【獣医師執筆】猫が異物を誤飲・誤食したかも!症状と対処法を知って命を守ろう
「ちょっと目を離した隙に愛猫が何か食べてしまった」「食べた形跡がある」「気がついたら無くなっているものがある」「わからないけど誤飲したかも」という経験はありませんか?
愛猫が誤飲・誤食してしまっても落ち着いて行動ができるように、症状、対処法、危険性、治療法、費用などについて解説します。
目 次
誤飲・誤食したものの危険性と対処法、やってはいけないこと
人間の生活でよく使う日用品や観葉植物の中には、猫にとって有害な物があります。
愛猫の安全を守るためには、猫に有害なものの危険性と対処法について知ることが重要です。
危険性一覧
猫の誤飲・誤食は多いものの危険性について簡単にまとめます。
もしこちらに記載がなく、有毒性について不明であれば、動物病院など専門家へ問い合わせましょう。
危険性の高いもの(腸閉塞、消化管穿孔、中毒リスクが高確率!)
紐、マット、スポンジ | 形状的に腸で詰まりやすい。 詰まると腸を痛め腸穿孔へ発展する可能性あり |
串、鶏の骨、画鋲、縫い針、釣り針 | 形状的に食道で詰まりやすい。 鋭利な物なので穿孔をおこす可能性あり |
タバコ、電池、人間の薬、観葉植物(ユリ属)、保冷剤、アロマオイル | 中毒や胃食道炎を起こす。 中毒症状は様々であり致死性も高い |
要注意なもの(猫の状態と飲み込んだ形状によっては危険)
ゴム、プラスチック、ビニール、おもちゃ、ペットシーツ、人間のアクセサリー、衣類 | 飲み込んだ量と形状によっては腸に詰まる可能性あり。 無症状のまま胃内に留まる可能性もある |
猫砂、ホッチキスの針、ティッシュペーパー、爪研ぎのカス | 飲み込んだ量と形状によっては腸に詰まる可能性あり。 形状が小さいので排便される可能性もある |
洗剤、シャンプー | 飲み込んだ量によって症状に差がある。 少量であれば大きな問題は少ない |
毒性が高く辺縁が尖っているものやペットシーツなど水分を含むと容積が大きくなるものは、少量でも注意しましょう。
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猫が誤飲した際の対処法
危険性の高いものの場合は、速やかに動物病院へ受診し適切な治療をする必要があります。
症状の程度は異物によって様々ですが、誤飲・誤食が確定し、かつ症状が軽度でも出ている場合に様子をみることは危険が伴います。
少しでもいつもと違う様子がみられれば、様子をみることはやめましょう。
やってはいけないこと
愛猫の誤飲・誤食の現場に遭遇したとき、大声をあげて急いで取り上げるなどはやめましょう。焦らずに落ち着ちついて、何を、どのくらい口にしているのか把握しましょう。
また誤飲・誤食の一番の対策は猫の身の回りに危険物を置かないことです。
誤飲・誤食による猫の症状と緊急性
すぐ病院へ行くべき症状
腸閉塞の初期症状
- 嘔吐
- 食欲不振
などの消化器症状がでます。時間経過と伴に腸管は傷つき脆弱になります。痛んだ腸管が破れると、腹腔内に腸内容物が出て激しい腹膜炎を起こし、死に至るケースもあります。
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中毒の初期症状
- 痙攣
- 麻痺
- 湿疹
- 流涎(りゅうぜん)よだれを流すこと
- 呼吸困難
- 元気消失
- 多尿、無尿、血尿
など様々な症状を示します。
毒性の高いものでは、少量摂取しただけでも致死量に達してしまう物質もあるため注意が必要です。
誤飲・誤食による症状は多岐に渡りますが、すでに症状が出ている場合は体に有害反応が出ています。またはじめのうちは症状が軽度であっても、様子を見ているうちに症状が進行してしまい重篤な症状になる可能性がありますので注意が必要です。愛猫に誤飲・誤食の可能性があり、何かしら症状が出ている場合は早急に動物病院を受診しましょう。
様子を見をしてもいい症状
- 誤飲・誤食したものの危険性が低い
- 愛猫にに異変がない
上記の場合は数日様子をみることも可能です。
また、飲み込んだものをすぐに吐き出し元気もいつも通りである場合や症状がなく誤飲・誤食の数日後に異物が便に出て確認できた場合も経過観察で良いと考えられます。
ただし、症状が数日経ってから出てくる場合もありますので、誤飲・誤食した数日間は動物の状態を注意深く観察することが大切です。
危険性が低いと考えられるケース
「ティッシュペーパーの端をかじった」「固まらないタイプの猫砂を少し食べた」「爪研ぎのカスを少し食べた」などがあげられます。
特徴としては、毒性が低い、辺縁が丸い、細かくて小さいものを少量であれば腸管を通ると考えられます。
どのくらいの時間で症状が出る?
