【獣医師執筆】犬に危険な植物・観葉植物は?室内や庭、お散歩時に要注意!

【獣医師執筆】犬に危険な植物・観葉植物は?室内や庭、お散歩時に要注意!

2023/2/2

毎日のお散歩コースや庭、室内にも、何らかの植物があると思います。愛犬が興味を持ってにおったり、かじったりしていませんか?実は犬は、胃がもたれると細い雑草を食べます。選んで食べているように見えるので、問題ないと思いがちですが、中には毒になってしまう草も!この記事では犬にとって危険な植物や花について解説します。

獣医師
【執筆医】平松 育子
獣医師

犬に危険な植物・観葉植物(室内編)

ポトス

ポトス

ポトスは育てやすく、茎をのばしてどんどん成長するので人気があります。

残念ながら、ポトスにはシュウ酸カルシウムが含まれています。この結晶は小さなガラスの破片に似ており、刺さってしまった部位に炎症を起こします。

ポトスの全ての部位にこの毒があり、茎や葉の汁液に触れると、皮膚が炎症を起こします。飲み込んでしまうと最悪の場合、呼吸困難になることもあります。

アイビー

アイビー

アイビーも丈夫で育てるのが楽であることから、人気のある観葉植物です。

しかし、アイビーの葉と茎には有毒なサポニンが含まれており、間違って食べてしまうと大量の流涎(よだれ)、嘔吐・下痢、口腔の痛みなどがおこります。万が一目に入ってしまった場合は、流涙(涙が出ること)や目の痛みを訴えることが多いです。かなりまれですが、大量摂取した場合、神経症状や呼吸困難、頻脈などが起こる場合もあります。

ドラセナ

ドラセナは別名「幸福の木」とも呼ばれ、人気のある観葉植物です。

スズラン亜科に属し有毒成分が含まれるとされていますが、有毒成分は不明です。食べてしまうと嘔吐・下痢・流涎がおこり、大量に摂取すると死亡することもあります。

アロエ

leaves of aloe plant

人間には様々な健康効果があるアロエですが、犬にとって毒になります。アロエにはサポニン、バルバロイン、アントラキノンなどの毒性成分が含まれていて、消化不良、下痢、嘔吐などの原因になります。中にはアレルギーを持っており皮膚炎を引き起こす場合もあります。

人に良い効果を与えるものの中には、犬にとって毒になってしまうものもありますので、注意しましょう。

ポインセチア

ポインセチア

ポインセチアはクリスマス飾られることが多い冬の代表的なお花です。

しかし、全草にフォルボールという毒を持っており、摂取してしまうと嘔吐や下痢、皮膚に触れると皮膚炎や水ぶくれができることがあります。大量に食べてしまった場合は命にかかわる事態になることもあります。

犬に危険な植物・観葉植物(お庭編)

スイセン

水仙 クローズアップ

ユリ目ヒガンバナ科の植物。3~4月ごろに開花し香りもよく人気のある花です。

リコリン、タゼチンなどのアルカロイドを毒性成分として含みます。特に球根には毒が多く含まれ、犬が食べてしまうと流涎(よだれ)、嘔吐・下痢、血圧低下、心不全などを起こします。症状が重くなると、昏睡、麻痺などの神経症状が起こり亡くなることもあります。

スズラン

スズランはコンバラトキシンという猛毒を草全体に持っており、ほんの少量でも危険といわれています。摂取してしまうと、嘔吐や頭痛、血圧低下、心臓麻痺などを引き起こします。
スズランを生けた水を舐めて死亡した例もありますので、室内には置かないに越したことはありません。

アジサイ

アジサイ

アジサイは庭に植えたり、母の日の贈り物になるなど日常生活で触れることの多い植物です。

しかし、葉や花にはクマリン誘導体と、品種によっては青酸配糖体という毒を含んでいます。間違って摂取してしまうと呼吸数の増加、興奮、痙攣などが起こり死亡する場合があります。

チューリップ

チューリップ

チューリップも花壇や鉢植えで人気のある植物ですので、注意が必要です。チューリップに含まれるのはツリピンという毒で花や葉にも含まれますが、特に球根には多くの毒が含まれています。球根は甘く犬が間違えて食べてしまうと、皮膚炎や口内炎、心不全を起こします。

