【獣医師執筆】犬にネギは絶対あげちゃダメ。危険な量や症状、対処法を詳しく解説

【獣医師執筆】犬にネギは絶対あげちゃダメ。危険な量や症状、対処法を詳しく解説

2022/11/11

ネギ・タマネギ・ニラ・ニンニク・ラッキョウなどのネギ類は、犬にネギ中毒(タマネギ中毒)を引き起こす危険な食材です。皮や葉、根などの部位や加熱などの調理方法に関わらず与えることはできません。今回の記事では犬のネギ中毒の症状や原因、ネギ類を食べてしまった時に飼い主様がとるべき対処法などをお伝えします。

獣医師
【執筆医】ttm
獣医師

ネギ中毒では犬の死亡例も!

刻み葱

はじめに犬のネギ中毒の危険性と具体的に誤飲事故のあった食材や料理をお伝えします。

危険!「溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)」

ネギ中毒で犬は「溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)」をおこします。その結果、元気や食欲がなくなったり、赤い尿をすることや最悪のケースでは死亡することもあります

   

(参照)

玉葱の給与による犬の急性溶結性貧血性の発症例について

   

あとから詳しく解説しますが、ネギ類による中毒症状には個体差が大きいです。ネギを丸ごと食べてしまっても大丈夫だったという犬もいれば、ネギ入りスープ一口で中毒になる犬もいます。

   

(関連記事)

犬の溶血性貧血について

ネギ類はどんなものでも犬にあげないで!

ポイント

ネギ類全般NG

日本で普通に食べるネギ類には、長ネギ、タマネギ、ワケギ、アサツキなどのいわゆるネギ類とニラ・ニンニク・ラッキョウがあります。これらはすべて犬にネギ中毒をひきおこす可能性があります。

外皮、葉、根っこなどの部位も同様に危険

食材の外皮、葉、根っこなどの部位も同様に危険です。

生も加熱もNG

家庭犬のネギ中毒の原因として多いのは、食材そのものよりも調理した料理のネギ類です。ネギ類は加熱しても危険性に変わりはありません。

【誤飲事故報告の多い料理】

  • 味噌汁やスープ
  • ラーメン
  • 肉じゃが
  • すき焼き
  • 肉鍋
  • 酢豚
  • 餃子
  • オムレツ
  • 焼き鳥のネギマ
  • ハンバーグ

   

ネギを犬に与えてはならないことを知っていても、食べている料理にネギが入っていることを知らずにうっかり与えてしまうということがあります。特に味噌汁やスープなどの煮込み料理はネギ類の原型がなくなりやすく、つい与えてしまうことがあり注意が必要です。

野草や園芸も危険!

ネギ類が野草として野山に自生していたり、園芸で植えられていたりすることもあります。ネギ類に関わらず、草や花は犬が食べてしまうと危険なことが多いため、散歩の途中で草や花を食べさせることは避けましょう。

犬のネギ中毒の症状と致死量

鉄板の上のハンバーグ

ネギ中毒で実際にみられる症状と、どの程度の量を食べると危険なのか、致死量などを解説します。

犬のネギ中毒でよくみられる症状

  • 食欲がなくなる
  • 元気がなくなる・ふらつく・意識がもうろうとする
  • 赤い尿・赤褐色の尿、あるいは緑黄色のような異常な色の尿
  • 嘔吐
  • 口の中やまぶたの粘膜が白っぽくなる
  • 黄疸になる

   

上記は一例で、ネギ中毒では様々な症状が現れます。犬がネギ類を食べたあとにいつもと様子が違ったら、どのような症状でもネギ中毒を疑う必要があるでしょう

犬がネギ中毒をおこす量は?

ポイント

体重の0.5%以上

量に関しては、アメリカでは体重の0.5%以上を摂取するとネギ中毒を起こす可能性があると言われています。

(関連記事)

犬の中毒について

「日本犬」は特に注意!

また一般的な中毒の多くは、食べた量が中毒症状の重篤度に関わりますが、ネギ中毒は少し特異で、食べた量よりも遺伝的要素と犬種の方が大きく影響します。柴犬や秋田犬などのいわゆる「日本犬」がネギ中毒をおこしやすい犬種だと言われていますので、より注意が必要です。

   

(参照)

イヌ・ネコ家庭動物の医学大百科(財団法人 動物臨床医学研究所)

犬に症状が出るまでの時間は?

ポイント

一般的に多いのは、食べた直後ではなく翌日以降

ただしネギ中毒は、症状が出るまでの時間も個体差が大きいと言えます。30分~1時間程度で出る場合もあれば、数日経過してから現われる可能性もありますので、直後から数日はしっかり様子を見てあげましょう。

犬がネギ中毒かもしれない!とるべき対処法

暗い雰囲気のフレンチブルドッグ

危険なネギ類を犬が食べてしまった時、飼い主様はどのように対処すれば良いのでしょうか。

少量でも迅速な受診を

すでに述べた通り、ネギ中毒は食べた量よりも遺伝的要素・犬種が強く関わります。少量しか食べていない場合でも、動物病院に連絡して相談することが必要です。
独自の判断で様子を見たり、吐かせるなどの行為をすることは控えましょう。

