【獣医師執筆】犬に蕎麦(そば)は与えてもOK。量や与え方、注意点などを詳しく解説
蕎麦は、犬が食べても問題のない食材です。人間にとって代表的な健康食品であり、犬にもメリットがたくさん。愛犬と一緒に年越し蕎麦を食べたいときなど安心して楽しめるように、蕎麦の与え方、注意点やメリットなどを獣医師が詳しく解説します。
目 次
犬は蕎麦を食べても大丈夫
蕎麦は犬が食べても問題のない栄養価の高い食材です。 ただし、与え方によっては体の調子を崩してしまう可能性があるため、量と調理の仕方、犬の持病に注意して与えるようにしてください。
犬への蕎麦の与え方
犬にとって栄養価の高い蕎麦ですが、食べ方に配慮する必要があります。
蕎麦を犬の主食にするのはNG
犬は雑食であるため、蕎麦を消化することに支障はありません。ですが主食は総合栄養食であるドックフードにしましょう。
蕎麦粉・小麦粉アレルギーの犬にはあげちゃダメ
蕎麦には蕎麦粉以外にも、つなぎとして小麦粉が含まれている場合があり、これらがアレルギー反応を引き起こす可能性があります。アレルギー検査により、あらかじめ蕎麦粉・小麦粉アレルギーと診断されている場合は絶対に蕎麦を与えないようにしてください。
少量に抑える
アレルギーの心配がない場合でも、いつもの食事にトッピングする、おやつとして与えるなど、ごく少量与えるようにしましょう。また初めて与える際は、アレルギーが発覚する可能性もありますので、しっかり様子を見てあげましょう。
味付けなしの茹でた麺をあげる
濃い味付けは、過剰な塩分摂取となり犬の心臓や腎臓へ負担をかけますし、犬の食の好みも変えてしまう可能性があります。今まで食べていたフードを食べなくなってしまうと、栄養管理ができず体を壊すこともあるため、味付けは控えましょう。
また乾麺は消化に悪いため、茹でた麺を与えてください。
蕎麦によるアレルギー反応に注意!
蕎麦アレルギーの症状としては、重篤な「アナフィラキシーショック」と「食物アレルギー」があります。
アナフィラキシーショックの症状
アナフィラキシーショックは、食べた後数分から数時間以内に症状が現れます。
主な症状
- 血圧低下
- 呼吸困難
- 蕁麻疹
上記のような症状が現れ、急激に悪化する可能性があります。愛犬がアナフィラキシーショックを疑う症状を発症した場合は、直ちに動物病院を受診しましょう。
食物アレルギーの症状
主な症状
- 嘔吐
- 軟便
- 下痢
- しぶり(便が出ないもしくは少ししか出ない状態で便意が続き、排便体勢をとり続ける状態)
- 排便回数の増加などの消化器疾患
- 皮膚炎(口周囲、目周囲、耳、脇、内股、下腹部、指間などの特徴的な部位の痒み)
食物アレルギーの症状と酷似した他の疾患もあるため、食物アレルギーと判断するには鑑別診断※が必要です。 愛犬に疑わしい症状がでた場合は、一度動物病院を受診することをおすすめします。
※鑑別診断とは…病気や疾患を診断するにあたり、患者が呈している症状から病気を特定するための合理的な比較・診断方法や基準のことを指します。
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皮膚トラブル(細菌性皮膚炎・アトピー性皮膚炎)と東洋医学【獣医師解説】
犬のライフステージに合わせた蕎麦のあげ方
犬の年齢や持病によって、体の状態は異なります。蕎麦に含まれている特徴的な栄養素を効果的に利用するために、犬のライフステージに合わせた与え方を理解することが大切です。子犬から老犬までのステージに合わせた、蕎麦の与え方についてまとめます。
子犬に蕎麦を与える場合
未成熟な消化器に配慮して、ごく少量を与えましょう。蕎麦には成長期に必要な栄養素が多く含まれています。この点から言えば、成長期に適している食材ですが、子犬は消化機能が未熟であるため消化できない可能性があります。 子犬に蕎麦を与える際には、お腹を壊さないか気をつけて少量を与えるようにしてください。
成犬に蕎麦を与える場合
アレルギー発症などの万が一に備え、日中に少量を与えましょう。
蕎麦を初めて成犬に与える場合は、アレルギー反応が出る可能性があります。万が一、アレルギー反応が出てしまった場合に対応できるように、夜間は避けて日中に少量与えましょう。
蕎麦にアレルギーがないと確認できている場合は、栄養の偏りに注意して、いつものフードにトッピングやおやつとして与えるようにしてください。
老犬に蕎麦を与える場合
ごく少量に控えましょう。老化防止作用が期待できる蕎麦ですが、タンパク質が多いため、腎臓の機能が低下している老犬の体に負担をかけてしまいます。
持病がある犬にも蕎麦をあげてもいいの?
