきちんと伺うことを念頭に置いています。日常の中の気になる仕草、食事の量や排せつについて以前と変わった点は無いかを伺うことで、ある程度検査の方向性も決まってきます。どうしても必要な検査なのかどうかも判断ができますからね。最近では検査の際に生じるリスクや負担もかなり少なくなってきていますので、安心して任せていただければと思いますし、不安なことがあれば何でも尋ねていただきたいですね。

ありがとうございます。最後に、渡邊先生の今後の目標をお聞かせください。

若い獣医師たちにもレーザーなどの新しい治療法を伝えていきたいですね。また、これからは再生医療なども取り入れていきたいと考えています。設備の充実や技術の研鑽により、獣医療を次の世代に繋いでいくことや、医療技術の普及や啓蒙をしていくことには今後も注力していきます。

しかし、医療だけが進歩しても飼い主さまの気持ちを考えなければ、お互いにとって良い治療はできません。飼い主さまとのコミュニケーションや信頼関係を築いていくことも大切にしなければと思っています。些細なことでも相談に応じる、飼い主さまのお話をきちんと聞くことが一番の基本ですし、獣医療でも最も大切なことだと思います。これを大切にしながら、先進医療や予防の勉強を続けていくこと。今の自分ができることに精一杯取り組み、その先のことも考えながらより良い獣医療を提供してきたいと思います。