
【獣医師執筆】犬のストレスサイン、原因、解消法を詳しく解説。愛犬のためにチェック!
頻繁にあくびをするなど、これは犬のストレスサインかな?と不安に思われたことは無いでしょうか?
犬もストレスを感じることが多いですが、話せないためになかな気付いてもらえないことも。犬のストレスサインを知っておくことは飼い主として大切です。
この記事では犬のストレスサインとはどんなものか、原因や解消法について解説します。
目 次
犬のストレスサイン

愛犬がストレスを感じているのではないか?という質問は、日々の診察でよく聞かれます。
まずは「犬がストレスを感じている時にする行動」について説明しますので、愛犬に当てはまるか確認してみてくださいね。
軽度のストレスサイン
犬が不安や不快を感じた時に、無意識にその気持ちを紛らわせようとするのが「カーミングシグナル」です。人が緊張した時に、無意識に髪の毛を触っていたり、身体を揺らしてみたりするのと似ていますね。犬も同様に、「少し嫌だな」「なんだか不安だな」という状況では、以下のようなカーミングシグナルを出して、自分や相手を落ち着かせようとします。

- あくびをする
- 耳を倒す
- 尻尾を丸める
- 身体をかく
- 身体をなめる
- 伏せる
- 目をそらす
診察台の上で、震えながら伏せて、生アクビをしている犬も多く、獣医師としてはストレスがかかっている様子に胸が痛いです。
他にも、爪を切っているうちに、途中から足先を舐めたり、切っている最中に爪切りを舐めたり、という行動も見られますが、これも我慢しているストレスサインです。
「爪を切られるのは嫌だ、でも我慢、我慢」と犬がやり場のない思いを「舐める」という行動で示しています。
あくびをしていても、本当に眠いわけではありませんし、身体を掻いていても、痒いわけではないのです。
軽度のストレスを紛らわすための犬の本能的な行動ですね。
中程度のストレスサイン

軽度なストレスでも、継続されれば犬のストレスも悪化し、問題行動という形でストレスサインが出てきます。犬の行動変化が出てくるので、見逃さないようにしましょう。

- 軽く人を噛む
- しきりと手足を舐める
- 長く吠える
- 不適切な排泄
- 一過性の吐気、下痢
嫌だなと犬が感じ、カーミングシグナルを出しても人がその行動を止めない時に、犬はどうにかストレス状況を回避したいと、軽く噛むことで行動を止めようとします。
また運動欲求が満たされずにいる犬は、手足をよく舐めすぎてしまったり、過剰に吠える行動が見られたりします。
あるいは寂しさから、構って欲しくてトイレをワザと失敗してみたり、来客がある時にはストレスから必ず一回は吐く、という繊細な性格の犬もいます。
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重度のストレスサイン

重度のストレスサインでは、犬もパニック状態で自身をコントロールできないような行動や、犬自身を害するような行動にでてしまいます。
以下のような行動がある時には、犬にとって大きなストレスがかかっていると考えましょう。

- 呼吸がハアハアして休まらない
- 震えが止まらない
- ヨダレが沢山でている
- 落ち着かずにウロウロして休まない
- 物を破壊して、犬自身もケガをしてしまう
- 手足や尻尾を噛んで、血が出ても止めない
- 1つの行動をずっとし続けている
強いストレスによるパニック行動のパターンと、長期間のストレスによる常同行動のパターンがストレスサインとなって現れます。だいたいは1つのサインではなく、複数のサインが同時に見られます。
常同行動とは、意味のない行動をずっと続けることを指します。動物園などで、展示動物がずっと柵の前を行ったり来たりしているのを見たことはないでしょうか?これは常同行動であり、野性的な本能を満たすことができない動物の、ストレスによる行動だと考えられています。
犬の身体に大きな影響がでるのが、強いストレスサインの特徴です。自傷行為に近く、飼い主様が叱って止めようとすると、悪化することが多いのでやめましょう。
犬のストレスサインの原因

人の行動が原因の犬のストレス
●顔や頭を撫でられるのが嫌い
実は顔や頭を撫でられるのが嫌い!という犬が、すくなからずいます。人の手が上からやってくることにも、若干の嫌悪感がある犬も多いです。犬が「止めて!」というカーミングシグナルを出していることが多いので、早めに気付いてあげましょう。
●遊ぶ時間が少ない
運動要求量がとても多い犬種は要注意。それを人が解消してあげられないと、長期のストレス状態となり、中程度から重度のストレスサインが出ることがあります。
特にボーダーコリーなどの牧羊犬種には注意が必要です。賢いので、退屈で単調な生活がまず苦痛ですし、短い散歩しか出来ないと欲求不満によって手足を舐めこわしたり、常同行動が出てしまう犬もいます。
●人が家にいる時間の変化
在宅ワーク中に犬の飼育を開始し、その後に出勤が増えて犬のお留守番が増える、そんな変化も要注意です。犬はもともと群で行動する動物であり、人と長時間いる環境で育った犬であれば、急な孤独にストレスを抱えてしまいます。
この場合も、中程度のストレスサインが出ることが多く、問題行動が悪化するケースも多いでしょう。
逆に、今まで出勤していた人間が、長時間在宅ワークで家にいるようになったことで、犬がストレスを感じているケースもありました。
犬にとって、人との距離感が変化するのは、とても大きなストレス要因です。
場所が原因の犬のストレス
●トラウマのある場所
他の犬に咬まれたドッグラン、急に出てきたバイクに恐怖を感じた曲がり角など、犬はしっかりと記憶していることが多いです。
また犬のストレスサインが沢山出てしまう場所の代表が、動物病院です。苦手な動物の気配、注射などの嫌な思い出がトラウマとなってしまうのでしょう。できれば、ご褒美を持参して動物病院に行き、嫌なことがあってもご褒美がある、と良い印象を持たせてあげてください。
●知らない場所
警戒心の強いタイプの犬では、知らない場所がストレスになることも。これは性格にもよるのですが、緊張しやすいタイプの犬を新しい場所に連れていく時は、慣れたキャリーや大好きなご褒美は必須アイテムでしょう。
その他