病気のある犬でも蕎麦を食べられるのか、どんなリスクがあるのかを疑問に思う飼い主様も多くいらっしゃるのではないでしょうか?実は蕎麦の特徴的な栄養素がメリットになる病気もあります。
蕎麦がリスクになる病気とメリットになる病気について解説します。
慢性腎臓病の犬に蕎麦はNG
慢性腎臓病は腎機能の低下により、タンパク質の代謝産物を排出することができない病気です。このため過剰なタンパク質の摂取は腎臓に負担をかけ、体に毒素を蓄積させてしまいます。慢性腎臓病の犬は、タンパク質が多く含まれている蕎麦の摂取は控えるようにしましょう。
蕎麦粉・小麦粉アレルギーの犬に蕎麦はNG
アレルギー検査により診断がでている場合は蕎麦を与えないようにしてください。愛犬に新しい食べ物を与える際には、食品成分表示にアレルゲンが含まれていないことを確認しましょう。
糖尿病の犬に蕎麦はOK
蕎麦は炭水化物が少なく食物繊維が多く含まれていることから、食事による血糖値の上昇を抑える作用があります。食後の血糖値の急上昇を防ぐことで、肥満予防にもつながり、さらに糖尿病で問題となるインスリンの働きもサポート。糖尿病の犬には適した食材といえます。
蕎麦の栄養素と犬へのメリット
蕎麦には、タンパク質、ルチン、ビタミンB1およびB2、豊富な食物繊維といった体に良い多くの栄養素が含まれています。これらの栄養素について、犬における効果を詳しく解説します。
身近な食材の犬へのメリットを知ることは、愛犬の健康管理にも役立つでしょう。
豊富で良質なタンパク質
体を作る重要な働きを持っているタンパク質。そのタンパク質には、体内で合成できず食事から摂取する必要のある必須アミノ酸というものがあります。
10種類ある犬の必須アミノ酸の中のロイシンとリジンが蕎麦には多く含まれています。また蕎麦は他の主食に比べ「低炭水化物高タンパク質」な成分となり、低カロリーなことも特徴です。
血液の循環を良くし、抗酸化作用のあるルチン
ルチンはポリフェノールの一種であり、ビタンミンPとも呼ばれていた栄養素です。血管を拡張させ強くする働きや、体の代謝や組織の再合成を促進させる抗酸化作用もあります。
血管壁を強化することで脳卒中や動脈硬化の予防、血管を広げ血圧を下げることで高血圧の予防、抗酸化作用による脳細胞老化防止による認知症予防などの効果が期待できると言われています。
糖代謝に必要なビタミンB1
ビタミンB1はチアミンとも呼ばれ、エネルギーを生み出す代謝に必要な栄養素です。運動時に要求量が上がるため、活動性の高い犬はより多くのビタミンB1が必要になります。
体の成長や皮膚の再生に大切なビタミンB2
ビタミンB2は、リボフラビンとも呼ばれ、体の成長に関わる栄養素です。その他、皮膚や粘膜の再生にも関わる栄養素であり、体の表面を覆う皮膚や毛の健康を維持する働きがあります。
腸内環境を整え、ダイエット効果の期待できる食物繊維
食物繊維は犬にとって必要な栄養素ではありませんが、犬の体に良い効果が期待できます。
食物繊維は消化管の運動を改善し排便をスムーズにすることで腸内環境を整えてくれます。また満腹感を増すためダイエット効果が期待できるでしょう。お悩みがなくても便秘や肥満予防として活用してもいいかもしれません。
犬と一緒に色々な蕎麦を楽しむ
年末のイベントとして年越しそばを楽しみにしている方も多いでしょう。愛犬と一緒に楽しめるとさらに嬉しいですね。そこで、蕎麦湯、薬味、原料である蕎麦の実や蕎麦粉、蕎麦以外の乾麺についてなど、あらゆるものの注意点と与え方を説明します。
犬には△、蕎麦湯
犬に蕎麦湯を与えても問題はありませんが少量にしましょう。蕎麦を茹でた後の残り湯である蕎麦湯には、水に溶け出る水溶性ビタミンである、健康に良い栄養素のビタミンB1、ビタミンB2が溶け出ています。ただこれらの栄養素と同時に乾麺の塩分も溶け出していますので、多量にあげるのはおすすめできません。
犬にあげたらダメ、蕎麦の実
蕎麦の原料である蕎麦の実は、消化しにくためそのまま与えることは避けましょう。
犬には△、蕎麦粉
蕎麦の実を剥いて粉状にした蕎麦粉は、フードにトッピングして与えることもありますが、与えすぎると消化不良を起こす可能性があるため少量にすることをおすすめします。
蕎麦の薬味
蕎麦を食べる時に一緒に食べると美味しい薬味はたくさんありますが、犬に与える際には注意が必要です。
絶対に与えてはダメなもの
・ネギ
・ワサビ
<関連記事>
【獣医師執筆】犬にネギは絶対あげちゃダメ。危険な量や症状、対処法を詳しく解説
加熱、味付けなしならOKなもの
・海苔
・オクラ
・大根
・山芋
・卵
上記は薬味として犬に与えても問題のない食材一例です。ただしいずれも生食は控え、味付けのない、加熱調理したものを使用してください。
犬に与えて良い蕎麦以外の乾麺
茹でた、味付けなしのものならOK
- うどん
- そうめん
- パスタ
- ラーメン
いずれも主成分は小麦粉であるため、基本的には犬に与えても問題ないですが、必ず味付けはせず、茹でたものを少量与えるようにしましょう。これらの麺類は、蕎麦に比べて炭水化物を多く含んでいるため、必然とカロリーが多くなる点に注意してください。
まとめ
蕎麦は犬に与えても良い食材です。基本的な与え方は、味付けはせず茹でたものを、いつものフードにトッピングやおやつとして少量与えることが理想です。ただし注意点として、慢性腎臓病やアレルギーのある犬に蕎麦を与えることは避けてください。
愛犬と楽しく食事ができるように、ライフステージや健康状態に合った食べ方で、蕎麦を楽しみましょう。
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