
【獣医師執筆】犬が誤飲・誤食したかもしれない!チェックすべき症状と対処法。うんちで出るの?
愛犬が人間の食べ物やおもちゃを食べてしまい、ドキッとした経験はないでしょうか?
人間が食べても問題ないものでも犬が食べると中毒の原因になる場合や、食べると腸に詰まってしまう場合があるため注意が必要です。今回は犬が誤飲してしまった場合の注意すべき症状や対処法、病院での治療法などについて解説していきます。
目 次
犬が誤飲したかも!チェックしたい愛犬の症状

犬が誤飲した場合、口にした物質によってさまざまな症状が引き起こされます。ここでは誤飲・誤食でよく見られる症状について見ていきましょう。
すぐ病院へ行くべき症状
危険な症状としては次のようなものが挙げられます。

- ぐったりしている
- 元気がない
- 食欲がない
- 何度も嘔吐を繰り返す
- 血便が見られる
- 血色が悪い
- 尿が少ない、出ない
- 痙攣している
- 呼吸が荒い
上記のような症状が見られる場合は中毒や腸閉塞を起こしている可能性があります。なるべく早く動物病院に行き、獣医師の診察を受けるようにしましょう。
様子を見てもいい場合
誤飲したものが中毒物質ではなく、次のような場合は様子をみても大丈夫でしょう。
しかし、悪化が見られる場合や心配な場合などは早めに動物病院を受診することをおすすめします。

- 誤飲したものをすぐに全て吐き出した
- 大きさが数センチ以下で危険性が高いものではなく、うんちとして排出されそうなもの
どのくらいの時間で症状が出る?
症状が出るまでの時間は誤飲したものの種類によっても異なります。
中毒物質の場合
中毒物質の種類によっても症状が出るまでの時間はさまざまです。誤飲後数時間以内に症状が現れる場合もあれば、数日後に症状が現れることもあります。
そのため、誤飲した直後に症状が全くないからといって安心ではなく、早めに動物病院を受診する必要があります。
おもちゃのパーツやヒモなどの場合
誤飲したものが腸に詰まったり、腸に刺さってしまったりした場合などは誤飲から数時間以内に症状が現れることが多いです。
誤飲したものの危険度と対処法、やってはいけないこと

誤飲したものの種類によって現れる症状やその危険度は異なります。ここでは種類ごとの危険度や対処法などについてご紹介します。
危険度の特に高いもの

ヒモ状のもの
ロープやヒモ状のおもちゃなどを飲み込んでしまうと、腸閉塞を起こす原因になります。腸閉塞が起きると繰り返す嘔吐や食欲不振などの症状が現れます。 一見ヒモ状ではない靴下やタオル、ぬいぐるみなどの布類も、犬が引きちぎることで危険度が高まることもあるため注意が必要です。
先端の尖ったもの
竹串や画鋲、釘、鶏の骨などの先端が尖っているものを飲み込むと、胃や腸に刺さってしまい消化管穿孔(しょうかかんせんこう)の原因になります。消化管穿孔が起きると、消化管に穴が開くだけでなく腹膜炎も引き起こされ、発熱や嘔吐、下痢、腹痛、腹水の貯留などの症状が生じます。
タバコ
タバコにはニコチンという犬に中毒を引き起こしてしまう物質が含まれています。摂取してしまうと数分で中毒症状を示します。症状としては嘔吐や下痢、痙攣や震えといった神経症状などが考えられます。
不凍液(保冷剤、凍結しないように作られた液体)
不凍液にはエチレングリコールという物質が含まれており、犬に中毒を引き起こします。エチレングリコールは腎臓に対して毒性があり、急性腎不全の原因になります。急性腎不全を発症すると、元気消失や食欲不振、嘔吐、下痢、尿が全く出ない、尿が少ないなどの症状を示すようになります。
殺鼠剤
殺鼠剤の毒餌を食べた、あるいは殺鼠剤により死んだネズミを食べた場合、中毒が引き起こされることがあります。中毒物質はワルファリンなどで、抗凝血作用により体のあらゆる部位から出血が起き、鼻血や血便、血尿、内出血、貧血などが引き起こされます。
その他、漂白剤、乾燥剤、脱酸素剤など
摂取量や体質によっては中毒の原因になるもの

