Veterinarian's interview

インタビュー

飼い主さまと動物たちが「ホッ」と安らげるそんな動物病院でありたい 飼い主さまと動物たちが「ホッ」と安らげるそんな動物病院でありたい

飼い主さまと動物たちが「ホッ」と安らげるそんな動物病院でありたい

ふじさき動物病院

永倉 卓院長

ふじさき動物病院

永倉 卓院長

福岡市の南西部に位置し、中央区と西区の間にある早良区は福岡市内で一番面積が広く、交通網が充実しているエリアだ。福岡タワーやランドマーク、博物館や図書館といった文化施設を始め、高層ビルや高層マンションなどが立ち並ぶハイソな町でもある。そんな町の一角で日々動物たちの暮らしをサポートしているのがふじさき動物病院だ。「ペットを飼うということは責任の生じる行動」と話す院長の永倉卓先生は、飼い主さまにペットとの暮らしは楽しいことがある反面、時には辛く、苦しい決断を強いられる場合もあると目を逸らさず伝えているそうだ。ペットは私たち人間と同様、病気や介護問題が存在する。もし大切なペットが病気を患ってしまった場合、飼い主さまは大きな選択を迫らなければならない。そんな時、いつでも頼れるかかりつけ医として飼い主さまを支えたいと永倉先生は話してくれた。そんな永倉先生に今回、獣医師を目指したきっかけから獣医師としての考え方まで話しを伺うことができた。

contents 目 次

獣医師を目指したきっかけを教えてください

小さい頃から手先を使った図工などが得意だったこともあり、将来は技術的な職に就きたいなと考えていました。具体的にどんな職業があるのか調べたり考えたりしたとき、単純かも知れませんが動物が好きだったことから獣医師になるのも良いのではないかと思い、獣医師を目指しました。

獣医師をして日々心がけていること、大切にしていることはありますか

飼い主さまと信頼関係を築き上げるためにも『誠実に向き合うこと』を大切にしています。どのような治療であっても飼い主さまの同意が無ければ進めることはできません。また飼い主さまの考えを反映させるためには、飼い主さまの思いや考えをきちんとヒアリングしなければいけません。

飼い主さまと同じ目線に立ち、気持ちに寄り添い、何度でも病状に対してわかりやすく説明する。そして飼い主さまが決めにくいことがあれば、できる限り多くの選択肢を用意して、道を開くお手伝いをしてあげることが大切だと考えています。

飼い主さまとのコミュニケーションを凄く大事にされているのですね

そうですね、飼い主さまとの何気ない会話やコミュニケーションが治療の第一歩だと思っています。そのためには話しやすい環境づくりも大切にしています。よく、動物病院は病気やケガをした時に行くところとイメージしがちですが爪切りや耳掃除、しつけの相談など、治療とは直接関係のないことでも気兼ねなく相談していただきたいなと思います。

獣医師をしていて一番思い出に残るエピソードがあれば教えてください

私は今まで大きな病気をしたことがないのが自慢の一つだったのですが、ふじさき動物病院を開院した2カ月後に虫垂炎になってしまいました。当時はそれほど緊張とストレスがあったのだと思います。動物たちの病気を治す獣医師が緊張していたら、それこそ動物たちにも緊張を与えてしまいますよね。

このことがきっかけで「動物たちにリラックスしてもらうためには、まずは自分がリラックスしなくては!」と思うようになりました。今はおかげさまで心に余裕を持って動物たちと接することができています。

永倉先生が考える一次診療の在り方について教えてください

一次診療とは、下痢や吐き戻しのような日常的に起こりがちな症状を診てもらえたり、誰もが気兼ねなく通えたりする動物病院のことを指します。対して二次診療とは、一次診療では困難な手術や治療、CTや内視鏡検査などの高度医療を提供する動物病院のことを指します。そのなかで当院は一次診療に該当します。

