【獣医師執筆】犬ににんにくはあげちゃダメ!症状や危険な量、対処法を詳しく解説

【獣医師執筆】犬ににんにくはあげちゃダメ!症状や危険な量、対処法を詳しく解説

2023/1/13

にんにくは、犬にとって中毒を引き起こす有害なものです。ですが料理での使用頻度も高く、とても身近。犬用サプリに使われているケースもあり疑問を持たれることも多いと思います。

この記事では、犬がにんにくを食べてしまった場合に起こりうる症状と対処法、危険な量、危険な理由などを、獣医師が詳しく解説します。

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【執筆医】littlestar0218
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にんにくは犬にあげちゃダメ

剝いてあるニンニク

にんにくは、玉ねぎと同じネギ属に含まれる中毒物質であり、犬に与えてはいけません。

主な中毒成分は有機硫化物と呼ばれ、犬の赤血球を破壊し貧血をはじめとする様々な症状を引き起こします。この物質は加熱処理をしても毒性に変化がないことから、加熱調理したものでも与えないようにしましょう。

   

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犬にあらわれる主な症状

にんにく中毒の主な症状は「溶血」と「貧血」です。

   

「溶血」

赤血球が毒性物質によって破壊されて

・赤い尿が出る「血色素尿」

・皮膚に赤血球の色素が沈着する「黄疸」

などの症状を示します。

   

「貧血」

体の酸素を運ぶ赤血球が不足することで

・浅く速い呼吸の「頻呼吸」

・酸素を必要とした運動ができなくなる「運動不耐性」

などの症状を示します。

   

また腸粘膜も傷つけるため、嘔吐や下痢などの症状もみられることがあります。

   

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犬の溶血性貧血について

多くは、にんにくを食べてから数日後に症状がでる

大量に摂取した場合は1日以内に症状が認められることもありますが、一般的には摂取した数日後に症状が認められることが多いとされています。

にんにく中毒の症状は遅れて現れるため、食べた直後元気であっても数日間は愛犬の様子を注意深く観察しましょう

にんにくの中毒量

Garlic oil in a glass bottle near ripe garlic on a background of blue old boards. Cure or seasoning with garlic.

犬の体重1kgあたり15~30g

にんにくの中毒量は、犬の体重1kgあたり15~30gと言われています。また柴犬や秋田犬などの日本犬は感受性が高い傾向があります。

   

にんにく一欠片を8g程度とした場合

  • 3kgの小型犬はにんにく5欠片程度
  • 8kgの中型犬はにんにく15欠片程度

と考えられます。

一般的な日本の家庭料理におけるにんにくの使用量は、一食につき多くても2欠片程度と思われますので、小型犬が一食分を盗食しても中毒量に達することは稀と言えます。しかし、にんにく焼きなどの丸ごと使った料理では容易に中毒量に達してしまうので注意しましょう。

少量でも毎日の摂取は危険

犬がにんにくを少量ずつ継続的に摂取した場合も中毒症状を現す可能性があります。特に、にんにくの感受性が高い日本犬では、ほんの少量でも中毒症状を示しやすい傾向があります。

量に関わらず、にんにくを食べてしまった場合は、愛犬にいつもと違う様子がないか注意深く観察しましょう。

犬がにんにくを食べてしまった場合にするべきこと

French bulldog lying down on the floor

動物病院での迅速な治療が大事

にんにく中毒は緊急症例です。愛犬がにんにくを食べたと判明している場合は、症状の有無に関わらず、早めに動物病院を受診しましょう。

食べた量が少量で症状もない場合でも、にんにくの有毒成分が体内に吸収されることを防ぐ処置は重要です。現時点で症状がなくても数日後に症状がでるケースことがほとんどだからです。

食べてから2時間以内であれば胃内容物を吐かせる「催吐処置」が適応になることが多く、毒物を早く体外へ除去し有毒物の吸収を減らすことが可能です。さらに毒物の吸収を阻害する薬剤投与も効果が見込めるなど、早期の治療だからこそできる処置が多数あります。

動物病院での診療内容

貧血検査、重度貧血の場合は輸血になることも

にんにくの誤飲誤食において、動物病院では血液検査による貧血の確認を行います。

一般的に貧血は、にんにくを摂取してから数日後におこることが多いですが、多量に摂取していたり、感受性が高い個体では、当日におこる可能性があるためです。もし貧血が重度であれば、酸素吸入や輸血などの治療が必要になることもあります。その場合、輸血管理が難しい場合があるため、設備の整った動物病院を調べておくことが重要です。

嘔吐や下痢の症状には対症療法を実施

にんにくの中毒成分は腸粘膜も傷つけるため、嘔吐や下痢などの症状がある場合は、出ている症状に対する対症療法を行います。

にんにくの中毒成分とは?