症状がでるまでの時間は、飲み込んだものにもよりますが、早いものでは飲み込んだ直後から、遅いものでは数日間かけて徐々に症状が現れてくるものがあります。
また、誤飲・誤食したものが無症状のまま胃の中に留まるケースもみられます。
致死性の高いものでは発症して間もなく死に至ることもあるため、誤飲・誤食したものが判明している場合は、その物質の毒性についても理解を深めましょう。
危険!食道や腸の閉塞に注意
食道閉塞
胃に入る前の食道で物が詰まっているので、食べたものがそのまま消化されずに出てくる「吐出」という症状を起こします。
あらゆるものが食道内に詰まる可能性がありますが、骨、釣り針、裁縫針などが食道内に停滞し穿孔する場合が多いとされています。
腸閉塞
腸管に異物が詰まり激しい嘔吐を示します。閉塞しているものや腸の痛み具合によっては腸穿孔をおこし腹膜炎に発展する危険性があります。
猫の腸閉塞で多いものは、ミシン糸やリボンなどの紐状異物です。紐状の物は猫の好奇心から遊び道具として、猫が好む傾向があり、遊んでいる間に食べてしまうケースが多く見られます。
誤飲・誤食の病院での治療法と費用
動物病院での誤飲・誤食の治療法は、
●異物・毒物の体外への除去
●出ている症状に対する対症療法
●解毒薬がある場合は薬剤の投与
などがあげられます。
異物を飲み込んでからの経過時間が約3時間以内であれば、飲み込んだものを吐かせる「催吐処置」が適応になる場合が多いですが、飲み込んだものによっては、吐き出すと誤嚥や食道炎の可能性がある場合では催吐処置が適応にならない場合もあります。異物が完全に詰まっている場合では、全身麻酔をかけての内視鏡もしくは手術によって取り出すことも選択されます。また症状が重篤な場合は入院管理になる可能性もあります。
費用については治療法により異なりますが、一般的な診察と比べると検査や処置が多いため高額になるケースが多いです。
誤飲・誤食のよくあるケース
猫の誤飲・誤食による事故は、人の身の回りにある様々なものが原因になる可能性があります。
よくあるケースは「毛づくろい時に体についた毒物を舐めとる」「猫の好奇心を駆り立てるもの(オモチャや糸付き裁縫針など)を遊んでいるうちに飲み込んでしまう」といった猫特有の行動パターンがあげられます。
消化管内異物として報告があるものは、骨、毛球、釣り針、裁縫針、コイン、耳栓、アーモンド、コルク、釣具、紐、裁縫・ミシン糸などが代表的です。主におもちゃとして遊びながら飲み込んでしまうケースが多いため、高齢猫よりも若齢猫で多い傾向があります。
また、ユリなどの有毒観葉植物の花瓶の水や葉を毎日少しずつ摂取することで中毒を起こす場合や、過度のダイエット、ストレス、病気などの原因から異物を食べる行動を起こすケースもあります。
猫の誤飲・誤食予防法
異物の誤飲・誤食は、非常に身近な事故であり、場合によっては生命の危険となり得る問題です。
誤飲・誤食の発生した家庭からよく聴取される内容は
「ちょっと目を離したすきに」「あっと思ったときにはもう遅い」「危ないといつも気をつけていたが」などの不注意によるものから
「最近ダイエットをしていて」など猫の空腹感から発生するものがあります。
誤飲・誤食の予防法は、猫の身の回りに危険性のあるものを置かないことが重要ですが、猫の満腹感についても配慮する必要があります。誤飲・誤食に対する問題意識を高く持ってその対応に取り組み、事故発生ゼロを目指しましょう。
Q & A
誤飲・誤食のよくある質問について、いくつかピックアップしました。皆さんの参考になれば幸いです。
猫が誤食しましたが、全て吐いてくれ元気ですし食欲もあります。動物病院に行かなくてもいいでしょうか?
誤食した物が毒性のないものでしたら、全て吐き出したのを確認できれば問題ありません。
毒性があるものの場合は、短時間でも体内に吸収されている可能性があります。今は元気も食欲もあるようですが、時間が経ってから症状がでてくる場合もあります。現時点での緊急性は低いですが、体調の変化には十分に注意してください。
小さなものなので3日間ほど様子を見ていますが、何センチくらいならうんちで出るのでしょうか?
便で排出可能な大きさについて専門書に記載がないためエビデンスはありませんが、経験的には1から2センチ程度と思われます。
また正常な腸の動きであれば、3日間経過していればすでに便と一緒に異物は排出されるものと思います。ただし便中に異物が確認できない場合は、体内に残っている可能性があります。
今後の体調の変化に十分注意してください。
元気ですが誤食したものを吐きませんし、うんちでも出ません。胃に残っているのでしょうか?
誤食したものを吐物もしくは排便中に確認できていない場合は、体内に残っている可能性があります。
現在は元気ということなので、腸や食道に詰まっている可能性は低いと考えられるため、おっしゃる通りに、無症状で胃内にある可能性が高いです。胃内に異物があるかを確認するためには、全身麻酔をかけて内視鏡の検査が必要です。気になるようであれば、かかりつけの動物病院にご相談ください。
まとめ
人間の生活でよく使う家庭用品の中には、猫にとって危ないものが多くあります。
症状は誤飲・誤食したものによって様々ですが、初期症状が軽度であっても時間経過に従って進行するケースが多くあります。猫の誤飲・誤食が確定しているのであれば、症状の強さに関わらず動物病院を受診することをおすすめします。また危険性の高いものの誤飲・誤食については、症状の有無に関わらず早急に動物病院を受診しましょう。
最も効果的な予防法は、猫の身の回りに危険性のあるものを置かないことです。問題意識を高く持ってその対応に取り組み、事故発生ゼロを目指しましょう。
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