【獣医師執筆】犬にチョコレートはあげちゃダメ!症状や対処法を詳しく解説
チョコレートは犬にとっては中毒を引き起こす有害なものです。犬がチョコレートをなめてしまっ た、食べてしまった場合、どんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が詳しく解説し ます。
目 次
チョコレートは犬に中毒を起こす
どんな種類のチョコレートも犬にあげちゃダメ!
まず結論からお話しすると、チョコレートは量や種類に関わらず犬が食べたらダメです。
犬が食べると中毒を起こして命にかかわることは、ほとんどの飼い主さんが知っておられると思います。
ホワイトチョコレートのように食べても命にかかわる問題が起こらないものもありますが、犬はチョコレートの種類を見分けられません。これはよいけどこれはダメといった判断ができませんので、変な誤解を犬がもたないよう口にさせないことを徹底しましょう。
犬にとって毒になるテオブロミン
チョコレートには「テオブロミン」が含まれており、これが中毒症状を引き起こす原因物質です。人間には無害なのに、犬が中毒症状を起こすのはなぜでしょうか?
犬はテオブロミンを体内で分解する能力が低く、人がテオブロミンを分解するスピードの約3倍かかるため、中毒症状を引き起こしてしまうといわれています。
犬に中毒を起こすチョコレートの量
実際にどのくらいの量を食べてしまうと危険なのでしょうか?
犬の体重1㎏あたり、約100㎎程度のテオブロミンを摂取すると中毒症状を引き起こす
といわれています。
チョコレートの種類ごとの平均的なテオブロミン量
テオブロミンの含有量はチョコレートの種類によって異なります。
チョコレートの種類ごとに、50gあたり(板チョコ約1枚分)に含まれるテオブロミン量を確認してみましょう。
50gあたり(板チョコ約1枚分)に含まれるテオブロミン量の目安
ミルクチョコレート | 100㎎ |
セミスイートチョコレート | 250㎎ |
カカオ70~85% ダークチョコレート | 400㎎ |
製菓用無糖チョコレート | 600㎎ |
ホワイトチョコレート | 0㎎ |
体重5㎏の犬の危険量は、ミルクチョコレート5枚分
体重が5㎏の犬の場合、ミルクチョコレートであれば板チョコ5枚ですので、食べるとしても可能性が低く感じられます。
しかし大量のチョコレート菓子がある状態で家を留守にしたり、製菓用の無糖チョコレートの場合は約1枚で中毒量になるなど油断は禁物です。
油断はダメ!個体差により反応は異なります
この量は一般論ですのでどのような反応が起こるのかは個体差があります。このぐらいの量なら大丈夫と安易に考えるのは絶対にやめましょう。
またココア、アイスクリーム、飲み物などにもテオブロミンが含まれています。チョコレートに比べるとテオブロミンの含有量は少ないかもしれませんが危険です。
犬は人間が口にしているものに対して興味を持ちます。食べたものの包装紙などの後片付けにも注意しましょう。
中毒症状
食べてから犬に症状が出るまでの時間は?
