Veterinarian's interview

インタビュー

動物に優しい医療を目指し、同時にご家族さまも守っていきたい 動物に優しい医療を目指し、同時にご家族さまも守っていきたい

動物に優しい医療を目指し、同時にご家族さまも守っていきたい

安田獣医科医院

安田英巳院長

安田獣医科医院

安田英巳院長

目黒区緑が丘の住宅街、駅へと向かう坂道の途中に一つの動物病院がある。
安田獣医科医院はこの地域の獣医療の大黒柱として35年以上の歴史を持つ動物病院であり、今日も動物たち一頭一頭に誠心誠意向き合いながら診察を行っている。
この病院を率いる安田英巳先生は、時を選ばず動物を襲う病魔に対応するべく、自ら設立に携わったという夜間病院とも連携し、より万全の医療体制を整えている。
小動物臨床以外にも様々な現場で医療に関わり見聞を広めてきた安田先生にとって、獣医師とはどんな存在であるべきか、その核心に迫る。

contents 目 次

まずは、安田先生が獣医師を志したきっかけを教えて下さい

両親の出身が淡路島なのですが、そこで親戚が獣医師をやっていたこともあり、子どもの頃から動物の医療に強い興味を抱いていました。高校当時は重工業が盛んな時代で、その分野に進学するのが主流だったのですが、色々考えて以前から興味があった獣医師の分野に進みました。

広大な土地に憧れ、農業の中で獣医師という位置を求め、大学は北海道の帯広畜産大学に行きました。学生時代は、兄がサンフランシスコに永住していたためアメリカに行って勉強したいと考えるようになりましたが、実家の事情から東京に戻って製薬会社で7年間勤めました。その後、開業いたしました。

獣医師という仕事についての思いがあれば聞かせてください

獣医師というのは、動物を治すだけではなく、人間の健康も保全していかなければいけない大切な仕事だと思っています。

これからの獣医師の職域を考える際、アメリカの獣医師の歴史を見ると参考になります。1850年から1920年までの70年間は、ほとんどが馬の獣医師です。これは、馬が交通手段だったからです。これがその成り立ちからして、日本の獣医師と今日においても決定的に違う点です。ところが、T型フォードが出てきて馬の需要が無くなります。1890年から1960年まで牛の獣医師が多く、1960年頃から小動物が主流になりました。

70年周期でその主たる対象が変わってきています。この流れで考えると2030年には、人と動物の共通感染症や公衆衛生などが重要となると思います。そこをきちんと見据えて、動物の病気だけを診るのではなくて、家族との関係ありきとして診ていく必要が出てくると感じています。

この場所に開業されたきっかけはありますか

先にも話しましたが、会社に勤めていた時は出張がとても多く、家族との時間があまり持てませんでした。家族を守っていきたいというのが、ここに開業した一番大きな動機です。それは獣医師としても同じ思いで、ご家族さまと動物たちを守っていきたい、動物も含めご家族がうまく維持されていくようにしていきたいと思っています。

これまでのご経験の中で、特に印象に残っている出来事があれば教えてください

大きな出来事としては、城南地域の50人以上の先生方が夜間病院を立ち上げるお手伝いをしたことでしょうか。獣医師という免許は、「国家・国民から与えられたもの」という私のポリシーとして、診療時間中は気を抜くことなく懸命に診察に当たります。しかし動物は診療時間に関係なく具合が悪くなることもあるので、手が行き届かず悲しい思いをさせてしまったことがあるのも事実です。

そのため、診療時間外にも動ける組織を作りたいという気持ちがあり、TRVA夜間救急動物医療センターの立ち上げに協力いたしました。それは個人の病院で個々の動物をケアするだけではなくて、地域獣医療を充実させる、地域の獣医療として動物たちを診ていこうという思いがあったからです。そのため有志でTokyo jonan Regional Veterinary Council(TRVC)東京城南地区獣医師評議会を設立し、その後若い先生方のご尽力でCouncilがAssociationに変わり現在のTRVAとして発展いたしました。このセンターは、「若い先生!夜頼むね!」という施設ではなく、日本の獣医療ではまだ確立されていないECC(Emergency and Critical Care)としての第一歩と思っております。

獣医師1人の力では及ばないところを、このような施設と共に存在することで自分は診療時間内精一杯頑張ることができております。この救急センターの立ち上げの頃のことは、特に印象深く感じています。

こちらの病院(安田獣医科医院)ではどのような治療が受けられますか?

眼科分野の治療を得意としています。また、当院に専門のスタッフがいる皮膚科や、大学から専門の先生をお招きし、診察や手術をお任せしている整形外科の分野については特に安心していただけると思います。整形外科は難しい分野ですが、ご家族さまに納得いただける診断や治療をしたいと思っています。

また、麻酔は、手術ができるかどうかという意味でとても重要で、ご家族は手術の成否と共にその安全性をご心配されます。当医院では、麻酔においても専門の先生に来ていただいて、実際に麻酔の維持管理及び勤務医の教育をしていただいています。このシステムは勤務医にとっても非常な財産となり、当院の誇れる分野となっております。

安田先生が現在抱いている目標について教えてください

目標としては、動物に優しく、エビデンスに基づいた治療をしていくということです。

まず第一に、獣医療の入り口であるワクチンですね。国内では毎年混合ワクチンを打つのが慣習となっていますが、実は検査をして抗体を持っていれば打つ必要はありません。過剰な抗原刺激はしないことが副作用低減の観点から望ましいのです。ワクチンの副作用防止のため欧米では3年以内に打ってはいけないというのが常識になりつつあります。抗体は少なくとも5年間以上は持続しますので、毎年打つ必要はありません。それが日本では、まだ認知されていません。現在のワクチンの使用説明書には、毎年接種とも記載されておりません。医療の進歩による新しく、正しい獣医療の知識を、沢山の方に知っていただきたいですね。当医院では、世界小動物獣医師会によるエビデンスに基づいたワクチン接種を行っています。

次に心がけているのが、アレルギー治療においてステロイドをできるだけ使用しないようにしていることです。アメリカでは、プレドニゾロンの体重1Kg当たり年間の許容量の目安は、33㎎(たったの6.5錠)と認知されています。5㎏の犬ですと年30錠、月2錠半です。その代わりに、WHOで唯一の療法とされている減感作療法を選択しています。

最後に、ご家族の皆さまへメッセージをお願いいたします

通う病院を選ぶ際は、病院の規模だけで判断をしないようにしていただきたいですね。当医院は、一次診療施設ですが、体制としてはもう少し上の水準にあるかもしれません。必要に応じて、連携を取っている地域の専門分野を持つ先生のところに紹介も行っています。

ご家族さまが、どの病院に掛かられるかは自由です。安心できる病院に行かれるのが正しいと思いますし、その決め手となるのは、獣医師が誠心誠意動物とご家族さまに接してくれるか否かという点でしょう。スタッフ一同頑張ります!