●雷や花火
犬には雷恐怖症という立派な病名があるほど、雷は犬にとって恐怖の対象であり、ストレスが強くかかります。重度のストレスサインを呈する犬は多く、パニック状態でケージを蹴破って脱走してしまうことも。物を壊すことで、犬自身もケガをしてしまうことも多く、本人もとても辛い思いをしています。
花火も同様で、イベントやアイドルのコンサートが近くであり、花火が上がってから吐気と下痢が止まらないという犬がいました。
犬にとっては、生命を脅かすほどの爆音に感じるのかもしれません。
犬にストレスサインが見られた時の対処法と解消法

犬のストレスサインをキャッチ出来た時に、飼い主様としてはどう対処するのが良いのか、以下に説明していきます。
ストレス要因を止める、あるいは遠ざける
もっともシンプルな方法で、これが出来ていれば苦労しない、という解決法ですよね。
・犬の嫌がることは極力しない
・運動不足の犬には散歩を増やす
・退屈すぎる犬には、遊ぶ時間を増やす、犬の幼稚園をためす
・音が苦手な犬には防音素材を窓に貼る
ストレスがかかりそうな場所や状況では、ご褒美を活用
嫌なことを忘れる、あるいは気付かないようにするためには、ご褒美や慣れたグッズを活用しましょう。
・動物病院に行くときはご褒美を特別にあげる
・爪切りをしながらドッグフードを少しずつあげる
・緊張する場所では、安心できるクレートやキャリーを活用して、ご褒美も持参
動物病院に相談して、犬用のサプリメントや抗不安薬をもらう
犬の不安を軽減できる市販のサプリメントなどを活用する手もあります。やむを得ない生活環境の変化によって、情緒が不安定であれば、そういったサプリメントを獣医師から紹介してもらいましょう。
さらに、雷や花火の恐怖症だったり、動物病院が怖すぎてパニックになる、という犬には抗不安薬を処方してくれる動物病院もあります。恐怖感を抑えてくれるので、ストレス軽減はもちろん、ケガなどの防止も期待できます。
こんなストレスサインは危険かも?病院に行くべき目安

犬が自分を傷つけるような行動に出ている時には、受診が必要でしょう。ストレスサインで言えば、中程度から重度のものが当てはまります。
また、体重が減ってきているのであれば、それも危険なサインです。毎月の体重チェックを忘れずに。
ストレスと勘違いしやすい病気

いかにもストレスが原因でやっていそうな行動なのに、実は病気のサインというものがあります。
このケースではいくら飼い主様がストレスを軽減するために頑張っても良化しません。
尾かじり(柴犬に多い)
自分の尻尾を追い回してかじって、出血しているのに止めずにクルクルと回る、という行動を繰り返す犬がいます。これは脳に問題がでている、発作の症状であることがあります。
柴犬に多いのですが、他の犬種でも発症していることがあります。
床舐め
甲状腺ホルモンの異常や、小腸のトラブルがある犬は、床をしきりに舐めることがあります。これも病気が原因で出る行動なので、床舐めが増えたな、という時には念のために血液検査を受けましょう。
Q&A
子犬に多いストレスサインはありますか?
無駄吠えや甘噛みもストレスサインの1つです。構って欲しい欲求が解消されない、というストレスからくるものです。
しかし、こういったケースで子犬の要求に応えていると、犬はそれが当然だと学習してしまうので注意が必要です。
多少のストレスが子犬にかかっていても、人との生活に慣れるための練習中だと考えましょう。
高齢犬に特有のストレスサインはありますか?
多いのは関節炎や病気によるストレスサインです。高齢犬の多くは加齢による関節炎を患っているので、節々に痛みがあります。
その部分をしきりと舐めるのでハゲていたり、あるいは痛い部分を触ると人を噛む、という行動が見られます。
まとめ

話すことが出来ない犬は、ストレスがかかっている時に行動で表現します。それがストレスサインです。サインを出しても解消されない時には、無駄吠えや噛むなどの問題行動が出たり、あるいは自傷行為のように自分にケガを負わせてしまうことも。
まずはストレスの原因を考えて、減らせるものは減らしましょう。人の努力ではどうにもならない原因もあるので、犬の健康に害が出るようなケースでは、行動療法やお薬などの選択肢もあります。
こんなことがストレスサイン?と思われるものもあったのではないでしょうか?
ぜひ見逃さずに愛犬のストレスを軽減してあげましょう。
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