タマネギなどのネギ類
タマネギをはじめとしたネギ類は犬に中毒を引き起こす原因になります。ネギ類には酸化物質が含まれておりそれにより赤血球が傷害されて貧血が引き起こされます。
チョコレート
チョコレートに含まれるテオブロミンは犬の中毒の原因になります。大量に摂取すると、興奮や痙攣、不整脈、嘔吐、下痢などの症状が引き起こされます。
ブドウ
ブドウは犬の急性腎不全の原因になります。急性腎不全を引き起こすブドウの成分やブドウの摂取量、品種、摂取部位などの関係性はわかっていないため、少量の摂取でも注意が必要です。レーズンやジャムなどの加工食品も中毒の原因になるため注意が必要です。
人用医薬品
人間に使用される医薬品が犬にとっては中毒の原因となることがあります。犬に対して中毒を引き起こす人用医薬品として代表的なものの1つにアセトアミノフェンがあります。アセトアミノフェンは人に使用される解熱鎮痛剤ですが、犬では代謝能力が低く、中毒の原因になります。アセトアミノフェン中毒では肝障害や貧血が引き起こされます。
観葉植物
観葉植物を犬が誤って食べてしまうと、観葉植物の種類によっては中毒が引き起こされてしまいます。代表的なものにユリ科の植物やナス科の植物が挙げられます。 犬がユリ科の植物を食べると、急性腎不全が引き起こされます。ユリ中毒の原因となる物質はまだ明らかになっていません。 ナス科の植物にはアルカロイドと呼ばれる成分が含まれており、これが犬に中毒を引き起こします。ナス中毒が起きると、嘔吐や下痢、呼吸困難、麻痺、痙攣などの症状が現れます 。
ユリ科の植物の例
ユリ、チューリップ、ヒヤシンスなど
ナス科の植物の例
ナス、ホオズキ、ペチュニアなど
その他、食用油、お酒、カイロ、ペットシーツ、臭いのする駆虫薬、肥料、除草剤など
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誤食・誤飲した場合の対処法