一次診療を担う病院としての役割は、対応できる範囲の治療にはきちんと対応し、それ以上の治療を飼い主さまが望まれる場合は二次診療の病院へ繋ぐことです。その時「うちでは対応できないので、他をあたってください」と投げるのは一次診療とは言えません。当院が考える一次診療は、二次診療が必要なケースを見極められる病院であること、そして信頼できる二次診療を紹介できるネットワークを持っていることです。獣医師会のネットワーク内には、それぞれ専門性の高い知識を持った先生がいらっしゃいます。これらのネットワークを上手く活用し、信頼のできる先生にバトンを繋ぐことが大切だと考えています。

最近増えてきているなと感じる病気や症状はありますか

私たち人間も高齢化が進んでいるように、動物たちも高齢化が進んでいます。そのため動物たちも人間と同じように、認知症や身体機能の低下など介護が必要な症状が増えてきているように感じます。大切な家族の一員であっても、介護はどうしても飼い主さまの心身に負担がかかってしまいますので、それに対するケアが必要です。

介護疲れで両者とも共倒れになってしまっては本末転倒ですので、そのようなことにならないようにするためにも、飼い主さまをサポートするのが獣医師としての役割だと思っています。

ふじさき動物病院では、健康ドックを行っていらっしゃるそうですね

はい。当院では「予防すること」を重点におき、健康ドックを皆さまに推奨しています。動物たちは言葉を話すことができませんし、自身で体調をコントロールすることができません。そのため、私たち人間と比べ病気の発見が遅くなりがちです。そこを少しでも回避するためにも、定期的な検査を行うことで小さな異変に早く気付いてあげることができます。

犬や猫の1年は人間でいうと4~5年に相当するといわれています。またウサギでは20年に相当します。そう聞くと平均寿命は人よりずっと短いですよね。犬や猫が7歳を超えると、人間でいう40歳以上のシニア期に入ります。人も40歳以上になると人間ドックの受診を奨められるように、動物たちも健康ドックを受診する必要があることをご理解いただけると思います。

当院では犬、猫、ウサギを対象にペットのための健康ドックを行っていますので、定期的な健診で病気やケガの早期発見・早期治療を行い、いつまでも健康で長生きしてもらえたらなと思っています。

健康ドックを受診するのは何歳ぐらいからが妥当なのでしょうか

当院では、7~8歳から健康ドックを受診していただくことを推奨しています。7歳を過ぎたシニア期以降はできれば半年から1年に1回は定期健診を受診していただくことをお願いしていますね。勿論、若いうちから定期的に通っていただくことも健康を維持する秘訣ですので、是非一度受診していただければと思います。

しつけの相談も承っているそうですが、しつけで大切なことはどんなことでしょうか

よくご相談を受けるなかで「吠え癖が直らない」「トイレの場所を覚えてくれない」などがあります。まず、しつけを身に着けさせる上で『どうして問題行動が起きるのか』をひも解くことが大切です。

すぐに「直す」ということは難しいですが、考えられる要因を幾つかお伝えし、その点を改善することで直ることもありますので、その旨を説明していますね。当院ではしつけ担当スタッフがいますので、気になることがあれば気兼ねなくご相談いただければと思います。

今後どのような獣医師を目指していきたいですか

飼い主さまのご要望にできる限り応えることでき、いつでも気兼ねなく相談のできる『町のかかりつけ医』になりたいですね。来院される動物や飼い主さまの不安をできる限り取り除けるように、気を配りながらこれからも日々の診療に従事していきたいと思っています。また、医療レベルを向上させる努力と同時に設備の充実にも力を入れていきたいなと思っています。

EPARKペットライフをご覧になっている飼い主さまへメッセージをお願いします

『病院』と目にしたり耳にしたりすると、身構えてしまう飼い主さまはきっと多いと思います。動物病院は病気やケガをしたときに行くところと思われがちですが、実際はもっと気軽に行けるところです。健康管理は勿論のこと、食生活やしつけのことなど、ペットのことなら何でも相談できるのが動物病院です。

「うちの子、最近太り気味で…」といったご相談から「うちの子、こんなことできるようになりました!」といったご報告まで、どんなことでも構いません。是非気軽な気持ちで足を運んでいただければと思います。