
犬は平和が大好き
昔は玄関に「猛犬注意!」と書かれた札を貼っている家もありましたし、多くの人が「犬は噛む」とか「犬は獰猛な動物」と言い切っていました。防犯用の番犬や、犯人を逮捕する警察犬、大事な物を守る軍用犬などの存在も有名です。もちろん、そういう使命を持って育てられた犬は、確かに勇敢でもあり、ある意味では獰猛でもありました。
しかし、この数十年で多くの犬が戦う犬ではなく、人間の家族としての暮らしを始めるようになりました。一緒に生活してみてわかったことがあります。実は本来の犬は『平和が好き』だったのです。
動物が戦って優劣を決めるとき

多くの動物は敵に襲われれば戦います。時には敵だけでなく同族とも戦うことがありますし、発情期にはメスの取り合いで戦うこともあります。高度な頭脳を持つ猿でも、一族のリーダーの座は戦って勝ち取らなければなりません。
動物が戦って優劣を決めるとき、その決め方には2種類あります。ひとつは実際に戦って強い方が勝つといった当然の争い方ですが、もうひとつは戦わずに優劣を決める方法です。野生の熊は自分のテリトリー内にある大木の前で立ち上がり、手の届く一番高い部分に爪痕を残します。あとからその地域に来た別の熊は、その高さを自分と比べ、どちらが大きいか判断し、小さい方の熊はそのエリアを後にします。
また沼地でおなじみのカバは、お互いに口をめいっぱいに開け、口の大きい方がそのエリアを独占します。その他にもいろいろな動作を通じて、優劣を競う動物はけっこういます。どのようにしてその習性を学んだかは分かりませんが、一滴の血を流すこと無く優劣を決めているのです。
愛犬のために穏やかな日々を

犬も同様にいろいろな動作を通じて、優劣を判定することができます。他の犬とうまく接することができず、すぐに喧嘩腰になる子もいます。しかし、そのほとんどは凶暴というより、怖さ故の行動です。小さい頃から他の犬や動物との接触を避け続けたり、近くの家族の守れる力に対しての不信感が強かったり、なにかの原因によるストレスが多かったりすることで、怒りっぽくなったり、反対に恐怖のあまり攻撃してしまう子もいますが、本質的に犬は戦いを好みません。出来れば、誰とも戦わず平和に生きていきたいのです。
犬の平和好みは、自分の生き方だけではありません。犬にとっては、信頼している身内や家族の平和も大事なのです。犬だけの大きな群れでもその群れ内でいざこざが始まると、メンバーの誰かがその争いを止めようとします。この仲裁は、犬だけでなく、一緒に暮らす人間に対しても同じ行動をします。よく犬の前で夫婦喧嘩や親子喧嘩をすると犬が間に入って止めようとしたりしますし、家族の誰かが不機嫌なことを察すると、居間から静かに消え、自分の寝床で気配を殺していたりします。
犬にとっては、喧嘩の原因はあまり関係ありません。なにがどうしたからといったことは気にしていないのです。犬にとっては、争い事が嫌なだけでなく、喧嘩になりそうな雰囲気や不機嫌な空気そのものが苦手なのです。
愛犬の一生をできるだけ快適に過ごさせてあげるためには、そばにいる私たちもできる限り争いを避けて行きたいものです。
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