食べてしまったものがまだ残っている場合は速やかに遠ざけましょう。可能であれば、口の中に残っているものを手で取り除いてください。
やってはいけないこと
中毒物質の誤食の場合、数日後に症状が現れることもあります。食べた直後に症状がないからといってそのまま様子をみることはしないようにしましょう。
危険!食道、胃、腸の閉塞に注意
大きさが数センチ以下でも、材質や愛犬の体格によってはすぐ病院へ
危険なものとして挙げなかったものでも、食道や胃、腸を閉塞してしまうことがあります。
たとえ大きさが数センチ以下の小さなものでも、犬の体格や材質によっては閉塞の原因に。特に小型犬やとげとげしていたりざらざらしていたりして腸に引っかかりやすい材質の場合は注意が必要です。
何か異物を食べてしまった場合には念の為動物病院を受診することをおすすめします。
多いのは犬用のボール、おもちゃ、飲料のフタ、果物などの種、石、硬貨、磁石、マスク、メイク用のコットン、ビニール袋などです。犬の体格に対してサイズが大きいもしくは量が多い、噛み砕けない、胃で消化できないものには十分に注意してください。
誤飲・誤食の病院での対処法、費用
誤飲・誤食したものや経過時間、犬の体格によって病院での処置は変わってきます。病院で行われる処置としては、催吐処置や活性炭の投与、内視鏡による摘出、胃洗浄、開腹手術などが考えられます。
催吐処置(さいとしょち)
吐き気を誘発する薬剤を投与して、誤飲したものを吐き出させる処置です。中毒物質を誤飲してから1-2時間以内であれば胃に留まっていることが多いため効果が期待できます。
竹串などの先端が鋭利なものを誤食した場合は催吐処置をすることで胃や食道に突き刺さってしまうことがあるため、この処置を行うことはできません。薬剤は「トラネキサム酸」というものを使うことが多いです。トラネキサム酸を静脈内に投与して嘔吐を誘発しますが、1度の投与で吐かないことも多く、その場合は10分おきくらいに2-3回投与します。
トラネキサム酸の投与には痙攣や血栓症などの副作用のリスクがあるため注意が必要です。費用は一般的に3000-5000円程度かかります。
活性炭の投与
活性炭と呼ばれる炭製剤を投与することで、腸内の中毒物質を吸着して体内に吸収されることを防ぎます。数日間連続して投与することが多いです。費用は一般的に1000-2000円程度です。
内視鏡による摘出
誤食したものが竹串などの鋭利な場合や催吐処置を行なっても吐き出させることができなかった場合は、内視鏡により誤食したものを摘出することがあります。
内視鏡を使用する場合は全身麻酔をかける必要があるため、麻酔に関連した事故や副作用のリスクがある点に注意する必要があります。費用は一般的に3万円から5万円程度かかります。
胃洗浄
不凍液、人用医薬品などの液体や胃内で溶けてしまうものを誤飲した場合には胃洗浄が必要になることがあります。
口や鼻からチューブを差し込み、生理食塩水を流し込むことで胃内を洗浄します。この処置も全身麻酔をかける必要があります。費用は一般的に2万円から4万円程度かかります。
開腹手術
腸閉塞を起こしている場合や内視鏡による摘出が難しい場合などは開腹手術を行い、胃や腸を切開して異物を直接除去します。全身麻酔のため麻酔リスクがあることや、術後に腹膜炎などの合併症のリスクがあることには十分注意する必要があります。
手術費用は一般的に5万円から6万円程度、入院費用は1日あたり1万円程度かかります。
誤飲・誤食予防について
普段から拾い食いをさせないことや人間の食べ物を欲しがらないようにしつけることが大切です。これらを徹底することで、誤飲・誤食の可能性をかなり低減することができます。また、犬に中毒を引き起こす物質を把握しておき、それらが犬の手の届かないように工夫することも重要です。
Q&A
犬が誤飲しましたが、元気ですし食欲もあります。その場合はどうしたらいいでしょうか?
誤食した直後は症状が現れず、数時間あるいは数日経過してから症状が出てくることもあります。現時点で症状がなくても、動物病院を受診することをおすすめします。
犬が小さなものを誤飲しました。何センチくらいならうんちで出るのでしょうか?また何日くらい待てばいいでしょう?
数センチならうんちで出ることが多いですが、材質や犬の体格によっては詰まってしまうこともあります。数日待っても排出されない場合や嘔吐や下痢などの症状が見られる場合には早めに動物病院に連れていきましょう。
犬は元気ですが誤飲したものがずっと出てきません。胃に残っているのでしょうか?
胃に残ってしまうこともあります。また、胃に残ってしまったものがある日突然胃や腸に詰まってしまうこともあります。心配であれば動物病院で検査してもらうといいでしょう。
犬が3センチ程度のものを誤飲してしまいましたが、翌日吐きました。特に症状もなく、変わらず食欲もあるのですが、動物病院に行った方がいいでしょうか?
誤飲したものを全て吐き出していて症状がなければ様子を見ても問題ないでしょう。
まとめ

異物の誤飲や誤食は胃や腸の閉塞、穿孔、中毒などの原因になります。また人間にとっては問題ないものでも犬では中毒の原因になってしまうこともあります。
異物を誤食・誤飲した場合は早めに動物病院を受診しましょう。また、普段からしつけを徹底することや中毒物質を把握しておくことも大切です。
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