犬の外耳炎について
目 次
不調を抱えた犬の症状・原因について
外耳炎は耳の穴に炎症が起きた状態
外耳炎は、耳の穴に急性または慢性の炎症が起こっている疾患のことをいいます。
その炎症は、耳の穴の入口から鼓膜まで及ぶこともあり、放っておくと鼓膜の奥にある中耳、さらには内耳に波及することも珍しくありません。
症状は、外耳炎を引き起こしている原因と炎症の程度により様々ですが、一般に耳にかゆみや痛みが生じます。痛みのため、耳を触らせないようにするため、攻撃的になることすらあります。
そのほかにも、首を振ったり、足で耳の後ろの部分を掻いたり、耳を下にして頭を傾けるようなしぐさをします。耳垢が多くなり、耳から悪臭を放つようになって、ようやく気が付かれることもあります。
原因として、最も多いのが犬アトピー性皮膚炎あるいは食物アレルギーです。実に犬アトピー性皮膚炎のわんちゃんの83%は、外耳炎を併発しているという報告、そして犬アトピー性皮膚炎のわんちゃんの3?5%は外耳炎の症状のみというデータもあります。一方、食物アレルギーのわんちゃんの80%は、外耳炎を併発しているとも言われています。このように、外耳炎の多くがアレルギー体質に関連していることがありますが、他にも草の実など異物によるもの、耳疥癬(耳ダニ)の感染によるもの、綿棒などによる誤ったケアによるもの、内分泌と呼ばれる体質によるもの、免疫の問題によるもの、腫瘍によるもの、耳垢腺という分泌腺の疾患によるものなど多くの原因がありえます。
もともと、耳の中には『マイグレーション』と言って、耳の中を自浄化する自然治癒力があるのですが、上記のような外耳炎を引き起こす原因によって、そうした機能が働かなくなると、耳の中の環境が悪化し、外耳炎が発症します。その結果として、細菌や真菌が増えるわけです。
外耳炎は、こうして様々な原因がありますから、これまでの経緯を詳しくお聴きしていくことが必要です。
また、オトスコープという内視鏡で耳の中を丁寧に診てもらうことが望まれます。
私は、「刺毛性鼓膜炎」と名付けた、体表にある被毛が鼓膜を刺激、もしくは刺さることによって起こる外耳炎をたくさん診ています。これなどは、オトスコープでないと、見つけることが難しいでしょう。
どのケースも、「細胞診」という耳垢の検査が必要です。これによって、外耳炎の原因や性状がわかることが多いからです。
こうした検査があってはじめて、「的を射た治療」ができます。すなわち、外耳炎の治療法は、外耳炎をもたらした原因によるのであり、「抗生物質」の投与で治ることは、むしろ少ないと言えるでしょう。
外耳炎をもたらした原因に焦点を当てつつ、必要により細菌や真菌を退治します。慢性になってしまった外耳炎の多くは、バイオフィルムというしつこい汚れの中に細菌が生き残っています。ですから、丁寧に汚れを洗い落とさないと完治しにくいと思われます。
患者であるわんちゃんたちは、言葉で表現しませんが、外耳炎が慢性でしかも悪化しているとかなり辛いですから、早くしっかりと治療をお受けになることをお勧めします。
犬のためにあなたができること
慢性化や再発しやすいため、ていねいな治療が必要
外耳炎は、耳道が正常化するまで、つまり耳道や鼓膜が回復したことをオトスコープで確認できるまで通院するようにしましょう。また、アレルギー体質による外耳炎などは再発もしやすいので、今後のケアについて詳しく指導してもらって下さい。
残念ながら、既に深刻に耳道が傷んでいる場合、CTやMRIによって、より正確に耳道だけでなく周辺組織の状態を把握する必要があるかもしれません。
従来は、大きな外科的治療が求められるケースも、オトスコープなどの活用で、手術を回避できることが少なくないようになりました。しかしながら、手遅れにならないうちに早めに治療を受けて下さい。
犬にこんな症状・しぐさが出たら注意!
- 耳のかゆみ
- 耳の痛み
- 頭をよく振る
- 耳の周辺をよく掻く
- 片方の耳を下にして頭を傾ける
- 耳垢が多くなる
- 耳から悪臭がする
かかりやすい犬の種類
- コッカースパニエル
- フレンチブルドッグ
- 柴犬
- パグ
- プードル
- ラブラドールレトリーバー
- ゴールデンレトリーバー
- シーズー
- ミニチュアシュナウザー
- バセットハウンド
- アイリッシュセッター
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