可能なら犬に水を飲ませる

ネギ中毒が疑われる際、動物病院に相談すると水を飲ませるように指示されるかもしれません。その場合は、常温の水をできるだけたくさん与えましょう。
自分で飲みたがらない場合や、意識のない場合は無理に与えずすぐに受診しましょう。

動物病院での治療法

動物病院では飼い主様からの聞き取りや、血液検査などを行います。また中毒では迅速な治療が必要なため、すぐに治療を開始することも一般的です。

   

〇吐かせる

摂取後すぐなど、獣医師が吐かせられると判断した場合、動物病院では「催吐剤(さいとざい)」という薬を用いて吐かせます。

   

〇活性炭で吸着させる

活性炭を経口摂取させることで、中毒物質を吸着させる治療が行われることもあります。他の薬剤も吸着してしまう可能性があるため、他の治療との兼ね合いで使用を決定します。ネギ類を食べてからの時間が経過し過ぎていると効果がないこともあります。

   

〇点滴などの投薬

点滴も比較的よく行われます。点滴によって循環を良くして、中毒物質の排泄を促す効果などがあります。赤血球の酸化を食い止めるため、抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンEを点滴に混ぜることもあります。

   

〇輸血

溶血性貧血が重度の場合は輸血を行うこともあります

ネギ類が中毒をおこす理由

ネギ類の何が原因となって犬の身体に中毒をおこすのでしょうか。ここではネギ中毒の原因物質と中毒がおきる流れについて解説します。

原因物質は「有機チオ硫酸化合物」

犬のネギ中毒の原因物質はネギ類に含まれる「有機チオ硫酸化合物」です

   

【中毒が起きるまで】
①犬がネギ類を食べると、有機チオ硫酸化合物が赤血球の「ヘモグロビン」を酸化させます。

②そして赤血球中のヘモグロビンが酸化すると、赤血球内に「ハインツ小体」と呼ばれる物質が出現します。

③ハインツ小体を持つ赤血球は、体内の「脾臓(ひぞう)」という臓器によって、老化した不要な赤血球だとみなされ壊されます。(この赤血球が破壊されることを「溶血(ようけつ)」と言います)

④溶血(赤血球が破壊されること)すると体では貧血がおこり「溶血性貧血」となります。

⑤その結果、元気食欲の低下や、ふらつきなどの症状が出るのです。

「有機チオ硫酸化合物」は熱にも加工にも強い

加熱した料理に含まれているネギ類や細かく刻む、混ぜるなどの加工されたネギ類でも危険性は変わりません。小口ネギなどの薬味も犬が食べると中毒の可能性があります。

日本犬が中毒を起こしやすい理由

貧血の重症度を高める「還元化グルタチオン」濃度が高い

貧血の要因になる赤血球の酸化には「還元型グルタチオン」という化合物が関わります。そのためこの「還元型グルタチオン」の濃度が高い犬ほど、タマネギで重度の貧血をおこすことがわかっています。

日本犬は、もともと還元型グルタチオンを高濃度に持つ犬種なので中毒をおこしやすいのです。

   

(参照)

タマネギに含まれる溶血性物質の単離とそのイヌ赤血球酸化作用に関する研究

酸化しやすい赤血球タイプを持つ

赤血球にはカリウムやナトリウムといった電解質が含まれます。
そして犬の赤血球には

・「LK型」…赤血球中のカリウムが低めのタイプ
・「HK型」…カリウムが高めのタイプ

の2種類があり、さらに「HK型」の赤血球は「LK型」よりもヘモグロビンが酸化されやすいことがわかっています。
日本犬は、赤血球が「HK型」で、他犬種よりもヘモグロビンが酸化されやすいため、ネギ中毒になりやすいのです。

よくある質問Q&A

犬がネギの臭いを嗅いだだけでも危険でしょうか?

ネギ類には強い臭いがありますが、臭いを嗅ぐだけで中毒症状をおこすことはありません。ただし、強い臭いに対して過敏に反応して鼻水が出たり、犬の体調が悪くなることもありますので、近づけないようにしましょう。

ネギ中毒は猫など犬以外の動物でもおこりますか?

猫でもおこります。牛、馬、羊などでも報告があります。

犬のネギ中毒で、赤や赤褐色などの尿が出るのはなぜですか?

ネギ中毒の時の赤い尿は「ヘモグロビン尿」というものです。赤血球が壊れてヘモグロビンが尿中に出ている状態です。ヘモグロビンは尿の酸性度によって赤や褐色になります。

犬にはネギ類を近づけない!

Akaita Inu's dog plays with a green ball at home, lying on the floor, funny cute

一番大切なのは、犬にネギ類を食べさせないこと。人のご飯を与えない、犬をキッチンに入れない、ごみはしっかり口を縛って処分するなどの工夫が大切です。お子さんのいる家庭ではお子さんへの説明もしっかり行い、家族全員で犬をネギ中毒から守りましょう。

獣医師
【執筆医】ttm

動物園獣医師としての経験を活かし、様々な種のペットの健康や生活のための情報発信を心がけています。 これまでにポメラニアン、ヨーキー2頭、ハムスター、リスと飼育数も多く、現在はカメと暮らすなど動物大好きです。

おすすめ情報

犬の新着記事

犬の新着記事一覧へ

Ranking