クリスマスローズ

クリスマスローズ

クリスマスローズには様々な花色がありガーデニングでは人気のある花です。
しかし、ヘレブリン、プロトアネモニンという毒を全草に持っている危険な植物です。樹液が皮膚につくと炎症やただれが起こりますし、間違って摂取してしまうと口内炎、めまい、吐き気、下痢などの症状を引き起こします。

ツツジ・アザレア・シャクナゲ

Pink rhododendron flowers in the park, Finland

舗装道路や公園、生垣などに植えられていることが多く身近な植物です。

アンドロメドトキシンなど数種の毒を葉や蜜に含み、少量摂取では嘔吐・下痢、ふらつきなどがおこることがあります。摂取する量によっては痙攣、呼吸停止などが起こることがありますが、かなりの量を摂取しないと死に至ることはないといわれています。

個体差や種類(特にレンゲツツジとシャクナゲは毒の含有量が多い)によって異なりますが食べないように注意してください。

ユリ

Beautiful lily flowers on light background, closeup

ユリは植物全体(花、花粉、花弁、葉、茎、根、球根)に毒性があります。ユリを活けていた花瓶の水にも中毒成分が溶けだしてしまいますので、花瓶の水にも注意が必要です。ユリに含まれるどの成分が中毒を引き起こすのかわかっていません。

摂取した場合、嘔吐や食欲不振、震え、痙攣、腎不全を起こします。2~6時間で症状が現れ、腎不全は3日以内に起こす可能性があります。腎不全が進行すると尿毒症を引き起こし亡くなる場合もあります。

シクラメン

シクラメン

シクラメンにはシクラミンという毒が全草に含まれており、特に球根部分に多いといわれています。毒性はかなり強く、摂取すると嘔吐や下痢、胃腸炎などを引き起こし、大量に摂取すると不整脈、けいれんを起こし亡くなることもあります。

冬の代表的なお花ですが犬の近くに置かないようにしましょう。

ナンテン

なんてん

ナンテンは「難を転じて福となす」と言われ縁起の良い植物です。

しかし、全草に毒を含み、特に赤い実には毒が多く含まれます。毒成分はドメスチン、ナンテニン、ヒゲナミンです。摂取すると嘔吐、よだれ、呼吸困難、意識障害、痙攣などが起こり突然死することもあります。

パンジー、スミレ、ビオラ

パンジー、スミレ、ビオレ

ビオリンなど複数の毒を種、茎、根に持ちます。間違って食べてしまうと嘔吐や神経麻痺などの症状が現れます。寄せ植えや花壇にもよく使われる花ですので、犬が近寄らないように注意しましょう。スミレやビオラも同様です。

Ornamental Flowering Wisteria with Verdant Green Foliage

藤の葉、樹皮にはウェスタリン、豆やサヤにはシチシンという毒が含まれています。
食べてしまうと嘔吐、下痢、胃腸炎などを起こしますが、まれに死亡する場合もあるので注意が必要です。藤に似ている花でエニシダ、キバナフジも有毒ですので気を付けてください。

アサガオ

朝顔

夏の風物詩のアサガオですが、種に要注意です。アサガオの種類によって含まれる毒の種類も異なりますが、摂取してしまうと嘔吐・下痢、血便、動悸が起こります。

犬に危険な植物・観葉植物(お散歩編)

ハイビスカス

ハイビスカス

ハイビスカスはハーブティーにも使われるなど人間には毒性がないと言われていますが、犬が食べると下痢・嘔吐、食欲不振などの中毒症状が現れます。ハイビスカスには観賞用・食用の2種類がありますが、どちらも犬には毒性があります。食べてしまわないように注意してください。

ヨウシュヤマゴボウ

 cluster of Pokeweed berries, American pokeweed

ブルーベリーのような実が、ブドウの房状にできるヨウシュヤマゴボウ。子供のころにすりつぶして遊んだことがある人は多いのではないでしょうか?