Healthy human red bloodcells in close up 3d illustration

主な毒性物質は有機硫化物とアリシンです。

   

有機硫化物

犬の消化管で吸収され、代謝を受け強い酸化物質となることで赤血球を壊し、溶血と貧血を起こします。

   

アリシン

心筋あるいは平滑筋の弛緩作用があり血管拡張や低血圧を起こします。その他、腸粘膜を障害し下痢や腹部痛を起こす作用があることも知られています。

   

犬の赤血球は人間と比べて壊れやすい

にんにくは人間にって体に良い食べ物ですが、なぜ犬には有毒なのでしょうか?理由は犬の赤血球の性質にあります。

犬の赤血球は、活性酵素を除去する酵素であるカタラーゼ含有量が少ないために、抗酸化能力が人間に比べて低い特徴があります。このため、にんにく成分が犬の消化管で吸収されて代謝を受けると、強い酸化物質になり、赤血球を壊し溶血と貧血を引き起こすのです。

にんにくの中毒成分は加熱処理しても変化しない

煮込み料理や揚げ物など、高温調理してあれば大丈夫と思ってしまうかもしれませんが、にんにくの中毒成分は加熱しても変化しません。加熱調理した料理でも、にんにくを使用している場合は十分に注意しましょう。

Q&A

にんにく一欠片はおおよそ8g程度と思われます。3kg程度の小型犬であれば、一般的にいわれている中毒量は45gからなので症状はでないように思いますが、感受性は個体差があるので必ずしも症状がでないとは言いきれません。
よくある症状は、血色素尿、貧血、嘔吐、下痢です。症状はにんにくを食べた直後だけではなく、数日後に現れてくることが多いとされています。
動物病院の受診につきましては、にんにくを食べてから2時間以内であれば、まだ胃内ににんにくがある可能性があるので、消化吸収される前に動物病院で吐かせてもらうことが可能です。また、消化吸収される前であれば毒素の吸収を阻害する薬剤の投与も効果があります。
症状がなくても効果的な治療がありますので、お早めに動物病院の受診をおすすめします。

にんにく独特の匂いの成分はアリシンです。アリシンは犬のにんにく中毒の原因成分であるため、犬には有害な物質です。おそらく、このために犬は危機回避反応として避けるのではないかと考えられます。

現在判明している犬に有害なにんにくの成分は、有機硫化物とアリシンです。これらの成分が入っていない製品であれば問題ないと思われます。近年、にんにくの中毒成分を取り除く特殊な加工方法も研究されているようです。
また、海外では日本よりもにんにくが犬に有害だというイメージが少ないようですが、これは日本犬がにんにくの感受性が高いことが影響しているかもしれません。
製品の成分については製造元へ確認することが一番信頼できる情報だと思いますので、気になることがあれば製造元へお問い合わせください。

にんにくの皮や芽にも同様に中毒成分が入っています。行者にんにくも他のにんにくと同様にネギ属の植物であるので同じ中毒成分を含みます。また、にんにくの中毒成分は加熱処理をしても変化せず毒性があります。ご注意ください。

にんにく風呂は、生のにんにくを使用しているのでしたら、水に成分が溶け出していると考えられますが、おそらく問題にならないくらいの少量であると思います。
にんにく中毒の感受性は個々の犬で差があるので、一概に大丈夫とは言えませんが、よほど感受性の高い個体でなければ、風呂の水に溶け出たくらいの量でしたら中毒量に達しないのかもしれません。しかし、詳細は不明です。
また、柴犬や秋田犬などの日本犬では他の犬種に比べてにんにくの感受性が高いのでご注意ください。

まとめ

Labrador retriever dog ready for eat with empty bowl and checkered napkin. Isolated on white background.

にんにくは、犬にとって中毒性のある成分を含み、赤血球を破壊し貧血などを起こす有害な食べ物です。危険な量は3kgの小型犬では5欠片程度、8kgの中型犬では15欠片程度とされており、一度に食べていなくとも少量ずつ継続的に摂取した場合も中毒症状が出るとされています。摂取直後は症状がなくても、数日後に遅れて症状がでるケースも多く見られます。

にんにく中毒の治療は初期対応が重要なので、症状の有無に関わらずにんにくを食べたことが確定していれば速やかに動物病院を受診しましょう。

   

【参考文献】

Household Food Items Toxic to Dogs and Cats

●Safety and efficacy of aged garlic extract in dogs: upregulation of the nuclear factor erythroid 2-related factor 2 (Nrf2) signaling pathway and Nrf2-regulated phase II antioxidant enzymes

獣医師
【執筆医】littlestar0218

一次動物病院にて飼い主さまに寄り添った医療を、二次動物病院にて最先端の医療、そして希少症例や様々な疾病を学んできました。 鳥類臨床研究会に所属するなど、犬猫に関わらず動物全般に深い見識を深めています。

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