
犬の口腔の腫瘍について
目 次
不調を抱えた犬の症状・原因について

口の中にできる腫瘍にも良性と悪性がある
犬の口腔内の腫瘍は悪性腫瘍の中では4番目に多く、雌に比べて雄の発生率が2.5倍高いと言われています。
口腔内にできる腫瘍は、多数の良性や悪性腫瘍が数多く発生しますが、その中でも多い腫瘍としては
●メラノーマ(悪性黒色腫)
●扁平上皮癌
●線維肉腫
●エプリス
などがあります。
症状としては、腫瘍が大きいものでは口臭が強くなる、よだれが増える、血が出る、食欲がなくなることなどが多くみられます。
良性腫瘍
エプリス
エプリスは良性腫瘍で歯肉が増殖したものです。エプリスは線維腫性、骨性、棘細胞性の3種類に分けられます。
いずれも良性腫瘍なので転移もなく手術での摘出や放射線療法を行えば予後は良好ですが、棘細胞性エプリスは、できた場所の骨にまで浸潤してしまうため骨も含めた切除が必要となります。
乳頭腫
口腔粘膜、舌、咽頭部、口蓋を中心とした部分にカリフラワー状のぶつぶつが多数できる腫瘍となります。
ウイルス感染後、1ヵ月程の潜伏期間を経て発症します。良性腫瘍ですが念のため病院を受診するようにしましょう。
骨腫
主に、上顎、下顎、頭蓋骨の部位に表面的に発症する良性腫瘍で、気づきにくいです。自然治癒することもありますが、手術をする事で完治させる事も可能です。
悪性腫瘍
線維肉腫
大型犬種、特にゴールデン・レトリバー、ラブラドールの雄に多くみられます。
平べったくかたいしこりとして見つかることが多いようです。線維肉腫は転移率があまり高くありませんが、骨への浸潤性が高いため、見つかった時にはすでに深く骨まで浸潤していることがあります。
治療は広範囲の外科手術が必要とされており、さらに放射線や抗がん剤の併用も行われますが、手術をしても再発してしまうことも多いので、早く見つけてあげることが大切です。
扁平上皮癌
骨への浸潤性が非常に高く、レントゲン検査で骨が溶けたように写ることがあります。
しこりは白色からピンク色が多く、カリフラワー状や潰瘍状の腫瘍もあります。
特に大型犬に多く見られます。
転移率は、口の先端の方にできた腫瘍では低く、口の奥の方にできた腫瘍の方が転移率は高いといわれています。
治療方法は切除可能であれば、手術で摘出します。残念ながら手術で摘出できない場合には、症状を緩和する目的で放射線療法などが行われることもあります。
悪性黒色腫(メラノーマ)
口腔内にできるメラノーマは悪性腫瘍です。リンパ節や肺への転移も多くみられます。ほとんどは黒色のしこりですが、1/3くらいは黒くない乏色素性のメラノーマや、カリフラワー状のしこりの場合もあります。
好発犬種はアメリカン・コッカー・スパニエル、プードル、ゴールデン・レトリバーなどです。
治療の第一選択は手術で摘出することですが、補助療法として抗がん剤や放射線療法も行う場合があります。残念ながら治療効果はあまりよくありません。手術で取れず、見つかった時にはすでに転移していることもあります。
黒色腫の癌ワクチンが開発されましたのでこれからの効果に期待が持たれています。
主に上記の腫瘍のような歯茎・舌・口腔粘膜に出来る腫瘍を総称して「口腔腫瘍」と呼びます。
口腔腫瘍は痛みを引き起こすので、食事量が急に減ってくる、よだれを出す事が多くなる、歯茎や口まわりからの出血、口臭がひどくなるなどの症状が現れます。
また、悪性の場合、腫瘍があっという間に大きくなるのが特徴であり、腫瘍によっては、リンパ節、あごの骨、肺を中心とした体の各部位に転移する傾向があるので、普段から口周りの状態を確認しておきましょう。
日頃のケアで早期発見し、病院にて早期治療(外科手術含む)を行なうのが適切な対応だと言えます。
臓器や体内への転移については、病院で精密検査を受けなければわかりませんので、素人判断により放置などはしないようにしましょう。全ての病気に言えることですが、早期発見・早期治療がもっとも大事です。
発症の原因は、腫瘍にもよりますが、不衛生な環境なども関係しています。
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犬のためにあなたができること

日頃から口周りの状態を把握し、早期発見・早期治療につなげる
普段わんちゃんの口の中をのぞいて見ることはあまりないかと思いますが、定期的にお口を開けて異常がないかチェックをすることが大切です。
異変を見つけたら早めに動物病院を受診しましょう。
犬にこんな症状・しぐさが出たら注意!

- 口周りに腫瘍ができる
- 食欲減退
- よだれ
- 口周りからの出血
- 口臭の悪化
かかりやすい犬の種類
- 乳頭腫は、比較的若い成犬がかかりやすいとされています。
扁平上皮癌は、10歳以上の高齢犬に多く、中~大型犬に多いとされています。
その他については、特にかかりやすい犬種はありません。

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