これには、フィットラッカトキシンという毒が全草に含まれており、特に種には多く含まれています。食べてしまうと、嘔吐・下痢、昏睡状態になり、場合によっては亡くなることがあります。

オシロイバナ

オシロイバナ

黒い種の中に白い粉があり、化粧に使用する白粉(おしろい)に似ているのでオシロイバナと言うとか。種や根にトリゴネリンという毒を含み、嘔吐・下痢、腹痛を起こします。

ヒガンバナ

彼岸花

秋になると、空き地や道端にたくさん咲く花です。ヒガンバナにはリコリンというアルカロイドの一種である毒が含まれており、特に球根には多くの毒が含まれています。リコリンを摂取すると、嘔吐・下痢、呼吸困難を引き起こし、亡くなることがあります。

イヌサフラン

イヌサフラン

イヌサフランの花は食用のサフランと似ています。室内に放置した球根からも開花します。イヌサフランの花はサフランに似ており、葉はギョウジャニンニクやギボウシに似ているため、間違いやすいので注意が必要です。
毒性成分はアルカロイドのコルヒチンで、多量に摂取すると嘔吐、下痢、呼吸困難を起こし、重症の場合は死亡することがあります。
球根を含め全草に毒を含みます。

イチイ

イチイ

イチイは赤い実がなる生け垣などに利用される木です。

赤い実は問題ないのですが、実の中にある種にはタキシンと呼ばれる毒が含まれ、摂取すると痙攣や呼吸麻痺を起こします。小型犬の場合は、この種を一粒食べただけでも危険です。この毒は種に多いですが、葉、樹皮や木材にも含まれます。

ジンチョウゲ

沈丁花

ジンチョウゲの実や根、樹液などにはダフネチンという毒が含まれており、樹皮や樹液に触れると、皮膚にかゆみや水ぶくれができてしまう可能性があります。誤ってジンチョウゲの実を食べてしまうと下痢や嘔吐、場合によっては心臓障害を引き起こします。

食べてしまった場合の対処法

「何を、どのくらい、いつ食べてしまったのか」を把握し、できるだけ早く動物病院へ相談しましょう。中毒成分が身体に吸収される前か、吸収され症状が出ているかで、治療内容や愛犬への負担が変わります。時間が経ち症状かなり重くなってしまうと、最悪の場合治療ができなくなることも。愛犬の体質や植物により、危険な量、症状、症状が出るまでの時間等は異なりますので、中には平気な子もいるかもしれませんが、自己判断は危険です。

   

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犬に毒性のない観葉植物

パキラ

毒を持つ危険な植物の一部を紹介しましたが、毒を持たない安全な植物もあります。

   

・パキラ
・アレカヤシ
・オリヅルラン
・テーブルヤシ
・エバーフレッシュ
・ガジュマル

   

犬にとって安全と言われている植物ですが、葉を食べると刺激になって吐いてしまうこともあります。かじらないように注意は必要でしょう。

Q&A

犬が金木犀を食べてしまったのですが大丈夫でしょうか?

調べる限り、金木犀には毒性があるという報告は見当たりませんでした。大丈夫とは思いますが、念のため食べてしまった場合は様子をよくみてください。心配な場合は必ず動物病院で診察を受けてください。

犬とネモフィラが有名な公園に行きたいのですが、大丈夫でしょうか?

ネモフィラには毒性がないと報告されています。問題はありませんが、積極的に食べたりすることがないように注意をお願いします。

まとめ

Young woman florist taking care of pot plants indoors, sitting on a floor with her dog, watering flowers

今回は、よく見かける植物の中で毒性を持つものの一部をご紹介しました。球根には危険なものが多いので、置いたまま忘れてしまったり、庭に植えること避けた方が無難です。また、観葉植物を室内に飾る場合には毒性のないものを選ぶように気をつけましょう。

万が一食べてしまった場合には、量や体調にかかわらず必ず動物病院を受診してください。

獣医師
【執筆医】平松 育子

山口県山口市にある「ふくふく動物病院」院長。「たくさんの笑顔のために」をコンセプトに皮膚科、内科を中心とした一般医療に注力しています。

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