一般的に犬がチョコレートを食べて何らかの症状が出始めるまで1~4時間ぐらいと言われています。
ただし「食べた量」「食べたチョコレートの種類」に加え「個体差」が大きく関係します。
犬にあらわれる中毒症状
次のような症状が見られたら、急いで動物病院を受診してください。
- 元気消失
- 嘔吐
- 下痢
- 呼吸が速い
- 心拍数の上昇
- 血圧低下
- 震え
- 興奮
- けいれん
- 意識消失
症状が重くなるほど、震え、けいれん、意識消失などの症状が起こり命にかかわります。
食べないように手の届かない場所に保管し、少しでも食べてしまった場合は様子が悪くなくても必ず診察を受けましょう。
犬がチョコレートを食べてしまった場合の対処法・応急処置
犬がチョコレートを食べてしまった場合、ご自宅でするべき対処法について説明します。
対処法
種類と量をまず把握
食べてしまったチョコレートの種類と量をまず把握してください。空き袋などがあれば必ず動物病院に持って行けるようとっておきましょう。
迅速に動物病院へ
チョコレートを食べた直後には大きな体調の変化がないことがほとんどで、異常が起こるのは食べてから1~4時間程度後です。直後に症状がなく、調子が悪くなかったとしても必ず動物病院へ行きましょう。愛犬の命を守ることに繋がります。
応急処置
自宅でできる応急処置はありません。
インターネットで調べると食塩やオキシドールで吐かせる方法が記載されていることがありますが、お勧めしません。
食塩水を大量に飲ませると食塩中毒を起こす可能性がありますし、オキシドールを飲ませると消化管が炎症を起こし出血することがあります。さらに誤嚥(ごえん)してしまう可能性もあります。
応急処置を行ったつもりが、かえって危険にさらしてしまいますので安易に行うべきではありません。
動物病院で行う検査や治療
動物病院では食べた量や種類、時間、症状等の聞き取りや血液検査などの結果をもとに治療を進めていきます。
チョコレート中毒と判明した場合
催吐処置や胃洗浄を行います。
しかし、チョコレートを摂取してから時間が経ちすぎると胃内から腸管にチョコレートが移動していたり、テオブロミンの吸収が始まってしまうため吐かせても意味がなくなってしまいます。その際には浣腸を行ったり、吸着炭を投与して便とともに排泄させたりなどが必要になります。
摂取してから治療までの経過時間で救命率が変化
テオブロミンの吸収が始まってしまうと催吐処置や便とともに排泄させることが困難になりますので、摂取してからの来院治療までの時間が早くないと救命率が下がってしまいます。
けいれんなどの神経症状や意識消失が起こった場合は、命にかかわります。
中毒を防ぐための注意点
(1)チョコレートを犬の届くところにはおかない
犬の身近なところに危険なものを置かないことは最重要ですが、飛んだら届く場所や衝撃で落ちてくるような場所にも絶対におかないようにしましょう。
特に、室内を自由に歩くことができる環境の場合は留守中にいたずらをしてしまう可能性が高くなります。「うちの子はいたずらをしない」と言うお話をよく耳にしますが、残念ながら留守中に誤食をするケースが多いのです。
絶対に手の届くところに置きっぱなしにしないようにしましょう。
(2)無症状でも必ず動物病院を受診しましょう
「少し食べただけだから」「異常がないから」などの理由で様子を見るのは危険です。チョコレート中毒は摂取して数時間後から異常が起こることもありますし、深夜になると対応可能な病院が見つからないこともあります。
かかりつけの病院が閉院前であれば電話連絡の上で受診してください。念のために夜間対応可能な病院を探しておくことが重要です。
(3)イベントのある時期に注意
チョコレートと言えばクリスマスやバレンタインデーの主役になることが多いですね。楽しい気分の時には犬の動きに目が行き届かないことがあります。
ゴミ箱は倒れても中身が出ない蓋がしっかり止まるものにしたり、可能であれば屋外に出すようにしましょう。
Q &A
犬にチョコレートはダメは嘘という噂を聞きました。慌てて病院に行き麻酔などで愛犬に負担をかけるのが心配です。
チョコレートによる中毒は、犬の状態や食べたチョコレートの種類、量により左右されます。ですので「食べたけど問題がなかった」という方もいるでしょう。ただ実際に死亡例が確認されており、危険性は認められています。
早ければ早いほど治療による愛犬への負担も軽減できるかと思いますので、できるだけ正確に誤飲した量などを把握し、迅速に動物病院へ相談することをおすすめします。
まとめ
チョコレートは身近にある食べ物で、甘いものが大好きな犬にとって魅力的な食べ物と言えるでしょう。ですが、少量であってもチョコレートの種類によっては中毒症状を起こす場合があります。愛犬を危険にさらさないためにも危険なものは手の届かない場所に片づけることが大切です。
少しでもいつもと違う様子がある場合は動物病院を受診しましょう。
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